【安倍さんのこと】
◎このブログ、一応5のつく日に更新しているのですが、パソコンを修理に出すことになり、自宅から更新できず、今協会事務局に来て作業しているので、一日遅れになりました。台風10号の被害が思いやられます。
さて、新聞の社説みたいなタイトルになりましたが、安倍首相の突然の辞任表明には驚きましたね。一方で「やっぱり」という感じもあり、病気については「お大事に」というしかありませんが、あれだけ辞めてもおかしくないことだらけだったのに辞めないとなると、そのストレスは人間の限界を超えていたようなところもあったでしょう。だから、「病気で辞める」という辞任の仕方は、安倍さんにとって“名誉”を守れる最後の手段だったような気もします。しかも、総理大臣としての最長記録を作ったとたんに辞めたわけですから(2000本安打を打ったところで引退したプロ野球選手を思い出してしまいましたが)。逆に言えば、あれだけのことをさせておいて、世論の力で辞めさせることができなかった、というのは、残念というしかありません。
◎安倍さんのこれまでのいろいろにもその都度新鮮に(?)驚かされましたが、さらに呆れるのは、総裁選の成り行きです。上記のように、客観的に見れば安倍政権の行き詰まりの末の辞任だったわけですから、従来の自民党の総裁選であれば、嘘でも(?)なんらかの改革とか刷新といった言葉が飛び交っていたと思います。それが、「安倍政権の継承」を打ち出した、ある意味安倍さん以上に安倍政治の担い手だった人が圧倒的大本命というのですから。 つまりは、「国民のために、今何が求められているか」といった命題に、格好だけでも応える気もなく、あるいは余裕もなく、とにかく今の権力体制をどう維持するかということのみでモノゴトが動いているという、民主主義として誠に危機的な状況を、わたしたちは目の当たりにしているのだと思います。
【菅さんのこと】
◎さて、その大本命の菅さんは秋田出身で、僕より一つ年上、つまり同郷にして同世代になります。菅さんが総理になれば、秋田出身者としては初めてのことになります。ここからは飲み屋で一杯やっているおじさんのたわごと程度に聞いていただければよいのですが、僕が協会の事務局長になってそんなに経ってない頃なので、1990年前後あたりでしょうか、ふと気がついたのですが、児童文学の団体のトップに、妙に秋田関係者が多かったのです。
そう思い始めたのは、多分児文芸の理事長に高橋宏幸さんが就任されたのがきっかけだったでしょうか。 高橋さんは児文協の会員でもありましたが、元々は小峰書店の編集長で、絵も文も書かれ、教科書にも掲載された『チロヌップのきつね』が代表作でしたが、秋田大学の全国にただ一つという鉱山学部(今は改組・改称されましたが)の前身の鉱山専門学校卒業という、異色の経歴の方でもありました。僕は同郷ということで、いろいろ声をかけてもらいましたが、ふと気が付くと当時の児童文学学会の会長の滑川道夫さん(僕からは滑川先生という感じですが)も日本子どもの本研究会会長の増村王子(きみこ)さんも秋田出身で、お二人は秋田大学教育各部(の前身の、師範学校および女子師範)の大先輩でもありました。(このお二人も児文協の会員でもあり、滑川さんは児文協理事長も務められました。)
◎実は、残念ながらというか、お隣の岩手県には宮沢賢治、山形県には浜田広介という大看板がいるのに比べて秋田出身ではこれといった作家が見当たりません。もう一つの隣県の青森県にも協会の第二代会長の秋田雨雀がいますし、児童文学ではありませんが、太宰治、寺山修司といった大所がいます(秋田は、児童文学だけでなく、大人の文学でも、これといった名前があがらないのです)。そんな中で、上記のように、児童文学の関連団体の長に意外に秋田出身者が多いことに気が付き、児文協事務局長に成り立てだった僕は、つまりは秋田出身者はこういう調整役という役どころには向いているのだろうという、およそ根拠のない感想を抱いたことがあったわけです。そういうふうに思うことで、自分を励ましたのかもしれません。
菅さんはこれまでまさに「調整役」としての手腕は認められてきたわけで、さてその人がトップになった場合、どうなのか。正直、そんな興味もないことはないのですが、しかしここまで書いたように、秋田出身というだけで何か共通点があるという妄想を抱いたりする僕にとっても、同郷・同世代の菅さんに何かしらの親しみを覚えるかといわれれば、それは自分でも驚くほどゼロです。それほど、今回の自民党総裁戦の構図は、醜いというか、権力闘争丸出しという感じしかしません。
菅さんは、会見でも「秋田の農家に生まれ……」というふうに、自分の出自をむしろやや誇らしげに(つまりエリート政治家の安倍さんなどとは対極にあることを強調したいのでしょうが)語っていましたが、これからは「秋田」という言葉を彼の口から聞くたびに、やや苦々しく思うことになるのでしょうか。