【4日遅れになりましたが】
・この土曜日17日に、秋田で講演と会議があり、前日の16日に出かけ、昨日18日に帰ってきました。そのため、15日はなんやかやと準備に時間を割き、ブログが4日遅れとなりました。
秋田の講演は、県の生涯学習センターの児童文学の連続講座の2回目で、「児童文学の魅力にとりつかれて~「八郎」からか「ズッコケ三人組」まで~」という演題でした。前に書いたように、その5回目は、協会新人賞の鳥美山さん(秋田県在住)の講演が予定されています。贈呈式の際に秋田のテレビ局が取材に来ていたわけですが、その模様はこの15日のニュースで流れたようです。
・僕は(何度か書きましたが)、大学1年の時に斎藤隆介の「八郎」に出会って児童文学を読み始め、さらに秋田の書店で『日本児童文学』に出会って、評論や創作を目指すようになりました。初めて『日本児童文学』に評論が載ったのが1974年で、来年で50年になります。「よく50年も続いたなあ」という思いもあって、「児童文学の魅力にとりつかれて」という、ちょっと変な演題にしたわけですが、その出発点の秋田で話ができたというのは、うれしいことでした。
・ただ、今回の秋田行である意味一番印象的だったのは、講演が終わって午後の会議の場所であるあきた文学資料館に移動する時、館長さんから聞いた話で、秋田はこの1年で人口が1万6千人減っているのだそうです。1万6千人といえば、一つの町がまるごと消えている計算です。秋田が人口減少率全国1位であることは知っていましたが、「少子化」という言葉も、秋田で聞くと、いっそう切実な感じを受けました。
【そして、回文のこと】
・さて、いささか旧聞になってしまいましたが、この8日に、会員の新井爽月さんの出版記念会がありました。フレーベル館から出た『なかまカナ?』という本のお祝いでした。なにしろコロナになってからこの種の集まりはほとんどなくなっていましたから、久しぶりの出版記念会でした。
・このタイトルでお気づきになったかどうか、「なかまかな」というのは、後ろから読んでも「ナカマカナ」、つまり回文になっています。
僕は当日のスピーチでも話したのですが、こうした仕掛けのある作品というのは大好きで、僕自身、かつて『山本先生新聞です』という本を書いた時に、これは3年生の子どもたちが班ごとに新聞を作る話なのですが、その中に「んぶんしんぶん」というのがあって(ちょっと無理矢理ですが、後ろから読んでも同じです)、その班の子たちは、上から読んでも下から読んでも同じ名前を集めるのです。「こいけ・けいこ」が有名(?)ですね。
「いまい・まい」とか「しかた・たかし」とか、なんとか20くらいは考えついたのですが、それ以上出てきません。当時、淑徳短大で非常勤講師をしていたのですが、授業の時に学生にその話をしたら、いろいろ考えてくれました。今でも覚えているのは、「こんの・のんこ」とか「ありま・まりあ」とか、これは僕のセンスでは出てこないなあ、というのがいくつもありました。おかげで30以上の回文の名前をならべられました。
・そんなことがあったので、本をいただいた時に、タイトルが、さらに主人公の池田圭(いけだ・けい)という名前が回文になっていることには、すぐ気づきました。ただ、圭のクラスに武藤トム君というハーフ(ミックス?)の男の子が転校してきて、ストーリーが展開していくのですが、「むとう・とむ」が回文であることは、作品の中で種明かしされるまで気づけませんでした。
・今回の出版記念会は、新井さんのお仲間の同人誌「栞」の皆さんが中心になって準備されたのですが、この本にふさわしい企画として、「なるべく長い回文を作ってお持ち下さい」「一番長い回文を作った方には賞品を差し上げます」ということで、用紙には32マスが提示されていました。
なんとか全部埋めようとしたのですが、さすがに無理で、それでもなんとか27文字になりました。次のような回文です。
ナカマイルヨ イワイニアツマレ マツアニ イワイヨル イマカナ(仲間いるよ 祝いに集まれ 待つ兄 祝い夜 今かな?)
まあ、かなり無理矢理感は否めませんが、本のタイトルの「なかまカナ?」の中に文を埋め込んで回文にしたわけで、我ながら労作?ではありました。 さて、当日の結果発表。27文字が一番長かったのですが、もう一人いて、それは内田鱗太郎さんでした。同点決勝ということで、ジャンケンで内田さんが優勝ということになりましたが、僕としては言葉の達人である内田さんと優勝を争えて、大満足でした。
それにしても、これから何かあった時、「(あの人は)なかまカナ?」とつぶやいて、この作品を思い出すことがありそうです。やはり、言葉はおもしろいですね。