【今年はベートーベン生誕250年です】
◎コロナ過でも季節は例年通り進み、今年もあと半月です。政府の無策ぶりにはあきれるしかありませんが、今回はぐっと話題を変えてベートーベンです。協会とはまったく関係ない、私的な話になります。
まあ、NHKぐらいですが、今年はベートーベン生誕250年ということで、いくつかの特集が組まれていますね。本来なら記念コンサートも目白押しだったのでしょうが、コロナでだめになってしまったというのは、なんとなくベートーベンっぽいような感じもします。
◎さて、僕は母や兄・姉たちの影響もあり(三人いる姉の真ん中は、教育学部の音楽科卒)、中学生の時ブラスバンド部員だったこともあり(打楽器担当、途中からタクトも振ったりしていました)、子どものころから一応クラシックファンです。当時はもちろんレコードの時代ですが、我が家には小さな電気蓄音機(なんと古風な響きでしょう)しかなく、中学生の頃、日曜日になると四つほど離れた駅の(ということは、それなりに近い)上の姉の嫁ぎ先まで(遠い親戚でもあったので)押しかけていって、そこにはステレオがあったので、一日中それで音楽を聞いて、夕食をご馳走になって帰ってくる、という時間を過ごしたりしていました。
◎好きな作曲家はドボルザークとベートーベン。「ドボルザーク」という名前を覚えたのは、小学校低学年くらいの時だったと思います。ラジオで「ノボルザーク」と聞こえたのです(笑)。上記のように中学生の時はブラスバンドで放課後には毎日音楽室に向かうわけですが、そこには音楽年表があり、ベートーベンのライオン髪とドボルザークの髯顔が、ちょうど左右で釣り合っている感じでした。まあ、クラシックファンとはいっても名曲コンサートレベルで、ドボルザークはやはり「新世界」、ベートーベンは「英雄」「運命」「田園」といったところが好きでした。
◎高校生の時です。僕は秋田でも農村地帯の田舎でしたし、それまで生のオーケストラを聞く機会はありませんでしたが、高校は秋田市内の高校に入って、家からは遠いので短大に通う(三番目の)姉とのアパート暮らしでした。つまり、秋田市内に住んでいたわけです。秋田市だと年に1、2回はオーケストラがやってきます。ですから、高校三年間で6、7回はオケを聞く機会がありました。そのうちの何回目かは覚えていませんが、初めて聞く曲に釘付け(?)になったのが、ベートーベンの交響曲第7番でした。以来、この曲が今に至るまで僕のベスト1です。
【ベートーベン・好きな曲ベスト10の投票】
◎つい、この前、先週の11日です。金曜日の夜の教育テレビで「らららクラシック」という番組があります。普段は30分ですが、この日は1時間で、視聴者が「好きなベートーベンの曲」を投票し、ベスト10を発表するという内容でした。僕は投票まではしませんでしたが、わが7番が何位になるかと固唾をのんで(笑)見ていました。こういう場合、下から発表していくわけですが、「英雄」は第9位だったか早々に出てきました。そして「運命」が第5位、「田園」が6位と、シンフォニーの番号と同じ順位です。3位、4位は「悲愴」「月光」とピアノソナタが入りました。そして、あとは1位と2位。残るは7番と9番です。「もしかして……」という期待をよそに、やっぱりという感じで第一位は第9でした。「そりゃ、まあ、そうだろうなあ……」と、納得ではありました。
◎ただ、例えば生誕200年の時だったら、7番が第2位ということは、あり得なかったと思います。ベスト10に入ったかどうかさえわかりません。番組の司会の高橋克典さんも言ってましたが、7番がぐっとポピュラーになったのは、「のだめカンタービレ」がテレビで放送され、その主題曲のように7番が使われてからですね。調べたら、この放送が2006年ですから、この曲が一気にメジャーになったのは、ここ14、5年のことということになります。元からの7番ファンとしては、うれしいような、自分だけのものを取られたような、やや複雑な気分でもありますが……。
◎最後に、のだめの主役だった上野樹里さんの話題を一つ。彼女は実は岡田淳さんのファンということで、何年か前に、日本図書教材協会主催のフォーラムで、僕がコーディネーターで、岡田さんときたやまようこさんをお呼びして講演と鼎談をやったのですが、その時上野樹里さんが来ていたらしいです(僕は気がつきませんでしたが)。そういえば、岡田淳さんの作品には、クラシックの曲がとても上手に使われています。例えば、文庫では僕が解説を書いている『雨やどりはすべり台の下で』の第一話「スカイハイツオーケストラ」で使われているのは、チャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」の中の「花のワルツ」で、実に絶妙な選曲だと思います。そういえば、今年の協会賞、佐藤まどかさんの『アドリブ』も音楽ネタでした。
◎今年も年末の第9のコンサートはあるようですが(オーケストラの一番の稼ぎ時でしょうし)、さすがにちょっと聞きに行くのは怖いですね。合唱隊は例年だとそれこそ“密”もいいところですが、間隔を開けて、まさかフェイスガードとかをつけるのでしょうか。コンサートや演劇に気兼ねなく行ける日が早く来ることを望みます。