編集部だより

『日本児童文学』を読む会を行います

 編集部ブログ担当の荒木です。

 5・6月号の新藤悦子さんの「作家とLunch」で紹介されていた東京ジャーミーに先日、見学に行ってまいりました。ホームページを検索したところ、とてもきれいなイスラム寺院で、一般の見学もできるということで行ってみたのです。実際にそこに入ってみると厳粛な気持ちになり、ホームページの画像を超える美しさでした。

 さて、『日本児童文学』を読む会をZoomにて行います。今回は、3・4月号と5・6月号を一緒に行います。読者であればだれでも参加できます。

 

 

☆Zoomオンライン『日本児童文学』を読む会☆

 

【日 時】   2023年6月29日(木) 18:00~20:00

【テーマ】   2023年3・4月号と5・6月号

【ホスト】   奥山恵(編集長・評論家)

【ゲスト】   間中ケイ子(詩人・編集委員)

【申し込み方法】メールにてご連絡ください。

        megumiokuyama18@gmail.com

2023/06/14

5・6月号のここに注目②

 編集ブログ担当の荒木です。

 編集後記の拡大版といった感じで、ここでは注目ポイントを書かせていただきます。

 今回は、田中六大さんのマンガ『学校の怪談』に注目します。

 学校の階段の12段目を踏むと呪われるといううわさがあるということを娘から聞きます。呪いを信じる純粋な子どもたちの物語のように思わせておいて、でも最後は、同じように少し怖がっている大人の自分に話がつながりオチとなります。大人の中にある子どもの部分をユーモラスに描く作者の視線がいいです。

 同じ作者の『おしっこもらスター』(あかね書房)は、授業中におしっこを漏らしてしまったよしおの物語です。どん底気分で公園のベンチに座っているよしおは「なやみがあるならおいらに話してみなよ」と猫に話しかけられます。すると、理由を聞いた猫は立ち上がりギターを抱えたロックンローラーに変身。「そんなときは歌にするんだ(中略)かなしみをぜんぶぶちまけるんだ」と叫ぶ猫の勢いにのまれるようにしてよしおは、おしっこを漏らした正直な気持ちを歌いあげます。

 この勢いが物語の肝であり、作者のやさしさとも言えるでしょう。それは『学校の怪談』で感じられる作者の視線とも通じるようです。機会がありましたらぜひとも『おしっこもらスター』も読んでみてください。

 これからも、注目ポイントを載せていきますので、お楽しみに。

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 前回のブログでもお知らせしましたとおり、本誌11-12月号では、「クリスマスをうたう」として、詩歌の募集をいたします。ふるってご応募ください!

 

「日本児童文学」✿詩歌作品募集

詩・童謡・俳句・短歌

~クリスマスをうたう~

 

「日本児童文学」11・12月号では、クリスマス特集として、クリスマスにちなんだ創作や論考を掲載する予定です。併せて「クリスマス」をテーマにした詩歌作品の募集をいたします。

《募集要項》

✿応募作品のジャンル

 ・詩・童謡・俳句・短歌

✿字数   

 ・詩・童謡

 本誌の見開きに入る分量

 ・俳句・短歌

 タイトル+三句・三首

✿応募方法

 ・いずれかのジャンルを選び、

 応募は一人一篇のみ

✿締め切り

 ・2023年6月末(消印有効)

✿応募資格

 ・どなたでも応募いただけます。

 ・会員外の方は、本誌5・6月号の「応募券」を同封ください。

✿作品選考について

 ・選考は本誌編集委員が行います。

 ・入選作品は、本誌11・12月号に掲載し、所定の原稿料をお支払い致します。

✿送り先

 〒162-0825  東京都新宿区神楽坂6-38-502

「日本児童文学」編集委員会・宛

2023/06/05

5・6月号のここに注目①

 編集部ブログ担当の荒木です。

 平澤朋子さんの「深く潜った先に特別な物語に出会える」という〈表紙の言葉〉どおりの素敵な絵からはじまる5・6月号はいかがでしたか。

 編集後記の拡大版といった感じで、ここでは注目ポイントをいくつか書かせていただきます。

 今回の年度回顧の座談会の特徴は、児童文庫をこれまでにない熱さで掘り下げてみたところです。発言者の一人、大島丈志さんは次のように述べます。

「児童文庫は、趣味の開発、「新書」の役割があると考えています。たとえば私があげた『美桜のペット探しノート』は、迷子になってしまったペットを見つける専門家に弟子入りする小学生の話で、物語仕立てで、動物に関する知識を広げていくというところが確実にあると思います。」そして、「児童文庫が、コミュニケーションのとりかた、職業を知ることなど子どもの指南役になって」いるとも指摘します。

 同じく発言者の一人である川嶋智美さんは、学校図書館の司書という立場から、児童文庫の読まれ方として、次のような発言をしています。

「絵本のあとに、低学年の子たちも、恋愛とか高学年の子とかにあこがれて、こういう児童文庫をがーーと読んで、そして高学年になって、児童文学ふっと戻ってくるんですよ。」

 これを受けて本誌編集長の奥山が、

「私たちは、なんとなく絵本から幼年もの、そして児童文学という流れを想定していましたが、じつは、絵本のあと、児童文庫から児童文学という流れも、すすめ方によってはあるのかなと思いました。」

と述べていますが、まったく同感です。

 児童文庫は、エンターテイメントに特化した読み物といったとらえ方をしていましたが、従来のそういった視線をくるりとひっくり返す指摘です。ここから何か新しいものが見えてくるのかもしれません。

 これからも、注目ポイントを載せていきますので、お楽しみに。

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 前回のブログでもお知らせしましたとおり、本誌11-12月号では、「クリスマスをうたう」として、詩歌の募集をいたします。ふるってご応募ください!

 

「日本児童文学」✿詩歌作品募集

詩・童謡・俳句・短歌

~クリスマスをうたう~

 

「日本児童文学」11・12月号では、クリスマス特集として、クリスマスにちなんだ創作や論考を掲載する予定です。併せて「クリスマス」をテーマにした詩歌作品の募集をいたします。

《募集要項》

✿応募作品のジャンル

 ・詩・童謡・俳句・短歌

✿字数   

 ・詩・童謡

 本誌の見開きに入る分量

 ・俳句・短歌

 タイトル+三句・三首

✿応募方法

 ・いずれかのジャンルを選び、

 応募は一人一篇のみ

✿締め切り

 ・2023年6月末(消印有効)

✿応募資格

 ・どなたでも応募いただけます。

 ・会員外の方は、本誌5・6月号の「応募券」を同封ください。

✿作品選考について

 ・選考は本誌編集委員が行います。

 ・入選作品は、本誌11・12月号に掲載し、所定の原稿料をお支払い致します。

✿送り先

 〒162-0825  東京都新宿区神楽坂6-38-502

「日本児童文学」編集委員会・宛

2023/05/24

「遍在する詩歌」を読んで

     編集部ブログ担当の荒木です。3・4月号の特集「遍在する詩歌」はいかがでしたでしょうか。

 対談をしてくださった松村由利子さんは科学絵本の著作がありますが、歌人でもあるということで、短歌で日常をつづった『物語のはじまり』という著作を読ませていただきました。そのあとがきに次のような言葉が書かれており、まったく同じことが児童文学においても言えるのではないかと思い、心に残りました。

〈歌壇ジャーナリズムでは、新奇性や話題性のある作品が繰り返し取り上げられる一方で、味わい深い佳品がそれほど話題にもならずに忘れられてゆく現実がある。歌の力によって折々に慰められ励まされてきた者としては、たいそう残念なことに思う。〉

 そんな思いから著者の心を動かした作品を取り上げ、わたしたちの日常とのつながりが語られます。「病む、別れる」の章では、病床に伏した正岡子規の「足立たば北インジャのヒマラヤのエベレストなる雪食はまし」が紹介され、エベレストの雪を食べたいと願う子規は、「激しい痛みの中で」「自分の魂を解き放ち、どこへでも行くことができたのだ」と語ります。

 力強さとともに軽やかさも感じられ、新しさのヒントにもなるように思えました。

 

 今回は、編集部の間中ケイ子さんに“自転車に乗ってやってくる~詩歌”という文章を書いていただきました。

 

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  “自転車に乗ってやってくる~詩歌”

    ~「日本児童文学」3・4月号を読んで~

 

 遠くから来る自転車さがしてた 春の陽、瞳、まぶしい。どなた

       (『回転ドアは、順番に』穂村弘×東直子 ちくま文庫)

 

(前略)現代短歌をけん引する二人、穂村弘と東直子による恋愛詩歌の往復メールをまとめた『回転ドアは、順番に』だ。冒頭に掲げた歌はその一行目だが、口語で書かれた三一文字から、自転車は来るかと遠くへ目をやったときの、春の陽のまぶしさ、言葉を四つ並べた畳みかけるような下の句と自転車が来るさまとの響き合い、そこにこめられた想いなどが一気にたちのぼり、わたしを魅了した。(後略)    

           (「日本児童文学」3・4月号 三辺律子 論考より)

 

「日本児童文学」3・4月号特集「遍在する詩歌」のこの三辺律子氏の論考「詩歌ブームは軽いのか」を読み終えたとき、目の前が、ぱーっと明るく開けたような気分になりました。まるで、窓を開いたとき、新しい風が吹き抜けていくような清涼感です。自然体でまっすぐに立つ、その姿の清々しさとでもいいましょうか。

 私の中の短歌や俳句は、教科書で学んだままの感覚がどこかに残っています。それは、緻密な自然観察や雄大な時の流れを感じさせる表現など、凝縮された荘厳な文学の世界という記憶です。

 しかし、今号にご寄稿いただいた穂村弘さんの短歌作品にもみられるように、新しい詩歌の風はたしかにふきぬけて、若い世代にもひろく親しまれていくようすが見えてきています。肩の力をぬいたときにこそ、本音の言葉が生まれでるのかもしれません。まさに目から鱗が落ちるというのは、こういうことなのでしょうか。

 

 飲みかけのペットボトルが増えてゆくこの子は飲めるこの子はやばい

 また僕を開けっぱなしにしてるって夜の冷蔵庫に叱られる

             (「日本児童文学」3・4月号「この子はやばい」穂村弘)

     

                         (編集委員 間中ケイ子記)

 

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 前回のブログでもお知らせしましたとおり、本誌11-12月号では、「クリスマスをうたう」として、詩歌の募集をいたします。ふるってご応募ください!

 

「日本児童文学」✿詩歌作品募集

詩・童謡・俳句・短歌

~クリスマスをうたう~

 

「日本児童文学」11・12月号では、クリスマス特集として、クリスマスにちなんだ創作や論考を掲載する予定です。併せて「クリスマス」をテーマにした詩歌作品の募集をいたします。

《募集要項》

✿応募作品のジャンル

 ・詩・童謡・俳句・短歌

✿字数   

 ・詩・童謡

 本誌の見開きに入る分量

 ・俳句・短歌

 タイトル+三句・三首

✿応募方法

 ・いずれかのジャンルを選び、

 応募は一人一篇のみ

✿締め切り

 ・2023年6月末(消印有効)

✿応募資格

 ・どなたでも応募いただけます。

 ・会員外の方は、本誌5・6月号の「応募券」を同封ください。

✿作品選考について

 ・選考は本誌編集委員が行います。

 ・入選作品は、本誌11・12月号に掲載し、所定の原稿料をお支払い致します。

✿送り先

 〒162-0825  東京都新宿区神楽坂6-38-502

「日本児童文学」編集委員会・宛

 

 

2023/05/03

『日本児童文学』✿詩歌作品募集のお知らせと『日本児童文学 3・4月号』の紹介 その1

「日本児童文学」✿詩歌作品募集

詩・童謡・俳句・短歌

~クリスマスをうたう~

 

「日本児童文学」11・12月号では、クリスマス特集として、クリスマスにちなんだ創作や論考を掲載する予定です。併せて「クリスマス」をテーマにした詩歌作品の募集をいたします。

 クリスマスは宗教的な祭としてばかりでなく、新年を迎える文化的な祭としても世界中に親しまれている年末の行事です。なかでも、子どもたちにとっては、夢をはこぶサンタクロースの存在は格別です。日本では、1941年の子供雑誌『子供之友』に赤い帽子、赤い服を着た現代と同じイメージのサンタクロースが描かれたのを機に広まったといわれています。白い雪の中、贈り物をいっぱい積んだソリに乗って、サンタがやってくる…そう思うだけで楽しくなります。

 子どもばかりではなく、大人にとっても、家族や友人と語り合う冬の日の「クリスマス」という時空の魅力を再発見できるような、新鮮な詩歌の世界が開かれることを願っています。

 

《募集要項》

✿応募作品のジャンル

 ・詩・童謡・俳句・短歌

✿字数   

 ・詩・童謡

 本誌の見開きに入る分量

 ・俳句・短歌

 タイトル+三句・三首

✿応募方法

 ・いずれかのジャンルを選び、

 応募は一人一篇のみ

✿締め切り

 ・2023年6月末(消印有効)

✿応募資格

 ・どなたでも応募いただけます。

 ・会員外の方は、本誌5・6月号の「応募券」を同封ください。

✿作品選考について

 ・選考は本誌編集委員が行います。

 ・入選作品は、本誌11・12月号に掲載し、所定の原稿料をお支払い致します。

✿送り先

 〒162-0825  東京都新宿区神楽坂6-38-502

「日本児童文学」編集委員会・宛

 

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 編集部ブログ担当の荒木です。

 今回は『日本児童文学 3・4月号』の中の「作家とLunch」について少しだけ紹介します。

 

 

 3・4月号で私が最初に読んだのは「作家とLunch」です。副題にあるように「創作のひみつ」が語られていて、今回は内田麟太郎さんのひみつです。

 少し引用します。

「寝る前にリラックスしているときに、詩の言葉とか童話や絵本の卵が浮かんでくるわけ。それをメモするのね。」

「寝て起きたら、気持ちがほどけてしまっているからね。」

「日ごろ気にかけていることが、うまくほぐれて出てくる時と、考えていないことが出てくるのと二通りある。」

 ほんのこれだけ読んだだけでも私は満足してしまいます。なるほど創作のアイデアは「ほぐれて出てくる」まで待つことも大切なんだと。

「作家とLunch」は、前号からの新企画で、そのときは、石川宏千花さんが語ってくれました。

 私のお気に入りの箇所を引用します。

「物語の書き始めは、登場する人の名前はまだつけていないんですね。先に名前をつけちゃうと、その名前のイメージに引っ張られて物語が別な方へ行きそうな気がするんです。」

 これなんかも、その物語がどちらに進んでいくかを見極めようとしている石川さんの姿が浮かんでくるようで、作品を読むのとはまた違う楽しさが味わえました。

 次号の「作家とLunch」のインタビューもすでに終了しております。どなたのインタビューになるかは、まだここでは「ひみつ」です。

 

2023/03/27

『日本児童文学1・2月号』を読む会

 編集部だよりをご覧のみなさま、こんにちは。山﨑道子さんからバトンタッチをして今回より担当となりました編集部の荒木せいおです。よろしくお願いいたします。

 今回の内容は、2月27日(月)18:00よりおこなわれた「日本児童文学1・2月号を読む会」の報告です。編集部の相川美恵子さんがその様子を生き生きと伝えてくださいます。

 

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  2023年1-2月号を読む  2023年2月27日(金)18時~  リモート開催

         『日本児童文学』を読む会 まとめ

 

 皆さん、お久しぶりです、編集部員の相川です。もう3月。春が来ます。嬉しいです。

 

 ずいぶん昔ですが、私は宇治市の山の中にある人形劇団にいました。ある春のこと。どういう流れか忘れてしまいましたが、焚火を囲んでの大宴会となりました。はこべ、よもぎ、たんぽぽ、つくしなんかを総出で採りに行き、てんぷらにしたりおひたしにしたり。よもぎはもちろん団子に。意外においしいのはたんぽぽの花の天ぷらなんです。飲みかけの貴重な日本酒と湯飲みをてんでに持ち寄って、一晩じゅう騒ぎまくりました。なんせ山のなかですからね。茶畑しかありません。いくら喚いても犬がしっぽを振るぐらいです。というわけで、タンポポを見つけると、今でも「おいしそうだなぁ」と思ってしまいます。

 

 さて今年最初の「読む会」が2月27日(金)の18時から、例によってリモートで開催されました。今号は創作特集です。編集部からは司会担当の奥山編集長以下、小川さん、相川が参加。また、荒木さんは今期からの編集部員でかつ、今回のゲスト(新企画「作家とLunch」で奥山編集長とともにインタビュアーを担当)です。さらに今号に短編を書いてくださったはらさん。はらさんも今期からの編集部員です。どうぞ、よろしく。

 

 ご参加いただいた皆さんは次の通りです。小学校で図書館司書をされている川嶋さん。児童文庫を年に200冊は読んでいらっしゃいます。小誌からも年度回顧のご論考や、座談会へのご参加をお願いしています。今号から創作時評をお願いしている松嶋さん。児童文学批評家の西山さん(かつて小誌の編集長もされています)。小学校の先生のHさんは25年ぐらい前から児童文学の紹介を続けていらっしゃいます。会員で詩人のIさん。そして今回初めてご参加くださったのはOさん。幻想的な作風のものを書いていらっしゃいます。偶然にネットでこの会を知ってくださったとのこと。ようこそ!!

 

〈詩、俳句、短歌、マンガについて〉

 早速、荒木さんに口火を切って頂き、ひとまず詩からマンガまでのところで、自由に感想や意見を交わしました。歌人でもある奥山さんからは、俳句と短歌の違いについてコメントがありました。またHさんからは、子どもたちに短歌を書いてもらうこともありますよっていう、現場の先生ならではのご発言が。

 

 なかでも、はっとしたのは、西山さんからのご指摘でした。今号のテーマ「やめる?やめない?」と関係づける形で、西山さんが「だけど、子どもって、やめる前にまだ、始めてないってところがありませんか?」と問うたんです。川嶋さんからも強い同意の発言がありました。ああ、そうか、そうだね、ってリモート越しに気づきの輪が広がった瞬間です。こういうときですね、みんなで一つの作品を読む喜びを感じるのは(このタイミングで相川のおなかがぐうって鳴いたのが、個人的には情けなかったですけど)。

 

〈短編からノンフィクション、創作時評まで〉

 そうそう、皆さん、岡田淳さんのマンガはいかがでしたか?『プロフェッサーPの研究室』(岡田さんのマンガ集)を思い出させるシュールな世界が見事ですよね。

 

 田中哲弥さんの「夏休みの心得」も、どこか時空間の遠近法が溶け出しているというか、たわんでいるような作品です。いままで聴く側に徹していらっしゃったOさんですが、おずおずと次のような感想を語ってくださいました。「ボク、この主人公の気持ち、めちゃくちゃわかります。めっちゃわかる。「どうでもいい」って書かれてるの、ほんとにそうだと思いました。で、最後の「どこにでも行ける」って、なんか、すがすがしくって、前向きで、この作品、ボク、好きです」。

 

 作品が、本当にそれを求めている人のところに届いた、と感じました。作品にとっても読者にとってもこんな幸福な出会いはないですよね。その嬉しさを共有できた私たちもまた、とっても幸せだったのは言うまでもありません。

 

 こんなひどい先生っているの? いるよ、主人公の心に投影された先生像なんじゃないかなぁと話が盛り上がっている隣で、話題ははらさんの「おはなしは風にのって」へと。幼年物を書く難しさなど語り合いました。ですが、雑誌というのは不思議なものです。やめるかやめないかというシリアスなテーマに迫っていく作品が並び、タイトルからして衝撃的な「摘便クィーンのこと」(森忠明)や「幻の相模湾上陸作戦」(池田ゆみる)も控えます。優しく楽しいおはなしがここにあって良かったァ。

 

 その「幻の相模湾上陸作戦」について。荒木さんからは「作者の実家の物置に防毒マスクがあった」辺りをもっと知りたかったという発言がありました。毒ガス製造と本土上陸作戦というとても大きな事実を限られた枚数の中で同時に取り扱うのは難しいですよね。例えば毒ガスについては『大久野島からのバトン』(今関信子)という作品も出ていますし、ポイントをぎゅうっと絞って徹底的に掘り下げるみたいな作業があると、素材が素材だけに、すごく読みごたえがあるノンフィクションになるよねって話をしました。

 

 ところで、苦労が多いわりにねぎらわれることが少なく、どんなふうに書いてもたいてい文句を言われるのが創作時評欄なんです。そんな過酷(笑)な時評欄を担当いただいている松嶋さんに、今回、体験者からアーダコーダとアドバイスがありましたが、要するに「ガンバレー!!」に尽きます(笑)。作品紹介と批評のバランスをどうするか、テーマで括るか括らないか、それらに正解はなくて、その時々の担当者が格闘するしかありません。もう、好きに論じちゃってください。

 

〈「作家とLunch」&新連載など〉

 会も中盤を過ぎ時間は7時半を回ったあたり、司会の奥山さんが、では「作家とLunch」にいきましょう、第一回は石川宏千花さんです、と言い終わるやいなや「はいはい、どうしてもいいたくてっ!」と西山さんが。学校の教室なら、たぶん立ち上がった勢いで椅子ががたんと勢いよく音立てて後ろにひっくり返っていたと思う。「せっかくのLunchだよ、作家さんとランチだよ、だったら、もっと食べ物のことも含めて、普通のインタビューでは聞けないことを聞こうよっ、もっと作品から離れていいんじゃないかなっ」。これを皮切りに、まあ、皆さん、アーダコーダソーダドーダと、必死でメモを執っている私の気も知らず、「名前ノートって面白いよね」「書く側にとって、とても参考になりますよね」、「×〇△…!!」「そうそう、カジュアルなコーナーで愉しい!!」「〇〇、×!<*⁂、△△…ね!」(…相川は途中でオシゴトをやめたくなったな、うん)――というわけで、皆さんの期待を背負って新企画の開始です!!

 

 それからこの企画、まとめて本にしたいと編集長の奥山さんが言っております。そうなったら紙面の都合で割愛せざるを得なかった部分も載せられるし、メニューの写真もカラーになるかも。ううん、おいしそう(笑)。

 

 さて、最後は長谷川まりるさんの『趣海坊天狗譚』です。部落差別をテーマに据えたという作品の特異性もあり、掲載に踏み切るまでの過程はなかなかのものでした。幸い最終話までの完成原稿が上がっていたので、それをもとに編集部内で検討を重ね、長谷川さんともやりとりを繰り返しました。作家さんの表現は最大限尊重しなければなりません。同時に発表したさいの反応に対しては編集部として責任を負わなくてはなりませんし、場合によっては編集部は作家さんを守らなくてはなりません。ですから単に訂正の可否だけでなく、長谷川さんと私たちとの信頼関係を確認することもとても重要でした――。などというこちらの葛藤はそれはそれとして、長谷川さんは柔軟に手直しをしてくださいました。

 

 そんなことがあったので、川嶋さんから「面白くて面白くて」という感想が出たときは私はやったぁ、と思いました。他にも皆さんからいろいろな言葉をいただいて嬉しかったです。

 

 というわけではや、8時半を過ぎ、そろそろ会を閉じることになりました。ご参加いただいた方から一言ずついただいたのですが、その中からOさんの発言を挙げさせてください。「ボク、こういう会、初めてでした。みんなで作品について話すのって楽しいと思いました。次も参加したいです」。いえいえ、こちらこそよろしくです。

 

 ご参加いただいた皆さん、本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします。また次回もお会いできますように。

                                相川美恵子

※今回の「読む会 まとめ」は、当初ブログ内に誤解を招く表現がありましたので修正しました。お詫び申し上げます。(「日本児童文学」編集部)

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 相川さん、力のこもった報告をありがとうございます。〈作品が本当にそれを求めている人のところに届いた〉という一文、とても素敵でした。

 日本児童文学3・4月号も発行されました。読む会も企画しますので、お待ちください。

 

 

2023/03/07

本年もよろしくおねがいいたします☆

 機関誌部ブログをご覧のみなさん、こんにちは。山﨑です。

 2023年がスタートしました! 元旦は徒歩20分の海岸に、家族3人で初日の出を拝みに行きました。砂浜へと降りずに日の出を待つ、ずらりと並んだ人の間をすりぬけ、波打ち際まで進むと、なんと気持ちのいいこと! 眩い光が放たれ始め、一斉に上がる歓声……一瞬の一体感に、体がポッと熱くなりました。白い息が妙に嬉しくて、丸い姿をみせてくれた朝日に、再度大きく柏手を打ちました。

 “今年一年が、笑顔溢れる一年になりますように!”

 

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 2023年 あけましておめでとうございます!

 今年も、機関誌の編集長をつとめてまいります奥山です。

 

 まずは、昨年末12/22(木)18:00~「日本児童文学」を読む会、の報告を少し。

 

 今回は、一年間「ハロハロ」を連載してくださったこまつあやこさんはじめ、畠山さんの本を編集されていて11.12月号のインタビューや植樹祭でお世話になったこぶな書店の小鮒さん、9.10月号に掌編を掲載され、宇都宮セミナーでも活躍されていたはやみず陽子さん、「ただいま修行中」の連載や11.12月号の「森へ川へ」の短編募集で最終選考に残った小林史人さんと酒井和子さん、小学校教員の花岡和美さん、昨年5.6月号の創作座談会に出てくださった米田久美江さん、そして、編集委員の小川英子さん、せいのあつこさん、指田和さん、次良丸忍さんなどなどが参加してくださいました。

 

 こまつさんの連載では、オンライン英会話からフィリピンのこと、そして昔話まで、まさにいろいろな文化をまぜこぜ、融合させたおもしろさについて、畠山重篤さんの「森は海の恋人」インタビューについては、これまであまり語られていない文学の側面からの切込み、全体の充実ぶりについて、そのほか、掌編やコラム記事の難しさやそれぞれの工夫について、作品を手がけたみなさんや、編集サイドのさまざまな裏ばなしなど、わいわいと語り合うことができました。

 

 雑誌作りは、企画としめきりに追われ、せっかく完成したものについて、ゆっくりとふりかえる時間がほとんどとれません。その意味では、この「読む会」でみなさんからのお話を伺い、苦労ばなしを分かち合い、あらためて一冊を味わう時間は、ほんとうに貴重ですし、元気づけられます。

 

 2023年も、なんらかの形で、このような時間は設けていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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 そして!

 2023年、新デザインの表紙の「日本児童文学」が届いていることと思います。

 

 今回の創作特集、テーマは「やめる? やめない?」。いろいろな迷いがあり、いろいろなやめ方があり、いろいろな続け方がある…。そのことを、しみじみと感じる余韻の深い作品ばかりとなっています。

 

 レジェンド畑島喜久生さんのみずみずしい詩、

 岡田淳さんのマンガ(必見!)、

 不登校の息子さんを詠んだ大口玲子さんの短歌、

 アフリカの少女の姿が印象的な味田村太郎さんのフォトエッセイ、

 田中哲弥さんの短編の「〇〇〇〇〇〇〇」という言葉(読んでみてください)、

 森忠明さんの短編の「摘便クィーン」(?!)というタイトル、

 その他、詩、俳句、掌編、ノンフィクションなどなど、とにかく、ひとつひとつの作品が、あざやかな印象を残してくれます。

 

 ゲーテに「人間は努力する限り迷うものだ」という言葉がありますが、まさに、そのさまざまな迷いが見えて、ふしぎと元気づけられる特集になっていると思います。

 

 そうした「迷い」をじっとみつめているような、平澤朋子さんの新鮮な表紙絵とともに、ぜひ味わい、また広めてください。

 

 今回からは、「作家とLunch」という編集部が総力をあげてとりくんでいる新企画もスタートしています。1回目は石川宏千花さんです。また、昨年、協会新人賞をとられた長谷川まりるさんの連載もはじまります。

 いろいろなチャレンジが続く「日本児童文学」、かさねがさね、今年もどうぞよろしくお願いいたします!!

 

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 私・山﨑が担当してきた「編集部ブログ」は今回が最終回です。温かく見守ってくださったみなさま、本当にありがとうございました。ブログ担当をお引き受けしたものの、“文章のプロ”の方々が目にするブログということで、毎回アップするときには「えいやっ!」の掛け声とともにenterキーを押していました(笑) ですから、ブログへの感想をメールで送ってくださったり、Zoom会議やセミナーなどお顔を合わせる機会があるときに声をかけてくださったり、それがどんなに嬉しく、力になったことか……心の中で、うれし泣きしていました(涙)

 ブログを読んでくださったみなさま、本当にありがとうございました!

 そして、前・編集委員のみなさん、楽しいブログコメントをありがとうございました!!

 

 みなさま、本年も『日本児童文学』を、どうぞよろしくお願いいたします!

 

 山﨑

 

【お知らせ】

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★7-8月号掲載の掌編作品募集★

   「図書館」を舞台とする掌編作品(日常・非日常問わず)を募集します。

 図書館の魅力が再発見できるような、新鮮な作品をお待ちしています。

【応募資格】 どなたでも(一人一編のみ)

【締  切】 2023年2月末日(消印有効)

【字  数】 26字×80行(本文のみ、タイトルは別)

【応募方法】 2023年1・2月号に掲載の応募券貼付のこと(会員は不要)

下記まで郵送、またはEメールで。

 〒162-0825 東京都新宿区神楽坂6-38 中島ビル502

           日本児童文学者協会「日本児童文学」編集委員会

E-mail : zb@jibunkyo.or.jp

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2023/01/13

11・12月号発行&宇都宮セミナー☆

 機関誌部ブログをご覧のみなさん、こんにちは。山﨑です。

 すっかり紅葉がすすみ、景色を楽しみながらお散歩しています。でも、この間、落ち葉や木の実を両手いっぱいに拾ってしまい、学校帰りの小学生にジロジロみられて少し恥ずかしかったです。松ぼっくり8個は、ちょっと欲張りすぎました~。

 

 『日本児童文学』11・12月号は、もうお手元に届きましたでしょうか。

 今号の表紙絵も、とっても素敵♪ 落ち葉で作った大きなイチョウの葉。秋らしく、ほほえましい空気をまとっています。水色ワンピースの子のお顔を敢えて出さない、この引き算に想像力が掻き立てられます。この一枚の絵から、色々な物語が生まれてきそうです☆

 

 特集「森へ川へ」。森の深い緑、川の澄みきった青……本誌掲載の写真は白黒ですが、本文を読んでいると、鮮やかな色が浮き上がってきます。「フォトエッセイ」の大竹英洋さんの“カナダ・オンタリオ州の原野をカヌーで旅する”のページいっぱいの写真、「インタビュー」の植樹祭の大漁旗、私には川の透明感や森の力強い緑が広がりました。(……もしやこのモノクローム、“読む”を優先させ、想像力を育てるための敢えての引き算だったのか……! と、勝手に納得(笑))

 

 今号は短編募集の入選作3作品が掲載されています。挿絵がとてもいいんです。作品の世界へとスッと連れて行ってくれます。

 

 連載の「ハロハロ」(こまつあやこ・作)は今号で最終回。私はのの花と一緒に英会話を勉強していました! 頭の片隅にうっすら残っている英単語を引っ張り出し音読(笑)これが、なかなか楽しかった~☆ ハロハロという単語は、“ミニ〇〇ップのスイーツ”で耳馴染みがありましたが、ごちゃ混ぜという意味だったのですね。ラストから6行目の一文が私はとても好きです。ハロハロ、ハロー! な、気分になりました♪

 

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 11月5日(土)・6日(日)に、宇都宮で開催された児童文学セミナーに行ってきました!

 

 宇都宮市文化会館で行われたセミナーには、小学生から大ベテランまで、多くの方が参加されていました。お天気もよく文化会館横の広場の木々も色づいていて、お昼休憩は広場で過ごしている方もいらっしゃいました。

 

 久しぶりのリアル開催ということもあり、私は今まで感じたことのない緊張がありました。何といっても約2年間、Zoomでしかお会いしていない編集委員の方々と直接お顔を合わせるのですから!! 案の定、奥山さんと小川さんにご挨拶した瞬間、涙目に……感激しちゃったんです。すごく、不思議でした……テレビで見ていた人に会えたような、何だかそんな緊張感がありました。でも、言葉を交わしてすぐに距離が縮まりました。あぁ、やっぱり直接目を見てお話しするって大切! と、心の底から感じました。(あ、セミナーの報告ですよね……)

 

 セミナー会場の入り口に、機関誌のコーナーを設け、冊子のご案内やパネルを展示しました。機関誌でとりあげた特集などから、児童文学の新たな魅力・視点に出会える一冊として手にしていただけたら嬉しいです。

 

 5日の全体会の記念講演では「きむらゆういち先生」がご登壇されました。すっかりきむら先生のファンになりました。遊び心が満載で、ユーモアに富んでいて、そして誠実さに溢れていました。ご自身の作品を朗読してくださったのですが、私は『あいたくなっちまったよ』で思わず涙してしまいました。心があたたかくなる作品に出会えた、素敵な講演でした。

 

 6日の分科会も素晴らしかった! 私は「創作のためのワークショップ」に参加したのですが、何が素晴らしいって、小学生が作品提出で参加してくれていたのです! そして、その作品が、まあ、なんとも面白い! 発想の自由さが光り輝いていました☆ 上手くまとめようとせず、のびのびと物語を書く、楽しんで書き上げる。すっかり忘れていた事を、思い出させてくれました。

 

 想像以上に大満足な二日間でした。

 今後も、このようなセミナー開催時には、ぜひ参加しようと思います!

 リアルでみなさんにお目にかかれること、楽しみにしています☆

 

 山﨑

 

【お知らせ】

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Zoomオンライン『日本児童文学』を読む会

 

【日 時】 12/22(木)PM6:00~PM8:30

【テーマ】 2022年9-10月号・11-12月号

【ホスト】 奥山恵(編集長・評論家)

【ゲスト】 こまつあやこ(作家・今年の連載「ハロハロ」作)

【申し込み方法】 メールにて  megumiokuyama18@gmail.com

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2022/11/15

9・10月号の特集は「新しい「教養」のゆくえ」です☆

 機関誌部ブログをご覧のみなさん、こんにちは。編集長の奥山です。

 

 9-10月号の特集は、「新しい「教養」のゆくえ」と題しまして、古典や海外名作、科学的な知識などを、子どもたちに伝えていく児童文学について、考えてみました。長年の研究やお仕事をぎゅっとまとめてくださった充実の論考&エッセイが並んでいます。

 

 また、児童文学界のレジェンドや、図書館、本屋さん、出版社さんの現場の方々に「これからも子どもたちに手渡していきたい本」のメールアンケートもお願いしました。なるほどと思う作品がいろいろ。

 

 特集を読んで、自分にとっての、また今の子どもたちにとっての「教養」のラインナップを考えてみてください。

 

 創作は、宇都宮セミナーの講師&スタッフ陣にお願いしています。きむらゆういちさん、村上しいこさん、いとうみくさんなどなどの作品も、どうぞ、お楽しみください。(7-8月号には、石津ちひろさん、最上一平さんの詩やエッセイも!)そして、宇都宮セミナーにも、ぜひご参加ください。

児童文学セミナーin宇都宮 2022/11/5~6開催!|イベント|日本児童文学者協会ホームページ (jibunkyo.or.jp/old)

 

 こまつあやこさんの連載『ハロハロ』も、ぐぐっと世界が広がってきました。そのほか、よみどころいろいろあります。ご感想もぜひ、編集部にお寄せください。

 

 ひとつ、ニュースです。

 編集長奥山がひらいている書店ハックルベリーブックス(千葉県柏市)では、9月~10月に、今年3回表紙を描いてくださった千葉史子さんの表紙原画を展示しています。

店長からのお知らせ - 文化の秋、芸術の秋… (huckleberrybooks.jp)

 お近くにお越しの際、ぜひ、見に来てください!

 

 ※

 最後にちょっとおわびを。

 

・9-10月号の「情報館」(p.96-97)の「第37回福島正実記念SF童話賞」の募集締め切りが「9月末日」となっていますが、これは「2023年9月末日」です。他の募集は、今年がしめきりですが、こちらは来年です。まぎらわしい記載になってしまい、すみません。ご注意ください。

 

 奥山 恵 

 

2022/09/14

7・8月号の「読む会」ご報告☆

 機関誌部ブログをご覧のみなさん、こんにちは。山﨑です。

 

 7月20日(水)に第26回編集会議をZoomで行いました。今回の会議のメインは、「テーマ:森・川」で募集をした短編作品の最終選考です。短編ということで、読む分量もたっぷり! 約2時間じっくりと選考し、掲載作品を決定いたしました! 入選作は11・12月号に掲載いたします。楽しみにお待ちください。惜しくも掲載には至らなかった作品たち……でもその中には、私推しの作品がいくつもあります! 楽しくてつい笑顔になってしまう作品、森や川の美しさに浸れる作品、心に響く言葉もありました。投稿してくださったみなさん、本当にありがとうございました! またどこかでみなさんの物語と出会えることを、楽しみにしています!!

 

 8月22日(月)に、日本児童文学7・8月号の読む会をZoomにて開催いたしました。参加した編集委員の相川さんからのご報告です。

 

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 皆さん、お元気でしょうか。編集委員の相川です。

 さて、7-8号はホラー特集。開始はいつもの通り18時半、今回は特集にちなんで募集した「こわい話」に入選された書き手さんのうち、伊東未夜さん、いまたあきこさん、たかつきせいさんが参加してくださいました。ゲストは編集委員の指田和さんです。それから、小学校の先生、図書館職員の方などなど。あとから、今号にエッセイを寄せてくださった緑川聖司さんも。緑川さん、問われるままに語ってくださるものだから、なんだか、「緑川聖司ミニミニ創作教室」って感じに! すごく得した気分(笑)になれたひとときでもありました。

 

 例によって、司会の奥山編集長から特集についての概要が紹介され、ついで指田さんから「お化け屋敷プロデューサー」の五味さんにインタビューしたときのこぼれ話などを披露してもらいました。ストーリーを作ることがいかにお化け屋敷の可能性を広げたか、ということなんですよね(とはいえ、どれだけ可能性が広がっても、相川は行かない、ダメ、怖い……どうしても……怖い……情けないので小さい字でそっと書いておくノダ…)。

 

 編集委員が総力を挙げた「ホラーブックガイド」には好意的な意見が寄せられて嬉しかったです。「②戦後の名作」を担当した小川英子さんから、大海赫の発掘に至る過程を語ってもらうと、参加者のおひとりから「私、大ファンなんです!」という声も挙がりました。実は、御年90歳を越えられた大海さんからなんとかエッセイ原稿をいただこうと、編集委員全員の期待を背負って交渉に奔走した末あえなく撃沈した奥山編集長から、「あと一歩で原稿が!」までを語ってもらいました。

 ほかにも岩本敏男の再発見や、『文豪ノ怪談ジュニア・セレクション』『怪談えほん』シリーズで怪談オタクぶりを遺憾なく発揮している東雅夫との出会いなど、悪戦苦闘しただけのことはありました。

 それにつけてもピアス、マーヒー、ウェストールらの巧みなこと。③戦後の名作を担当した奥山編集長曰く、「本当に怖いんだけれど、最後に温もりを感じさせてくれる、必ず希望を添えてくれるところがね、児童文学なんだよね」。

 

 安東みきえさんの『夜叉神川』についても編集委員会のなかでは話題になっていました。協会賞を受賞された時も「だよね!!」って嬉しかったです。『夜叉神川』については、いまたあきこさんが、今号に掲載された安東さんのエッセイを併せて読まれて、お父様との辛い体験があってこその作品ですねと、感慨深げにおっしゃってくださいました。また、たかつきせいさんからは、人の悪意がむき出しになった時の怖さと怪異そのものの怖さ、この二つが重ねられているところが本当に秀逸で、と感嘆の声が。

 

 ところで、話は「こわい話」掌編募集に入選された作家、作品に移ります。伊東さんは、ホラー作品というのは表現者として冒険ができるんじゃないかなっておっしゃっていました。妖怪が大好きだというたかつきさんは、妖怪っていろいろいて、とにかく多様なんです、でも、一歩間違うとそれが転じて凄い災いをもたらす存在になります、そこが魅力なんです、と熱く語ってくださいました。いまたさんからは、結局自分が体験したり知っていることしか書けないですね、という書き手さんならではのつぶやきも。

 参加者同士で作品の感想を交換しつつ、といったあたりで緑川さんが「あっ、ボクね、ホラー書いてるつもりないんです、怪談、書いてるんですヨォ」と。一同、「……?」。

 

 というわけで緑川聖司ミニミニ創作教室が急遽始まったのです。で、さくっとまとめてしまいますが、緑川さんに言わせると、子どもは「怖がりたい」のではなく「面白がりたい」のだ、だから怖さの追求ではなく、いかに子どもを楽しませるか、が大事。というからには何よりもまず、わかりやすさが大切。そもそも、子どもは何回も読み直してくれたりはしないから。と、お金を取って話すような貴重かつ基本的なことを惜しげもなく語ってくださるんです。アッ、もう一つ、何が怖いかって、自分がよく知っている日常生活の中で、何かが起こるのが一番こわいんだよねって。これには「そうそう」って参加者も納得です。「だからね、作家の力を磨くにはうってつけなんです。日常の中に違和感を一つ放り込んだら怖くなるんだから。書く力をつけていくにはいい素材」。緑川さん、それってキギョウヒミツじゃないの?!

 

 そんなこんなで話は続いたのですが、相川は、実はこのあたりから、(この話し合い、どないにまとめたらええんかいな、やばいな、)と自分のことばかり考え始めていました。なので、もしかしたら大切なことを聞き逃しているかもしれません。悪しからず……。

 

 最後に二つ。一つはいつも参加してくださる小学校の先生から、「プレイバック『日本児童文学』についての感想をいただきました。毎回このコーナーを楽しみに読んでいますという前置きに続いて、今回の教科書攻撃問題に関する記述には大変に驚いたし、これは貴重ですね、ということでした。この件はもちろん協会の歴史に残るものです。一歩も引かずに向き合った当時の協会の姿勢を記憶していきたいと思います。

 もう一つは今回の応募原稿について編集委員サイドから。今回いただいた原稿は、残念ながら入選には至らなかった方のものも含めて、熱量があったし、文章の密度も高かったです。そのことに編集者一同、深く感謝し、また、学びました。ありがとうございました。

 

 今回のご報告はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございます。また次回、お会いしましょう。  

 

 相川美恵子 

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 毎回、読み手を飽きさせないテンポのよさで報告してくださる相川さん。ありがとうございました。今回もクスっと笑いながら読ませていただきました!

 

 12月まで、旧・編集委員がブログを担当いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

 では、またご報告いたします!

 

 山﨑

 

2022/08/26