【子ども創作コンクールのこと】
◎協会が児童文芸家協会、公文教育研究所(およびくもん出版)と共同で毎年募集している「おはなしエンジェル・子ども創作コンクール」という公募コンクールがあります。例年『日本児童文学』の1・2月号に入選作品が掲載されるので、ご存知の方も多いと思います。始められたのが2000年ですから、もう21年目になります。ただ、昨年はコロナ禍で実施できなかったので、今回が20回目となります。
2000年というのは、「子ども読書年」ということで、90年代に子どもの読書離れということが盛んに言われ、この年を契機に、学校図書館の整備などの施策が取り組まれるようになりました。 この時に、作家団体にふさわしい企画をということで、公文教育研究会の全面的なバックアップを受けて、児文協・児文芸の両団体で、子どもたちに創作を通じて物語のおもしろさを体験してもらえる、創作作品のコンクールを始めることにしたわけです。感想文コンクールとか作文コンクールはいろいろありますが、やはり「創作」となるとハードルが高くなる面があり、応募数もとても多いという数ではありませんが、毎年いい作品が寄せられて、20回を迎えることができました。
僕は立ち上げから何年かは選考にも立ち会って、応募原稿を読んでいましたが、その後はしばらく“お休み”をいただいてきました。ただ、両協会の理事長が交代で授賞式で講評を述べることになっており、今回僕の番だったので、久しぶりに応募作品(といっても、入選作品だけですが)を読ませてもらいました。幼児および小学校低学年、中・高学年、中学校と三段階に分かれていますが、どの入選作品も、なんというか、物語の〈ツボ〉を心得ている感じで、ちょっと感心してしまいました。十数年前の応募作をちゃんと覚えているわけではありませんが、今回久しぶりに読んで、入賞作品が全体として粒ぞろいで、選考委員がその中から「最優秀」「優秀」作品などを選り分けるのが大変だったろうなという感想でした。
【そして、授賞式でのハプニング】
◎ということで、この前の土曜日(11月27日)午後、リモートでの授賞式を行いました。前回のブログを書いた、その後のことです。上記のように、このコンクール自体2年ぶりで、リモートの授賞式はもちろん初めてです。くもん出版の担当者がすべてお膳立てをしてくださって、僕らはそれに乗っかればいいという形でした。当日、開会の一時間前の午後一時にリハーサルがあり、これは問題なく終わりました。そして二時の開会に向けて僕はお茶を飲んだりして、1時45分ころだったでしょうか、改めて画面に入ろうとしたわけです。
ところが、リモートのパソコンの画面が真っ暗で、何も映りません。最初は僕の方ではなくて、ホストのくもん側のトラブルかと思いました。今までもう何十回もリモートの会議などをやって、こんなパターンはありませんでしたから(電波状態が不安定でつながりにくくなる、ということは何度かありましたが)。しかし一向に回復しません。一度電源を切って入り直そうと思ったのですが、シャットダウンの表示も含めて、画面が真っ暗で、それもできません。電源を抜いてみたのですが、僕のリモート用のパソコンはコンパクトなサイズで、結構バッテリーが効くので、電源を切ることもできないのです。
◎さすがに、あわてました。僕の出番は、始めの方にあり、選考委員の紹介が終わったら、僕の15分の講評になります。「選考委員の一人」ということなら、その人の顔を見られなかった、で済むわけですが、僕が選考委員を代表する形で講評をする役目だったので、誰ももちろん準備はしていません。つまり、授賞式の一番肝心なところがなくなってしまうわけです。
僕の仕事部屋は、庭の離れ(というほどのものでもありませんが)になっていて、WiFiの無線のルーターなどはリビングにあります。それを確認しようとリビングに行ってみると、娘がパソコンに向かっていて、インターネットを使っています! つまり、僕が仕事部屋に戻った後、たまたま早く帰ってきた娘が自分のパソコンを起動させ、インターネットの回線が乗っ取られていたわけです。 「なんてこった!」と思いましたが、とにかく原因はわかりました。急いで娘の回線は切らせ、仕事部屋に戻りましたが、パソコンの真っ暗は相変わらずです。ただし、今度は声だけは聞こえて、選考委員の紹介も終わり、僕が呼び出されています。しかし、出ることができません。
娘がそんな僕の様子を見て、自分のスマホでズームの画面を呼び出そうとしてくれました。そのためには、授賞式のズームのIDが必要ということで、もう一つのパソコンで送ってもらっていたメールを呼び出してIDを確認し、などという作業を、あたふたと始めました。その時、加藤純子さんから電話があり(このコンクールは子どもと読書の委員会の担当で、その責任者が加藤さん)、「藤田さん、画面に出てこないけど、どうしたんですか?」というわけです。現状を説明し、なんとかスマホから入って、時間内に戻るように努力します、とは言ったものの、正直戻れるかどうか、確信はありませんでした。
そしたら、娘のスマホに授賞式の画像が映り、入賞した子どもたちの一言コメントが始まっていました。本来、僕はその前に話すはずだったわけですが、順番は逆になりましたが、なんとか準備していた「講評」を、スマホ越しに話すことができました。
◎ということで、今回の教訓。これは皆さんの身にも起こり得ることです(笑)。もしリモートの途中で、パタッと画面が切れてしまったら、家族の誰かに回線を乗っ取られた可能性があり、それを疑え、ということ(独自の回線を持っていれば別ですが)。そして、今回感じたのは、つくづくリモートは何があるかわからない、ということ。〈犯人〉も娘でしたが、僕だとスマホにIDを打ち込んでという技はできないので、助けてくれたのも娘ということになります。
ちなみに、1月に「新入会員の集い」がリモートであり、ここで協会の歴史や活動について45分ほどしゃべることになっていますが、今回のような思いはしたくないので、今度は事務局に行って、そこから話そうと思っている次第です。