【まずは、ワクチンの話】
◎なんだか、三題噺みたいなタイトルになりましたが、まずは前回の予告通り、コロナのワクチンの話です。僕は地元の接種が待ちきれず、東京の大規模接種が埼玉・神奈川・千葉県民もOKとなった時点でこちらに申し込み、先週9日に受けてきました。
印象としては、実にスムースというか、”流れ作業”という感じ。会場が大手町の合同庁舎ということで、東京駅(もしくは地下鉄大手町駅)が最寄りだろうと思っていましたが、調べたら一番近いのは地下鉄東西線の竹橋駅。協会事務局のある神楽坂駅の三つ隣です。この駅は僕にとっては「毎日新聞社のある所」でしたが、案内通りその反対側の4番出口に出たら、もうそこがワクチン会場という感じで、一 度下見に行こうかなとも思っていたのですが、まったくその必要はありませんでした。
◎案内に従って進むと、合同庁舎の庭?に建てられたプレハブの建物が受付になっていて、持参した接種券を見せ、検温すると、黄色いクリアーファイルを渡され、後は「黄色の方はこちら」というスタッフについていき、エレベーターで上がって……という具合で、接種会場に到着。ここで問診(といってもあっという間に終わり)を受け、いよいよワクチン接種。そして15分ほど様子をみる間に、第二回の予約をして、「はい、終わり」でした。
◎僕は10時半という予約時間でしたが、余裕を見て10時前くらいに着いたのですが、まったく待つこともなく、全部終わったのが10時半少し過ぎくらいだったでしょうか。一番印象的だったのは、同じ年代の大量の人たちを見た(?)こと。高齢者枠の中でも75歳以上が先で、それから65歳以上という順番なので、まわりにいるのは、多分ほとんどが65歳から74歳までの人たち。それだけ大量の同年代の人間を見たのは初めてなのではなかったでしょうか。うじゃうじゃという感じ(笑)で、なんだかすごいなと思わされ ました。
◎ただ、ニュースでは、東京も大阪も、大規模接種会場は、最初の内は混んでいたものの、今は予約がガラ空きなんですね。僕はこの日もワクチン接種の後神楽坂の事務所に行って仕事しましたが、一般的にはわざわざ埼玉県から2時間近くもかかって大手町までワクチンを受けに行くというのは、ハードルが高いですよね(電車に乗ること自体、リスクがあるし)。自治体によっては地元でスムースに受けられるところもあるようで、地域の条件もあるでしょうが、やはり担当者の才覚が問われるところですね。
【そして、野球と戦争】
◎ワクチンの副反応は、その日は打った左腕がやや重いかなという程度。次の日がややだるかったかな、 と後になって思いましたが、まあ標準的なところでしょうか。そして、13日の日曜日、今シーズン初めて、千葉の幕張にあるロッテ球場に野球観戦に行きました。前にも書いたと思いますが、自宅から野球場までは3時間近くかかりますが、年に3、4回は見に行きます。ですから、通算にするとかなりの回数になると思いますが、今回初めての経験だったのはビールが飲めなかったこと。もちろんコロナ禍での時別な制約です。これも去年行った時に書いたかもしれませんが、日本人は本当に言うことを聞くな、と思わされるのは、誰も大声を出したりしないこと。ロッテは元々トランペットや太鼓に合わせて歌ったり (もちろん個々の選手によって歌が違うわけですが)、跳んだり跳ねたりという応援が有名ですが(僕はやりませんが)、そんなことをする人はただの一人もいません。代わりに拍手(これもいつのまにか結複雑なリズムが定まっています)での応援です。ホームランが出ても、「歓声」まではいかない、うれしいため息のような音がするだけです。
オリンピックを(開催すること自体無茶苦茶な話ですが)無観客にするかどうかで、政府や組織委員会は、「他のスポーツイベントの例も見て」などと言い出しています。しかし、プロ野球の観客は、基本常連さんたちですし、遠くからといってもほとんど首都圏からですから、オリンピックとは全然違います。プロ野球が昨年の春のように無観客ではなく客を入れているのは、オリンピックに観客を入れる伏線のような気がして、自分も観戦に行きながら、なんだか利用されているような思いでした。 ちなみに、試合は交流戦最後の巨人戦で、菅野が早々に降板。5対0から5対4に詰め寄られましたが、なんとか勝利しました。
◎さて、「戦争」です。ロッテとジャイアンツの戦争という話ではありません。球場との往復が5時間以上あったわけで、当然その間は本を読みます。いつもだと、帰りはビールで眠たくなったりしますが、 今回はそれもなかったわけです。どの本を持っていこうかなと思い、選んだのは、池上彰の『君と考える戦争のない未来』(理論社)でした。
◎仕事柄、というか、かなりの数の出版社から、見本本が送られてきます。出版契約書を交わしたことのある方は、契約書の中に、出版部数の内、50部とか100部は宣伝用に使うので、印税計算の対象から外す、という項目があるのをご存知でしょう。そうした宣伝用の本は、新聞社や児文協のような団体に送られるわけですが、僕らのように、書評などを書いている個人にも送られてきます。相当な数で、 正直言ってなかなか処理に困ります。ある程度たまったところで(2週間に1回くらいのペースでしょうか)包装から出して、”仕分け”します。つまり、書評に取り上げる可能性がある本とない本に大別するわけです。 書評には取り上げないかもしれないが、協会の文学賞で対象にするかもしれない本もチェックします。 その「残しておく本」を仕事場に積んでおくわけです。(書評に使う可能性のない本のほうは、近所の子どもたちや地元の学校、カミさんの知り合いのお母さんたちに差し上げたりしています。それならほしいという方がいらっしゃいましたら、ご一報ください。)
以前は、事務所や大学に行く日が週4から5日あったので、(積んであるほうの本を)行き返りに大分読めたのですが、今は週1、2なので、なかなか減りません。それで、野球の行き返りに、気になってい た池上彰の本を取り出したわけです。
◎結論からいうと、とてもおもしろかったです。一言でいうならば、日本を中心とした現代史の話。これは、自ずから戦争の話になります。池上彰さんについてはいろんな評価がありますが、僕は制約の多いマスコミの中で、うまく(というと語弊があるかもしれませんが)言うべきことを言っていると思います。文学的文章のうまさとは違いますが、やはり文章がうまいですね。平易に書きつつ、ポイントはおさえてあります。戦争がなぜ起こるのか、という一般論と、日本がなぜ無謀な戦争に走ったのかという問題とが、絶妙に重ねられて語られていきます。
よく、子どもたちに答を押しつけるのではなく、考えてもらうよう問いかける、とはいいますが、これはとても難しいことです。戦争という、ある意味一番語りにくくかつ語らなければならないテーマについて、こうした本が子どもたちに向けて出されることは、心強いと思いました。ちなみに池上さんは僕と同じ1950年生まれ。その仕事量にも頭が下がります。