【シルバーウィークに】
◎先週末から今週にかけての「シルバーウィーク」。今はもっぱら人出が多くなってコロナの感染に悪影響が出ないかという話ばかりですが、ともかく連休でした。僕は春の「ゴールデンウィーク」に準じてシルバーウィークというのだとばかり思っていましたが(それもあるでしょうが)、この中に「敬老の日」が含まれるゆえの「シルバーウィーク」でもあるのですね。自分がシルバーになったせいか、今回初めて気がつきました。
さて、勤めている身ではない者としては連休といっても特に普段と変わりませんが、この間、映画を一本見たのと、野球観戦をしてきました。野球の方は23日、例によっての千葉(幕張)の球場で、ロッテ対ソフトバンク戦。わがロッテは半世紀ぶり!のパ・リーグ優勝が現実的になってきていますが、この日はまったく打てず、完敗でした。
【そして、「岬のマヨイガ」です】
◎映画の方ですが、考えてみると、映画館に足を運んだのは随分久しぶりな気がします。新聞で柏葉幸子さんの「岬のマヨイガ」がアニメ映画になったことを知り、見たいなと思いつつ、行けないでいました。改めて調べてみたら、上映館はかなり少なくなっていましたが、かろうじて池袋で一館、夜の7時からというのがありました。野球の前の22日でしたが、上映は23日で終わりということで、この機を逃すと見られないなと思い、この日は協会の事務所に出かけた日でもあったので、その帰りに寄りました。
「岬のマヨイガ」は、東日本大震災を題材にしたファンタジーで、2015年に出版され、翌年の協会賞の最終候補になり、僕は最後まで推しましたが、惜しくも受賞には至りませんでした。(野間児童文芸賞を受賞しています。)震災で行き場を失った女性と子ども、そしておばあさんが、家族となる話で、「マヨイガ」というのは、民話に出てくる山の中の幻のお屋敷(家なのに、あちこちに出没する)で、「迷い家」と書くのでしょうか。震災で失われたもの、露わになったもの、そして東北の言い伝えの中にある様々な励ましや怖れ……、といったものが、重層的に描かれた、僕は大変すぐれた、そして面白い作品だと評価していました。それがアニメ映画になったということで、ぜひ見たいと思ったわけです。
◎映画では、原作の女性(母親的な年代という設定)が17歳の少女(声は芦田愛菜でした)に変えられていました。これは多分、映画の観客層を意識してのことかと思いました。それと、原作では震災そのものも冒頭で描かれていますが、映画の方はそれなりに時間が経過した後の避難所から始まり、震災そのものは必ずしも表面には出ていませんでした。そうしたアレンジはあるものの、僕は原作のモチーフというか、エッセンスはとても良く受けとめられ、表現されていると感じました。
これは何度か書いたことですが、原作の「岬のマヨイガ」には、元になっている短編があり、それは柏葉さんの短編集『ブレーメンバス』の表題作です。この短編集はすべて内外の昔話がモチーフとなっており、この作品はグリム童話の「ブレーメンの音楽隊」が下敷きになっています。人間から見放された動物たちが自分たちで新たな“家族”を構成する話が、現代の女性たちの物語に変換されているわけです。
映画はもはや上映館を見つけることが難しいかもしれませんが、「ブレーメンバス」と「岬のマヨイガ」を読み比べて、こんなふうに短編が長編になることがあるということを読み取ってもらうのも、いい読書体験になると思います。