藤田のぼるの理事長ブログ

45、児童文学ファンタジー大賞の選考が終わりました(2021,9,15)

【小樽に行ってきました】

◎土日月と、北海道・小樽に行ってきました。絵本・児童文学研究センターが主催する「児童文学ファンタジー大賞」の選考委員会のためです(私用で一日延ばしましたが)。久しぶりの、というか、去年やはりこの選考で小樽に行って以来の遠出だったかと思います。去年の9月25日付でも、この選考のことをちょっと書きましたが、今年はちょっと特別の年でした。

 そのことは後で書きますが、例年と違うところは、お酒が飲めなかったこと。選考の会議は日曜日で、前夜、今年から選考に加わった茂木健一郎さんやアーサー・ビナードさんも交えておいしい食事をいただいたのですが、飲み物はノンアルコールビール。翌日も知人とお寿司をいただきましたが(なにしろ小樽といえば寿司、「寿司屋通り」というのがあるほどです)、これもノンアルコールビールでした。その場でも話が出たように、確かに以前に比べると結構飲める感じになりましたが、やはり所詮はノンアルコールビール。ただ、元々はこの日までが緊急事態宣言で、もう一日先なら飲めたのに……、と残念がるところでしたが、結局宣言延長になりましたから、あきらめがついた?感もありました。

【ファンタジー大賞は、来年で終わりです】

◎この賞については、『日本児童文学』にも募集広告が載り、ご存知の方が多いと思いますし、応募したことがあるという方も少なからずいらっしゃると思います。今年で27回目を迎えたこの賞は「大賞」が出ないので有名?で、第一回の梨木香歩さん、第三回の伊藤遊さんのお二人だけ、あとは佳作や奨励賞(そこからも結構本になってはいますが)だけなのです。僕は途中から選考に加わり、そんなに敷居を高くしなくてもなんとか大賞をと思ってきましたが、結局今回まで大賞という作品は出ませんでした。

 今回は最終候補作が四点。この中で原あやめさんの「なまこ壁の蔵」が佳作に選ばれました。この作品は大正時代の木曾が舞台で、ヒロインの桜子はまずまず恵まれた家に生れたものの、父親が早く亡くなっており、女学校には進めず、親戚筋の家に行儀見習いに出されます。そうした中で様々な出会いがあり、最後は「ものを書く」ことに目覚める姿を描いた作品で、タイトルの「なまこ壁の蔵」は、この家にいくつかある蔵の中で一つだけ特別な蔵があり、ここが現実とファンタジー世界との重なる場となり、桜子はここで幽閉されている半蔵という男と出会います。木曾で半蔵でピンとくるべきだったかもしれませんが、実はこの作品は島崎藤村の『夜明け前』のオマージュでもあったのです。僕はこの作品が一押しでしたが、この“仕掛け”が他の選考委員にどう受け取られるかなと危惧もしていましたが、思いのほかすんなりと、この作品が佳作に決まりました。

 作者の原さんは、元児文協の会員で、中部児童文学会(協会の中部支部でもあります)の中心的な書き手として長く活動されてきた方で、そうした意味でも原さんの佳作受賞はうれしいことでした。

◎それで、先に書いたように、この賞は諸般の事情で、来年までということになりました。このことはすでに昨年“予告”があり、そのこともあって、最後の二回にということで、茂木健一郎さんとアーサー・ビナードさんに選考に加わってもらうことになったわけです。この賞を目標にしてきたという方も、僕の周りにもいらっしゃるので残念ですが、来年がラストチャンスになるので、ぜひ多くの方にチャレンジしてほしいと思います。

「来年」と書きましたが、募集は今年の11月から来年の3月までです。作品応募の場合、どうしてもぎりぎりにでかす、というパターンになりがちですが、特にこの賞については、なるべく早めにでかして、じっくりと時間をかけて書き直していく、というのが、「傾向と対策」になるでしょうか。最後に「大賞」が出ることを、切に願っています。

2021/09/15