【チラシをお送りしましたが】
・会員の皆さんには、少し前に届いたであろう会報に、本のチラシを同封させてもらいましたが、『遊びは勉強 友だちは先生~「ズッコケ三人組」の作家・那須正幹大研究~』が、この度ポプラ社から刊行されました。我が家は毎日新聞なので、13日の朝刊の一面の下(書籍広告が並んでいるところ)にその広告が載っていましたが、朝日は今日のはずなので、それでご覧になった方もいらっしゃると思います(読売と日経は、日曜日に掲載されたはずです)。そこにも、またチラシにも名前が載っていますが、僕は宮川健郎さん、津久井惠さんと共に、この本の編集にあたりました。
タイトルの「大研究」というのは、今回の編者でもある宮川さんが、石井直人さんと編集した3冊にわたる『ズッコケ三人組の大研究』を踏襲したもので、またメインタイトルにした「遊びは勉強 友だちは先生」というのは、那須さんが色紙などに好んで書いたフレーズです。いかにも那須さんらしい言葉だと思います。
・本書の内容ですが、全部で5章から成り、第1章が「那須正幹のことば」として、那須さんの最初の記憶である、1945年8月6日の原爆についての記述から始まり、折々のエピソードをはさんで、「東日本大震災」、そして最後は「なぜ日本は平和なのか」というエッセイ、というふうに、那須さん自身が書かれた文章や、インタビューを引用しながら、那須さんの歩みを構成しています。
また、第2章では、「那須正幹が書いたこと」として、〈遊ぶ〉〈追いつめる〉〈探しだす〉〈解きあかす〉〈漕ぎだす〉〈祈りつづける〉〈迷いこむ〉〈生きる〉の八つのキーワードから、多彩な那須作品を読み解いています。評論家にまじって、吉橋通夫さん、富安陽子などにも執筆してもらいました。
以下、「3章「ズッコケ三人組」わたしのイチオシ」「4章 座談会・那須正幹さんとの本づくり」、そして第5章は、「平和の願いをつなぐ場所・つなぐ人」として、「ズッコケ三人組」や原爆を描いた作品の舞台が紹介されます。
・この本のもうひとつの“売り”は、これらの各章をつなぐように、那須さんとご縁のあったさまざまな方たちからの追悼エッセイが寄せられていることで、児童文学関係者だけではなく、辻村深月、リリー・フランキー、俳優の原田大二郎さんなども並んでいます。さらに上記3章の「イチオシ」には、伊坂幸太郎、万城目学、バイオリニストの五嶋龍さんといった人たちも登場していて、この世代の読書体験の中で、「ズッコケ三人組」を始めとする那須作品が、どれだけ大きな位置を占めていたかがわかります。
【それにしても】
・本当は、追悼本など作りたくはないのです。ただ、そのあたりは矛盾していて、やっぱりこういう本が作れたことはうれしいのです。会報にもこのブログにも書きましたが、僕は大学の二年目の4年生の時、大学の同人誌に書いた「雪咲く村へ」という作品を、『日本児童文学』の同人誌評で、デビューしたばかりの若手作家・那須正幹に随分ほめてもらい、その後那須さんの推薦で、僕の初めての創作単行本になったわけですが、それを書いたのは22歳、今からちょぅど50年前になります。甘えたことをいえば、那須さんには「元会長」としてずっと会を見守っていてほしかったと思いますが、今回の本で、改めて那須さんの文学人生を振り返り、そのたゆまぬ、そしてゆるぎのない歩みに、頭が下がる思いでした。
当初の予定より大分本のボリュウムが増し、価格も2700円(本体)と上がったのですが、会報に書いたように、会員は2割引きということで、ポプラ社にお願いしました。創作を続けている人、目指す人にとって大きな価値のある、「大研究」というタイトルに恥じない一冊になったと自負していますので、どうかお読みになってください。