藤田のぼるの理事長ブログ

2021年9月

46、アニメ映画「岬のマヨイガ」を見ました(2021,9,25)

【シルバーウィークに】

◎先週末から今週にかけての「シルバーウィーク」。今はもっぱら人出が多くなってコロナの感染に悪影響が出ないかという話ばかりですが、ともかく連休でした。僕は春の「ゴールデンウィーク」に準じてシルバーウィークというのだとばかり思っていましたが(それもあるでしょうが)、この中に「敬老の日」が含まれるゆえの「シルバーウィーク」でもあるのですね。自分がシルバーになったせいか、今回初めて気がつきました。

 さて、勤めている身ではない者としては連休といっても特に普段と変わりませんが、この間、映画を一本見たのと、野球観戦をしてきました。野球の方は23日、例によっての千葉(幕張)の球場で、ロッテ対ソフトバンク戦。わがロッテは半世紀ぶり!のパ・リーグ優勝が現実的になってきていますが、この日はまったく打てず、完敗でした。

【そして、「岬のマヨイガ」です】

◎映画の方ですが、考えてみると、映画館に足を運んだのは随分久しぶりな気がします。新聞で柏葉幸子さんの「岬のマヨイガ」がアニメ映画になったことを知り、見たいなと思いつつ、行けないでいました。改めて調べてみたら、上映館はかなり少なくなっていましたが、かろうじて池袋で一館、夜の7時からというのがありました。野球の前の22日でしたが、上映は23日で終わりということで、この機を逃すと見られないなと思い、この日は協会の事務所に出かけた日でもあったので、その帰りに寄りました。

 「岬のマヨイガ」は、東日本大震災を題材にしたファンタジーで、2015年に出版され、翌年の協会賞の最終候補になり、僕は最後まで推しましたが、惜しくも受賞には至りませんでした。(野間児童文芸賞を受賞しています。)震災で行き場を失った女性と子ども、そしておばあさんが、家族となる話で、「マヨイガ」というのは、民話に出てくる山の中の幻のお屋敷(家なのに、あちこちに出没する)で、「迷い家」と書くのでしょうか。震災で失われたもの、露わになったもの、そして東北の言い伝えの中にある様々な励ましや怖れ……、といったものが、重層的に描かれた、僕は大変すぐれた、そして面白い作品だと評価していました。それがアニメ映画になったということで、ぜひ見たいと思ったわけです。

◎映画では、原作の女性(母親的な年代という設定)が17歳の少女(声は芦田愛菜でした)に変えられていました。これは多分、映画の観客層を意識してのことかと思いました。それと、原作では震災そのものも冒頭で描かれていますが、映画の方はそれなりに時間が経過した後の避難所から始まり、震災そのものは必ずしも表面には出ていませんでした。そうしたアレンジはあるものの、僕は原作のモチーフというか、エッセンスはとても良く受けとめられ、表現されていると感じました。

 これは何度か書いたことですが、原作の「岬のマヨイガ」には、元になっている短編があり、それは柏葉さんの短編集『ブレーメンバス』の表題作です。この短編集はすべて内外の昔話がモチーフとなっており、この作品はグリム童話の「ブレーメンの音楽隊」が下敷きになっています。人間から見放された動物たちが自分たちで新たな“家族”を構成する話が、現代の女性たちの物語に変換されているわけです。

 映画はもはや上映館を見つけることが難しいかもしれませんが、「ブレーメンバス」と「岬のマヨイガ」を読み比べて、こんなふうに短編が長編になることがあるということを読み取ってもらうのも、いい読書体験になると思います。

2021/09/25

45、児童文学ファンタジー大賞の選考が終わりました(2021,9,15)

【小樽に行ってきました】

◎土日月と、北海道・小樽に行ってきました。絵本・児童文学研究センターが主催する「児童文学ファンタジー大賞」の選考委員会のためです(私用で一日延ばしましたが)。久しぶりの、というか、去年やはりこの選考で小樽に行って以来の遠出だったかと思います。去年の9月25日付でも、この選考のことをちょっと書きましたが、今年はちょっと特別の年でした。

 そのことは後で書きますが、例年と違うところは、お酒が飲めなかったこと。選考の会議は日曜日で、前夜、今年から選考に加わった茂木健一郎さんやアーサー・ビナードさんも交えておいしい食事をいただいたのですが、飲み物はノンアルコールビール。翌日も知人とお寿司をいただきましたが(なにしろ小樽といえば寿司、「寿司屋通り」というのがあるほどです)、これもノンアルコールビールでした。その場でも話が出たように、確かに以前に比べると結構飲める感じになりましたが、やはり所詮はノンアルコールビール。ただ、元々はこの日までが緊急事態宣言で、もう一日先なら飲めたのに……、と残念がるところでしたが、結局宣言延長になりましたから、あきらめがついた?感もありました。

【ファンタジー大賞は、来年で終わりです】

◎この賞については、『日本児童文学』にも募集広告が載り、ご存知の方が多いと思いますし、応募したことがあるという方も少なからずいらっしゃると思います。今年で27回目を迎えたこの賞は「大賞」が出ないので有名?で、第一回の梨木香歩さん、第三回の伊藤遊さんのお二人だけ、あとは佳作や奨励賞(そこからも結構本になってはいますが)だけなのです。僕は途中から選考に加わり、そんなに敷居を高くしなくてもなんとか大賞をと思ってきましたが、結局今回まで大賞という作品は出ませんでした。

 今回は最終候補作が四点。この中で原あやめさんの「なまこ壁の蔵」が佳作に選ばれました。この作品は大正時代の木曾が舞台で、ヒロインの桜子はまずまず恵まれた家に生れたものの、父親が早く亡くなっており、女学校には進めず、親戚筋の家に行儀見習いに出されます。そうした中で様々な出会いがあり、最後は「ものを書く」ことに目覚める姿を描いた作品で、タイトルの「なまこ壁の蔵」は、この家にいくつかある蔵の中で一つだけ特別な蔵があり、ここが現実とファンタジー世界との重なる場となり、桜子はここで幽閉されている半蔵という男と出会います。木曾で半蔵でピンとくるべきだったかもしれませんが、実はこの作品は島崎藤村の『夜明け前』のオマージュでもあったのです。僕はこの作品が一押しでしたが、この“仕掛け”が他の選考委員にどう受け取られるかなと危惧もしていましたが、思いのほかすんなりと、この作品が佳作に決まりました。

 作者の原さんは、元児文協の会員で、中部児童文学会(協会の中部支部でもあります)の中心的な書き手として長く活動されてきた方で、そうした意味でも原さんの佳作受賞はうれしいことでした。

◎それで、先に書いたように、この賞は諸般の事情で、来年までということになりました。このことはすでに昨年“予告”があり、そのこともあって、最後の二回にということで、茂木健一郎さんとアーサー・ビナードさんに選考に加わってもらうことになったわけです。この賞を目標にしてきたという方も、僕の周りにもいらっしゃるので残念ですが、来年がラストチャンスになるので、ぜひ多くの方にチャレンジしてほしいと思います。

「来年」と書きましたが、募集は今年の11月から来年の3月までです。作品応募の場合、どうしてもぎりぎりにでかす、というパターンになりがちですが、特にこの賞については、なるべく早めにでかして、じっくりと時間をかけて書き直していく、というのが、「傾向と対策」になるでしょうか。最後に「大賞」が出ることを、切に願っています。

2021/09/15

44、なんだかバタバタ(2021,9,5)

【先週は……】

◎よく言われることですが、今日は日曜日で、「今週」というと「今日までの一週間」なのか「今日からの一週間」なのか。英語の「ウィークエンド」(週末)は前者で、これは聖書で神様が6日間で世界を創造し、最後の一日は休んだ、というところからきてますよね?(違ってたら、ごめんなさい。)それに対して、日本の一週間は「日月火水木金土」という感じで、カレンダーも日曜日から始まっていますから、 日曜日は一週間の始まり、というイメージです。ここでも日本風?に、今日から新しい週がという前提で書きます。だから、表題の「先週」は、昨日までの一週間のことです。

◎何を言いたいかというと、なんだかとてもあわただしい一週間だったなという話で、かつて忙しいことをいかにもアピールしたい人がいて、例えば喫茶店に人を呼び出すと、必ずと言っていいほど先客がいて、 その話が終わるのを少し待たなければならないというパターンでした。(誰とは言いませんが、協会の理事だった人で、随分昔のことです。)それで、当時僕ら事務局員は、そういうふるまいを「忙し自慢」と言っていました。今日の僕のブログも、ややその気があるかもしれません。

◎で、「先週」は、8月から9月に切り替わる週だったわけですが、4回リモート会議があって、2回協会事務局に出かけましたから、まあかなり忙しかったわけです。まず、29日の日曜日は事務所に出て9月理事会の資料などを作り、月曜日だけは家にいましたが、前回書いた資料集の校正刷りの見直しなどをしました。(この段階に至っても結構修正があり、ちょっと不安に。)火曜日は10月の公開研究会の実行委員と常任理事の合同会議(リモート)で、公開研をリアル+リモートのハイブリッドでやるか、全面リモートにするかを話し合いました。これについては、多分次回に書きますが、今週お届けする会報に同封の文書をお読みください。要するに結論を保留し、9月末に最終判断をするということです。そして9月に入った水曜日は、協会の顧問弁護士の鷹取先生と、リモートでのご相談。何の相談かということについては、書けるのはもう少し先になりますが、悪い?相談ではありません。

 木曜日は、協会編の詩のアンソロジーの編集委員会(リモート)。僕はこの編集委員会には途中から加わっているのですが、これについても別の機会に書きます。そして金曜日は事務局に出て、資料集の仕事。4時に印刷所の方が見え、最後に入稿した会員名簿と役員名簿の校正刷りがあがってきました。そして、昨日の土曜日は、これは協会の用事ではなく、僕が参加している評論研究会の月例会(リモート)でした。

◎この間、菅さんが自民党総裁選に立候補しないという話が出て、さすがにびっくりしましたね。思想信条は別として、前に書いたように同郷で同年代、そして(一国の総理と比べるのもなんですが)長くナンバー2を務めた人がナンバー1になる、というあたりが、自分とかぶるところがあって、大変だったろうね、という感じもちょっとあります。

 それにしても、「コロナ対策に専念したいので、立候補しない」というのは、まあ負け惜しみであることはみんなわかってるとはいえ、最後ぐらい、もう少しみんなの心に響くように言ったらどうだろう、 と思ってしまいました。「総裁選に立候補して引き続き務めたいと考えていたが、この間の状況は誠に厳しく、いま私が総裁選に立候補することで政治空白や混乱が起こることは本意ではなく、ここは引き下がる決意をした」くらいのことを言えば、最後は立派だったと言ってもらえるだろうに……、そういうことを進言できる秘書とかはいないのか、と思ってしまいました。菅さんという人は、多分なんでも 自分でやろうという傾向があるのかもしれません。このあたりも、自戒です。

2021/09/05