藤田のぼるの理事長ブログ

遅くなりましたが、総会報告1です

【報告が、とても遅くなってしまいましたが……】

5月30日の学習交流会と文学賞贈呈式・パーティー、31日の総会が終わってから、20日以上経ってしまいました。本来なら、とっくにこの場で報告しなくてはいけなかったのですが、古田元会長の急逝という事態があり、このタイミングになってしまいました。今更という気もするのですが、報告をご覧になる会員の方たちにとっては必ずしもそうではないと思うので、やはり書くことにします。なお、ブログの第1回目にも書きましたが、このブログは協会としての「公式」な見解を述べる場ではなく、あくまでも藤田の視点による私的なものであることを、改めて申し上げておきます。

【まずは学習交流会のこと、その前に土日から金土への変更のこと】

この「学習交流会」というのは、今年で5年目になるでしょうか。それ以前は、土曜日に総会と文学賞贈呈式・パーティーがあり、翌日の日曜日に「総会付設研究会」というパターンでした。この形は1972年からのようで、僕は74年の入会ですから、僕が知っている限りはこのパターンでした。ところが、土曜日休みが一般的になり、文学賞贈呈式においでいただく出版社の方たちは、休日に出てこなくてはいけなくなりました。実際、他のほとんどの文学賞贈呈式は、平日に行われています。

そこで、五年前に、思い切って贈呈式を金曜日に変えることにしました。この時、総会も同様に金曜日にして、翌日に付設研究会(つまり、土・日を金・土に変更する)という案も浮上したのですが、平日午後に総会というのは、勤務を持っている人を事実上締め出す形になってしまうということで、総会は土曜日のままとしました。ところが、そうなると、大きな心配がひとつありました。

というのは、総会などというのはそもそもそんなにおもしろい?場ではなく、その後にパーティーが控えていればこそ参加しようと思うわけで、土曜日が総会だけということになると、出席者がガクッと減ってしまうのではないか。また、金曜日の贈呈式にしても、出版社の人たちは来やすくなるかも知れないが、会員の人たちは平日の夜、これもわざわざになるわけで、参加者が減るのではないか、という心配です。つまり、両日に分けたことで、どちらの参加者も減ってしまうのではないかという危惧でした。

そこで、贈呈式の前に、付設研究会というほど堅苦しい?場ではない、それでも聞いてみたいというような話が聞ける場を設定したら、ということで、「学習交流会」というのを考えたわけです。最初の2年は、最大の関心事であろう児童書の出版をめぐる話題をフォーラム形式でやりました。そして一昨年と昨年は、組織部からの提案で「同人誌フェスタ」を開催し、これも好評でした。その同人誌フェスタは、今年からはパターンを変えて設定することになり、さて改めて学習交流会の中身をどうしようということになったわけです。協会には、いろいろな分野で仕事を重ねられてきた方たちがおり、この機会にそういう方のお話をうかがったら、ということで、名前が出たのが、名誉会員でもある森久保仙太郎さんだったわけです。

【そして、当日】

会場定員の90名を上回る、びっしりの参加者(補助いすを十数脚出しました)の前に登場した森久保さん。96歳という年齢がウソのような、お元気などという言い方が失礼という感じのダンディーなたたずまい。「座って話されますか?」とお聞きしたのですが、立ったほうがやりやすいということで、実際1時間半ほど、ずっと立ってお話をされました。それをここで再現することはもちろんできませんが、僕が感心したのは、話がきわめて具体的であることです。森久保さんは、絵本の実作者であり、翻訳家であり、研究者でもいらっしゃいます。例えば僕などは、どうしても「そもそも現代の児童文学は……」といった大上段の構えになるのですが(そういうふうに組み立てたほうが、むしろ楽なのです)、森久保さんのお話は、「はらぺこあおむし」にまつわる、一見小さなエピソードを重ねていって、いつのまにか見事な絵本論になっているのです。特に印象に残ったお話を一つだけ紹介しますが、お話の後の質問の中で、「絵本の文章のありかた」を尋ねるものがありました。この時、森久保さんは、こぐま社の「こぐまちゃん」の絵本を作るときのエピソードを話されました。

赤ちゃん絵本がまだほとんどなかった時代、あの絵本の文章にとても苦労されたこと。絵で足りないところは絵を直していけばいいし、絵を見てわかることを文章にする必要はない。こぐまちゃんがおまるに座っている場面がありますが、その場面にどんな文をつけるか、随分考えた。その結果出てきたのが、「まだですか・まだですよ」というやりとりの文で、これによって、画面にはまったく登場してこないお母さんの存在が子どもたちに見えてくるわけで、このエピソードは本当に絵本の文章の真髄を象徴するようなお話だと思いました。

ということで、大分長くなったので、いったんここで終わり、贈呈式と総会については、次回に譲ることにします。前のほうで一つ書き忘れましたが、今の総会パターンになるまで、総会の翌日に開催していた「付設研究会」がなくなったわけですが、その代わりによりオープンな「公開研究会」が企画され、春の総会・秋の公開研究会という形が、大分定着してきたように思います。

2014/06/21