藤田のぼるの理事長ブログ

2022年5月

70、総会間近、そして「教育と愛国」(2022,5,25)

【総会間近となりました】

・今年度の総会・学習交流会が、いよいよ間近となりました。前々回のブログに書いたように、総会前日の学習交流会の開催、そしてその学習交流会と翌日の総会を、顔を合わせる形で(リモートとの併用ですが)開催するのは、3年ぶりになります。僕にとっては、理事長になって初めて対面の総会ということになりますし、学習交流会の後に、文学賞の贈呈、公募賞の表彰があり、自分の手で受賞者の皆さんに賞状を渡すのも、初めてということになります。

・昨日東京に出る用事があり(埼玉の自宅から1時間半以上かかるので、こういう表現になりますが)、帰りに事務局に寄って、出欠表を見ましたが、金曜日の学習交流会は、リアル参加が39名、リモート参加が63名の計102名、土曜日の総会はリアルが32名、リモートが50名の計82名でした。リアル参加の方は、会場定員の半分以下で密にならないのでちょうどいいくらいですが、できれば特に学習交流会のリモート参加が、もう少し増えてほしい気がします。今日・明日であればなんとかなりますので、迷っておられる方がいらしたら、ぜひご出席ください。また、ハガキの(総会)委任状を出し忘れたという方は、メールで結構ですので、「委任する」旨をご連絡いただければと思います。

 それにしても、リアルとリモート併用のハイブリッド開催というのは、それだけ準備が大変なわけで、僕が事務局長時代は3人いたのが、今は事務局メンバーは2人、僕も具体的な準備に関して何も手伝えなかったので、次良丸さんと宮田さんはかなり大変だったと思います。その意味でも、まだの方は、今からでも出席や委任のご連絡を!

【映画「教育と愛国」のこと】

・前回のブログを書いた翌日、16日の月曜日ですが、この日は午後からポプラ社で、那須正幹さんの追悼本(これについては、また書く機会があると思います)の編集会議がありましたが、その帰り、池袋で映画「教育と愛国」を見ました。

 ご存知の方もいらっしゃると思いますが、この映画(ドキュメンタリーです)は、元々は大阪毎日放送のテレビで放送されたものを、さらに膨らませたもの。監督は毎日放送のディレクターでもある斉加尚代さんで、同タイトルの本が岩波書店から出されています。このサブタイトルは「誰が教室を窒息させるのか」となっており、校則の問題をテーマにした今回の学習交流会とも、通じるものがあると思います。

・僕は、映画はどちらかというと、リアルなものより、海外のSFとかぶっとんだものが好きで、日本のドキュメンタリ―映画というのはあまり見た記憶がないのですが、今回は教科書問題がテーマということで、ぜひ見たいと思っていました。「おもしろかった」というより、衝撃を受けた、というか、道徳や歴史教科書のことがメインなのですが、断片的に知っていたことが見事につながったというか、教科書の改編が「ここまで来ているのか」と、うすら寒くなる思いでした。

・そして、改めて感じたのは、従軍慰安婦や沖縄の集団自決の問題などで、歴史教科書の記述にいちゃもんをつけ、教科書の記述を後退させようとする人たちが、肝心の子どもたちのことなど、なにも考えていない、という事実でした。上映館が東京と大阪など限られているのが残念なのですが、見ることのできる方はぜひご覧になってください。こういう映画の観客動員数がまた力になると思うので。

 では、学習交流会、総会でお目にかかります。

2022/05/25

69、小松崎進さんのこと・事務局OBのこと(2022,5,15)

【小松崎進さんの追悼集会が】

・昨日、14日ですが、小松崎進さんの追悼集会が、市川市の文化会館で開かれ、出席しました。内田麟太郎さん、丘修三さん、加藤純子さん、津久井惠さん、木村研さん、国松俊英さん、最上一平さん、そしてきむらゆういちさんや画家の長谷川知子さん、浜田桂子さんなども出席されていました。

・小松崎さんは「知る人ぞ知る」という感じで、作家ではなかったので、ご存じない方も少なからずだと思うのですが、分野としては、文学教育、読書運動家ということになるでしょうが、そうした枠に収まらない幅広い活動をされた方でした。「この本だいすきの会」を立ち上げ、広げた方で、追悼集会も、この会の主催で開かれました。会は2時間ほどで、正面のスクリーンで、在りし日の小松崎さんの姿が映し出され、プログラムの節目節目で、小松崎さんの講演の動画や、昔話の語りが披露され、とても印象深いものでした。

・参加者には追悼集『過去・現在・そして未来へ』が配られ、僕はそこにも書いたのですが、僕が小松崎さんに初めて会ったのは、協会に入会したての25歳の時で、夏の集会に運営のお手伝い役として参加した時でした。小松崎さんは、参加者に配る「速報」の発行の“親玉”で、その活躍ぶりが印象に残り、僕は小松崎さんの書いたものに注目するようになりました。いわゆる実践記録なのですが、教師のそうした文章にありがちな“自慢げ”なところがまったくなくて、絵本や物語を受けとめる子どもの様子が実に生き生きと伝わってくるのです。小松崎さんは、そうした活動を「学校」という枠に閉じ込めることなく、「この本だいすきの会」を立ち上げ、絵本や物語の「読み語り」の運動を全国に広めていったのでした。

【事務局OB(OG)のこと】

・その追悼集に、僕も含めると、3人の元協会事務局員が文章を寄せていました。一人は、現協会員で、元童心社編集長の池田陽一さんです。この本だいすきの会は、作家・画家、そして編集者と読書運動の人たちをつなぐ場でもあったのですが、小松崎さんを囲む編集者たちの会(主な活動は、お酒を楽しく飲むということだったようですが~笑~)があり、その中心の一人が池田さんでした。それは知っていましたが、池田さんの追悼文を読むと、小松崎さんとの出会いは、児文協の事務局員時代でした。そうそう、池田さんは元事務局員で、これは前に書いたかもしれませんが、彼が事務局を辞めると聞いて、僕は事務局に入ることを決意したのです。

・もうお一人、大島早苗さんは、この本だいすきの会員として追悼文を寄せられていましたが、やはり事務局員時代に小松崎さんに出会っていて、協会の活動の中で、とりわけ事務局員の仕事に理解があったのが、小松崎さん、ということだったようです。

・元事務局員と言えば、最近その名前を聞く機会があったのが、僕が入会したころの事務局員だった霜村三二さん(このお名前は、3月2日生まれから)で、3回ほど前のブログに書いた、読売新聞秋田支局からの、「八郎」に関するインタビューの時です。「僕の他に、どなたに取材されましたか?」と聞くと、霜村さんの名前が出てきたのです。霜村さんは事務局を退職後、埼玉県の小学校教員になり、演劇教育などの分野で活躍されました、というより、今も教育評論家という感じで、幅広く発信されています。多分、教室で「八郎」を読んだ経験を文章にしたものを、新聞記者の方が目にされたのだと思います。

・僕が事務局に入る前は、大学を卒業してすぐの人が、言葉は悪いですが、腰掛的に事務局員になり、数年で辞めて、出版社に勤めたり、教員になったり、というパターンでした。僕が事務局に勤めようと思ったモチーフの一つに、そうした状況への反発めいた感情があったかも知れません。

 でも、こうしてみると、元事務局員の人たちが、事務局時代の思いや人脈を生かして、さまざまに活躍されているわけで、それも児童文学者協会のひとつの力かなとも思えます。

・実は、資料集を作った時の「心残り」のひとつが、「歴代事務局員名簿」を載せられなかったことで、ある時代までは、あまりに入れ替わりが激しいのと、記録が残ってないことで、断念しましたが、なにかの機会に、わかっている所だけでも記録に留めておきたいなと、改めて思ったことでした。

2022/05/15

68、学習交流会にご参加を!(2022,5,5)

【ゴールデンウィークです】

・連休、いかがお過ごしでしょうか。僕のようにフリーで時間を過ごしている人間にとっても、なんとなくいつもより休み気分になれる気がします。 一昨日、3日ですが、早く済ませたい仕事があったので神楽坂の事務所に行きました。途中、川越の図書館に本を返しに寄ったのですが、川越も神楽坂も、言わば観光地ということもあり、結構な人出でした。連休は、例年上野公園で児童書のフェアがあり、今年3年ぶりの開催となり、昨日協会もブースを出しました。僕は失礼しましたが、とても盛況だったようです。

・この期間は、僕にとってはなぜか「誕生日ラッシュ」の時期で、昨日の4日がカミさん、1日が孫(2歳になりました)、10日がその孫の母親(つまり娘)の誕生日という具合で、一年の内で多分もっともケーキを食べる時期(笑)でもあります。また、連休期間にはほぼ必ず千葉に野球を見に行くことにしていて、今年は7日に行きますが、3年ぶりにビールを飲める観戦になります。

【学習交流会のこと】

・さて、この連休の期間中に届いていると思いますが(いま郵便物が前より遅れていて、ご遠方の方は連休明けになるかもしれませんが)、総会の案内をお送りしました。ここ2年、総会はリモート、そして前日の学習交流会、文学賞贈呈式は開けませんでした。今年はさすがにパーティーは無理ですが、前日の学習交流会は開催し、その後で文学賞の贈呈、表彰の場も設けます。前日の総会も含めて、リアル参加とリモート参加両方OKの、ハイブリッド開催になります。条件のある方は会場においでいただければと思いますが、ご遠方の方はもちろん、外に出づらいという方も、ぜひこの機会に、リモート参加にチャレンジしてみてください。(初めてで、やり方がよく分からないという方は、遠慮なく事務局にお尋ねください。)

・今年の学習交流会のテーマは、「いま、「主権者としての子ども」を見つめて」ということで、校則の問題を取り上げました。講師の内田良さんは、荻上チキさん等と共に、こうした管理教育の問題について中心的に発信してこられた方で、僕もとても楽しみにしています。

 最近読んだ本に『プリズン・サークル』(坂上香著、岩波書店)というのがあり、これは(僕もまったく知らなかったのですが)若い受刑者の更生を主目的とした「社会復帰促進センター」(PFI刑務所)という施設が国内に四カ所あり、これに取材したノンフィクションです。著者は本と同タイトルの映画も作っていて、あるいはご覧になった方もいるかもしれません。元々はアメリカの取り組みを参考にし、建物の作りや受刑者の管理のしかたも通常の刑務所とはかなり違っているのですが、一方で日本の刑務所の体質を反映している面も隠せません。

・著者は映画を作るため、3年にわたって取材、撮影したのですが、印象的だった箇所に、食事の場面がありました。食事中は一切の会話が許されていないのですが、これを見た方が「娘の学校とそっくり! 小学校でも黙食をやってるんですよ」という感想を漏らされたのだそうです。これに続いて「元小学校教師で教育研究者の霜村三二は、このように沈黙を強要する教育について、全国の現役教員二百名を対象に調査を行い」と、その結果を紹介しています。

 日本の学校の在り方は(詰襟の制服が象徴するように)軍隊の方式が元になっている、という話もありますが、「校則」というはっきりした形になっていることだけでなく、子どもたちを強制し、管理していくという発想が、根本のところにあるように思えてなりません。 なお、上記の霜村三二さんは、実は協会の元事務局員で、僕が入会したころ(50年近く前ですが)事務局にいて、その後教員に転じた方です。いつか、この霜村さんにも話をしていただきたいなと思っています。

 そんなことで、わたしたちの作品を受けとめる日本の子どもたちが、彼らの時間の大半を占める学校という場で、どんな思いでいるのか、改めて見つめ直す機会になければと願っています。リアルでも、リモートでも、ぜひご参加ください。もちろん総会の方もですが、こちらはご出席されない場合は、必ず委任状をお願いします。

2022/05/05