藤田のぼるの理事長ブログ

2022年3月

64、図書館の「借り直し」のこと(2022,3,25)

【プロ野球の開幕です】

・ウクライナの状況を考えると、のん気に野球の話など、という感じもあるのですが、今日からプロ野球が開幕です。我がロッテは、仙台で楽天との三連戦ですが、心配なのは天気。今日はOKですが、土日が雨の予報です。特に今回は、話題の佐々木朗希が土日のどちらかで先発する予定なので、余計に残念! 今はドーム球場が多くなり、パ・リーグでも、ロッテと楽天以外はドームですから、天気の心配をしなくていいわけですが、それだけに今日はぜひ勝ってほしい。

 大学を卒業して東京に出てきた時、当時はまだドーム球場はなく、雨だと当然中止になります。それで、「今日は、試合はあるかな?」と思うわけですが、東京で試合がある場合は、考えるまでもなく天気はわかるわけです。ところが、秋田にいた時の習い性で、(秋田が晴れていても東京がどうかはわからないわけで)つい、そういうふうに思ってしまい、その度に、「ああ、おれは今東京にいるんだった」と思うことを何度も繰り返した覚えがあります。

【さて、「借り直し」のことです】

・皆さんの地域の図書館の貸出期間は、どのように設定されているでしょうか。僕の知る限り、「2週間」という所と「3週間」という所があるようです。それで、延長して借りたい時は、大体ネットで同じ期間延長することができるようになっていると思います。

 それでも、まだ続けて借りたいという場合があります。まあ、普通に読むだけなら、そんなに長く借りる必要はありませんが、評論の対象にしているような場合は、まだしばらく手元に置いておきたいというケースが結構あります。そういう時は、いったん戻しに行って、(もちろん予約が入ってなければの話ですが)もう一度借りてくる、ということをします。これが「借り直し」です。

・僕は仕事上図書館には誠にお世話になっており、地元および近隣の図書館3館と、新宿区立図書館(児文協が職場ということで)の4枚のカードを持っています。さらに埼玉県立図書館のカードも持っています。通常の本なら4枚の方でほとんどなんとかなりますが、1960年代とかの本や、今出ている本の初版を見たいという場合等は、県立図書館が頼りです。

・先月だったと思います。県立図書館は貸出期間が2週間で、ネットで延長が2週間。それでも引き続き手元に置きたい本が3冊ほどあり、返却に行きました。その県立図書館は久喜という市にあり、僕の家からは2時間近くかかります。ただ返却するだけなら地元の図書館に(袋に入れるなどして)持ち込めば、そこから返してくれるのですが、いったん返してまた地元の図書館を通じて借りると結構時間がかかるので、自分で返しに行って、その場で借り直しをしようとしたわけです。

・ところが、びっくり。カウンターで「規定で、すぐ(同じ人が)借りることはできません」とのこと。無駄足になってしまいました。後で、ホームページを見ると、確かにそういう規定(間に2日ほど置かないと、借りられない)になっています。おそらく一冊の本を誰かが独り占めすることを防ぐための規定でしょうが、そもそも僕が借りるような本は閉架から出してもらって、もしかしたら何十年も誰も借りなかったような本ばかりです。それに、他に借りたい人がいるなら、ネットで予約もできるわけですから、2日間置いておくという規定に意味があるとは思えません。第一、地元の図書館なら三日後に行けば済むことですが、また2時間かけて行くのは大変です。

・どうしようかと思いつつ、また返却の期日が近づいたので、電話をして、改めてその規定について聞いてみました。案の定、「独り占め防止」というのが答で、電話であまり粘ってもなんなので、その後、館長宛に、規定を変更してほしい旨のメールを送りました。その後で、他の県立図書館はどうなっているだろうと、2、3調べてみましたが、神奈川も千葉も群馬も、借り直しOKでした。ちょっといやらしいかなとも思いましたが、もう一度メールを送り、そのことも書きました。

 翌日担当者から返信があり、「少し時間をいただきます」とのこと。それが数日前のことで、さてどうなるか。役所の規定が変わるというのは簡単ではないと思いますが、どう考えても無意味、不合理としか思えないので、がんばってみるつもりです。

2022/03/25

63、協会の文学賞(2022,3,16)

 【ロシア軍のウクライナ侵攻に対する理事会声明】

・このことについては前回も書きましたが、この件で、理事会声明を出しました。ホームページにアップしていますので、まだの方はぜひご覧ください。理事会は11日にあり、その数日前からやはり理事会声明を出そうという話になったのですが、大体この種の文書は僕が草案を書くことが多いのですが、どうも僕の文書はパターン化されていて、今のウクライナの状況を前に、「居ても立っても居られない」という気持ちをうまく表した文章にならないような気がしました。それで、今回は、副理事長の加藤さんに起草してもらい、思った通り、僕が書く文章とはかなり雰囲気の違う声明になりました。上記のように、理事会は11日でしたが、文書の確定に土日をはさんで時間をかけたので、昨日15日付の声明となっています。

・この件では、新聞などでご覧になったと思いますが、日本文藝家協会の林真理子理事長、日本ペンクラブの桐野夏生会長、日本推理作家協会の京極夏彦代表理事が、連名でアビールを出しましたね。ちょっとびっくりしました。ペンクラブは当然声明を出すでしょうが、職能団体である文藝家協会や推理作家協会がこの種の問題で声明を出すのはかなりに異例で、京極さんは「推理作家協会としては初めて」とコメントしていましたね。こうした団体は、理事会声明とかになると異論が出てくる可能性もあり、代表者の、しかも連名のアピールというのは、いい“作戦”だったなと思います。ともかく、今回の件は、それほどひどい事態だということでもあるでしょう。

【さて、文学賞のことですが】

・昨日15日が、本来はプログ更新の日で、そのつもりもあったのですが、昨日は事務局に出て、一日文学賞選考関係の実務に追われ、今日になりました。日本児童文学者協会賞、日本児童文学者協会新人賞は、例年4月終わり頃に決定し、5月の総会の前日に贈呈式というパターンです。 対象が前年の1月から12月までに出された本ですから、決定まで4ヵ月かけていることになり、もっと早く決められないのかという向きもあるでしょうが、児文協の賞は、相当に手間がかかります。

・その「手間がかかる」中味は主に二つあり、ひとつは選考の手順。大体の文学賞は、出版社や関係者にアンケート的に推薦作品を出してもらい、その中から選んでいく方法を取っています。児文協の場合は、そうしたことはせずに、まず昨年出された創作およびノンフィクションのリストを作ります。文庫を別にしても大体三百数十冊です。(文庫については、文学賞委員の一人の榎本秋さんにチェックしてもらっています。)前はこれを二賞の選考委員が分担して全部読んでいましたが、十年ほど前からは、「文学賞委員会」というのを作って、ここである程度協会賞、新人賞で検討してもらう作品を、リストの中から粗選びする方法を取っています。これ自体、かなり時間がかかります。その上で、二回の選考委員会を経て受賞作を決めるわけです。僕自身も文学賞委員ですが、他に、前述の榎本さんの他、内川朗子、加藤純子、西山利佳、佐藤宗子、次良丸忍、宮川健郎、目黒強、米田久美子というラインナップで、自分でいうのもなんですが、かなりに強力な布陣だと思います。

・もう一つ児文協の賞で大変なのは、創作・ノンフィクションだけでなく、詩集や評論・研究書も対象にしている点です。そういう賞は、大人の文学の分野も含めても、他にはないのではないでしょうか。 ということで、僕も文学賞委員の一人として、普段から協会賞や新人賞にノミネートしたい作品はチェックするようにしています。

 ただ、こういう選考方法は、誠に「誠実」だと我ながら思いますが、その分選考委員の負担が大きく、近い将来、もう少し選考委員の負担が小さくなるようなパターンに変えていく必要も感じています。それでも、協会賞や特に新人賞の歴代受賞作品を眺めていると、よくぞこんなふうにいい作品・作家を見逃さずに選んできたなと(新人賞の場合は、その後の活躍度で賞の“正しさ”が証明されるわけですから)、いささか自画自賛ながら、思います。今年は、どんな作品に決まるでしょうか。

2022/03/16

62、旅先で迎えた誕生日の話(2022,3,7)

【ロシア軍のウクライナ侵攻に前にして】

・プーチンによるウクライナ侵攻が、日々激しさを増しています。NATO拡大に対する危機感を理由にあげていますが、これでは東欧諸国がNATOに加わらなければならなかったこと(そうしなければ、ロシアに侵攻される可能性がある)を逆に証明しているようで、その矛盾に気がつかないのでしょうか。

 そして、許しがたいのは、今回の事態を受けて、「だから、国を守るためには武装が必要」と、あろうことか、核武装の検討まで持ち出している安倍元首相や維新の会などの主張です。プーチンの言動は、これまで幾多の(ロシア、ソ連を含めて)戦乱の悲劇から、人類が学び、積み重ねてきた平和への思い、そのための方策に対して真っ向から挑戦するものですが、これを“好機”とばかりに武装を言い立てるのは、ある意味当事者のプーチンよりもさらに卑劣だという気がします。こういう輩は、決して本当に国民の命を守ることなど念頭にないことは、たった八十年前の経験がよく示しています。そして、こういう事態こそ、中学生、高校生あたりにとっては、平和を考える生きた教材(というと、語弊があるかもしれませんが)であり、学校などでも積極的に論議してほしいなと思いますが、どうでしょうか。

【2日遅れとなりましたが】

・さて、「5の日」更新のブログが2日遅れとなりましたが、今回は「うっかり」ではなくて、5日に愛知県半田市で、選考委員をしている新美南吉童話賞の表彰式があり、一泊で出かけてきました。表彰式の日程を決める際に、「3月5日はどうでしょう?」と言われ、その日は誕生日なのですが、まあ多分リアルではできないだろうと思い、「いいですよ」と答えていたのですが、本当にやることになりました。例年だと新美南吉記念館で開催するのですが、狭いので市内の別会場で、そして来賓なども極力絞ってという形でしたが、やはり入賞者の中でも何人か欠席の方もいました。

 最優秀作品を取られたのは、北海道の方で「雪虫」という作品なのですが、元々北海道生まれではなくて、二年前からご夫君と北海道に移住されたということで、そこで雪虫に出会ったということのようです。お腹に赤ちゃんがいるということで、二重の祝福の拍手を浴びました。(この作品など、記念館のHPに掲載されています。)

・それで、僕は誕生日の夜は名古屋のホテルに泊まりましたが、さすがに市内に出かけるのは控えて、ホテルの中の居酒屋で、ひとり祝杯?をあげました。

・思い出してみると、自分の家以外のところで誕生日の夜を迎えるというのは、なんと18歳の時以来ということのようでした。高校3年生の卒業間近の時ですが、僕は大学受験のため、秋田から東京に来ていました。3月3・4・5日と試験で、5日に終わったわけです。そして、その日は多分夜行列車で秋田に帰ることになっていたと思うのですが、その前に人と会う約束をしていました。中学時代のガールフレンド(未満?)が、中学卒業後小田原に引っ越して、3年間文通を続けていました。今にして思うと、これは結構いい文章修行になった気がします。それで、ついに? 試験が終わったその日、3年ぶりに会うことにしていたわけです。場所は、僕が宿泊していたホテルに近い四ツ谷駅にしました。

 ところが、結局、この日「二人は」会えなかったのです。多分、四ツ谷駅の複雑さに負けて? 駅にそんなに出口がいろいろあって、「四ツ谷駅で会う」ではまちがう可能性があるということを、田舎の少年は知らなかったわけです。駅の中を相当うろうろしたことは覚えていますが、あきらめて上野駅に向かった後からのことは、覚えていません。

 そんな、半世紀以上前の、とんだすれ違いドラマを久しぶりに思い出しての、72歳の誕生日でした。

2022/03/07