藤田のぼるの理事長ブログ

63、協会の文学賞(2022,3,16)

 【ロシア軍のウクライナ侵攻に対する理事会声明】

・このことについては前回も書きましたが、この件で、理事会声明を出しました。ホームページにアップしていますので、まだの方はぜひご覧ください。理事会は11日にあり、その数日前からやはり理事会声明を出そうという話になったのですが、大体この種の文書は僕が草案を書くことが多いのですが、どうも僕の文書はパターン化されていて、今のウクライナの状況を前に、「居ても立っても居られない」という気持ちをうまく表した文章にならないような気がしました。それで、今回は、副理事長の加藤さんに起草してもらい、思った通り、僕が書く文章とはかなり雰囲気の違う声明になりました。上記のように、理事会は11日でしたが、文書の確定に土日をはさんで時間をかけたので、昨日15日付の声明となっています。

・この件では、新聞などでご覧になったと思いますが、日本文藝家協会の林真理子理事長、日本ペンクラブの桐野夏生会長、日本推理作家協会の京極夏彦代表理事が、連名でアビールを出しましたね。ちょっとびっくりしました。ペンクラブは当然声明を出すでしょうが、職能団体である文藝家協会や推理作家協会がこの種の問題で声明を出すのはかなりに異例で、京極さんは「推理作家協会としては初めて」とコメントしていましたね。こうした団体は、理事会声明とかになると異論が出てくる可能性もあり、代表者の、しかも連名のアピールというのは、いい“作戦”だったなと思います。ともかく、今回の件は、それほどひどい事態だということでもあるでしょう。

【さて、文学賞のことですが】

・昨日15日が、本来はプログ更新の日で、そのつもりもあったのですが、昨日は事務局に出て、一日文学賞選考関係の実務に追われ、今日になりました。日本児童文学者協会賞、日本児童文学者協会新人賞は、例年4月終わり頃に決定し、5月の総会の前日に贈呈式というパターンです。 対象が前年の1月から12月までに出された本ですから、決定まで4ヵ月かけていることになり、もっと早く決められないのかという向きもあるでしょうが、児文協の賞は、相当に手間がかかります。

・その「手間がかかる」中味は主に二つあり、ひとつは選考の手順。大体の文学賞は、出版社や関係者にアンケート的に推薦作品を出してもらい、その中から選んでいく方法を取っています。児文協の場合は、そうしたことはせずに、まず昨年出された創作およびノンフィクションのリストを作ります。文庫を別にしても大体三百数十冊です。(文庫については、文学賞委員の一人の榎本秋さんにチェックしてもらっています。)前はこれを二賞の選考委員が分担して全部読んでいましたが、十年ほど前からは、「文学賞委員会」というのを作って、ここである程度協会賞、新人賞で検討してもらう作品を、リストの中から粗選びする方法を取っています。これ自体、かなり時間がかかります。その上で、二回の選考委員会を経て受賞作を決めるわけです。僕自身も文学賞委員ですが、他に、前述の榎本さんの他、内川朗子、加藤純子、西山利佳、佐藤宗子、次良丸忍、宮川健郎、目黒強、米田久美子というラインナップで、自分でいうのもなんですが、かなりに強力な布陣だと思います。

・もう一つ児文協の賞で大変なのは、創作・ノンフィクションだけでなく、詩集や評論・研究書も対象にしている点です。そういう賞は、大人の文学の分野も含めても、他にはないのではないでしょうか。 ということで、僕も文学賞委員の一人として、普段から協会賞や新人賞にノミネートしたい作品はチェックするようにしています。

 ただ、こういう選考方法は、誠に「誠実」だと我ながら思いますが、その分選考委員の負担が大きく、近い将来、もう少し選考委員の負担が小さくなるようなパターンに変えていく必要も感じています。それでも、協会賞や特に新人賞の歴代受賞作品を眺めていると、よくぞこんなふうにいい作品・作家を見逃さずに選んできたなと(新人賞の場合は、その後の活躍度で賞の“正しさ”が証明されるわけですから)、いささか自画自賛ながら、思います。今年は、どんな作品に決まるでしょうか。

2022/03/16