藤田のぼるの理事長ブログ

2022年10月18日

83、インボイス制度の勉強会が開かれました(2022,10,18)

【3日遅れになりましたが】

・更新日の15日から3日遅れになりましたが、昨日(17日)インボイス制度の勉強会があり、その報告をと思っていたので、今日になりました。ただ、説明が相当長くなると思うので、この問題については、次回(25日)と2回に分けてお話したいと思います。

 「インボイス制度」という言葉、そんなに大きく報道されているわけでもないので、この言葉自体あまり聞いたことがないという方もいらっしゃるかもしれませんが、来年10月から開始されることになっています。「インボイス」というのは「適格請求書」と訳されていますが、そもそも請求書というもの自体、わたしたちにはあまりなじみがないのではないでしょうか。印税や原稿料、講演料などを受け取る時、請求書を出すことを求められることはあまりなかったと思います。しかし、この制度が開始されると、そのあたりが大きく変わってきます。

・ということで、割合急に勉強会が企画されたので、会員の皆さんに通知する機会がなく、とりあえず、理事・監事と部員・委員、評議員(メールで連絡できる方)にお伝えし、協会の顧問税理士である税制経営研究所の西澤税理士にお願いして、リモートでの勉強会を開きました。50名近い参加があり、また今後のことを考え、児童文芸家協会にもお声をおかけし、何人かの参加をいただきました。勉強会は1時間半で、西澤税理士のお話が50分ほど、残りの30分余りが質疑応答でした。  

上記のように、会員の皆さんにお伝えする暇がなかったので、この勉強会については録画・録音をしており、ご希望の方にはお送りできます。事務局までご連絡ください。

【さて、インボイス制度ですが】

・以下は、西澤税理士の説明で理解した内容、またその前にネットなどで仕入れた内容を、僕なりにまとめた形で書きますので、あるいは正確ではない部分があるかもしれません。

・まずどういう人がこのインボイス制度に関係があるのか、ということですが、基本的には印税や原稿料を受け取っている方になります。ただ、今のところまだ本も出ていないので印税は受け取ってないという方も将来的には関係してくる可能性があるわけで、知っておく意味はあると思います。

・実は、このインボイス制度について理解するためには、まず「消費税」というものの仕組みをある程度理解することが必須となります。西澤税理士のお話も、そこからスタートしました。 わたしたちが印税を受け取る際、例えば10万円であれば、これに10%の消費税がついて11万円支払われます。(源泉所得税が引かれることは、今は除外して考えます。)出版社は他の著者にも画家さんにも、そしてもちろん印刷所や配送業者などにも支払いをするわけで、この時にも消費税をつけて支払っています。一方、出版社は本を売るに当たって、例えば1000円の本であれば、100円の消費税を付けた形で代金を受け取ります。1000円がまるまる出版社にいくわけではなく、取次や書店で受け取る分があるわけで、例えば1000円の本ならば、半額の500円分の消費税50円が出版社の受け取り分になります。つまり、出版社は一方で消費税を受け取り、一方で消費税を支払っているわけです。そして、例えば一年間で消費税を100万円受けとり、70万円支払ったとすれば、差額の30万円を税務署に納入します。これがざっくり言って、消費税の仕組みです。

・さて、わたしたちも小なりとはいえ、印税や原稿料を受け取っていれば、税務署から見れば「事業者」ということになります。しかし、ほとんどの方は、否応なくそこから10%の源泉所得税を引かれて(つまり、10%を所得税として支払って)はいても、消費税を税務署に納めてきたという方は少ないと思います。なぜなら、売り上げ(わたしたちでいえば印税、原稿料、講演料など)の合計が1000万円以下の場合は、消費税の納入が免除されているからで、これを「免税業者」といいます。会社とかの場合は、売り上げが1000万円以下という場合はまずないでしょうが(児童文学者協会も印税や機関誌購読料、受講料などの「売り上げ」が1000万を超えますから、毎年数十万円の消費税を納めています)、小規模な個人商店やわたしたちのようなフリーで仕事をしている人間の場合は、かなりの割合で免税業者なわけです。

・出版社の話に戻りますが、インボイス制度が始まると、先程の例でいえば、支払った額に付けた消費税70万円について、その支払先が「適格請求書発行事業者」(以下、発行事業者)であるかどうかをチェックしなければならなくなります。このあたりからやや難しくなりますが、先程の例でいえば印刷所や運送会社はまずまちがいなく発行事業者でしょう。なぜなら、こうした会社は売上1000万円以上で、消費税を支払ってきた会社だからです。こうした会社は自分が発行事業者であることを改めて税務署に届け、「適格請求書発行事業者」としての登録番号をもらいます。そして、出版社に請求書を出す場合、その請求書に登録番号を記載するのです。

・さて、今まで免税事業者だったわたしたち。今後は、出版社から印税や原稿料の支払いに際して、請求書を出すことを求められるかもしれません。その場合、上記の登録番号を持ってなければ、番号なしの請求書になります。ところが、これがインボイス制度の一番のキモなのですが、今後は税務署は、そうした登録番号なしの相手に支払った消費税については、「消費税を支払った」とは認めない、ということになるのです。例えば出版社が年間に払った70万円のうち、30万円がそうした著者への支払いだったとすれば、税務署に認められるのは残りの40万円だけです。ですから、いままで100万円-70万円で、30万円を消費税として税務署に納めていたものが、今度は100万円-40万円で、60万円納めなければならないことになります。

・となると、出版社側としては、著者に対して、「適格請求書発行事業者」になって、登録番号をもらってください、ということになるでしょう。言われた我々は、申請すれば発行事業者になることはできます。しかし、そうなれば、1000万円以下であっても、免税事業者ではなくなるのです。つまり、出版社などと同じように、消費税を納めなくてはならなくなるのです。税金の負担が増えるということと、そのための計算がかなり厄介だということと、二つ負担が増えることになります。実はもう一つ問題があるのですが、それは次回に回します。

・ということで、わたしたちは、今まで多分ほとんどの方が「自分が受け取った消費税(の一部)を税金として納める」という発想はなかったし、それで済んできたわけですが、今後はそうはならなくなる、ということで、かなり身近で大変な問題だということが、お分かりいただけたでしょうか。ですから、すでに、文学団体、文化団体などで、反対声明を出しているところもありますが、児文協としては今回の勉強会を出発点に、他団体とも協議しながら、対応を考えていきたいと思います。(次回に続く)

2022/10/18