あこがれのひと 林 妙子
仕事と買い出し以外、家に閉じこもっている。超アウトドア派の私には苦痛極まりない。心身のバランスを崩しかけている(体重増加)が、世のため人のためそして自分のために日々家活。
1冊の本を読みたくなった。私のバイブル『アンネの童話集』。ずっと私のそばにある、お話を書くきっかけを与えてくれた本。今なら少しだけ、アンネに近づけるかも。
小学5年生の頃買ってもらったこの本には、13編の物語がちりばめられている。読み返すと、手書きのルビがふられており、幼い頃の自分をいじらしく思う。
アンネ14、5歳の頃の作品だ。働き者の少女。今と変わらないいじめの構図。自分を出せずにいる内気な子。人に愛を与えることの幸せ。人は人であるという真実。
とても具体的で、ときに宗教的で、それでいてかわいらしくて、やさしい描写だ。
なかでも私は「リタ」という物語が好きだ。小学校の読み聞かせに使ったこともある。何度読んでもやっぱり好き。お話に出てくるフルーツパイに魅かれているのはもちろんだけど、何ともいえない満ち足りた気分になれるのだ。幼い頃のように純粋に、私もリタみたいでありたい、と。
終わりの見えない隠れ家生活、物音ひとつたてられない緊張状態の中で、希望を見失わずお話を書くことができたアンネを思うと、涙があふれる。私も窮屈だけど、比べものになるわけがない。アンネは家族と離れる恐怖、死の恐怖と闘いながら、書き続けたのだ。
せめてお話を書いている間だけでも、アンネが幸せだったらいいな。お話を書くって楽しいよね。ペンと紙の前では自由だよね。
本の中の笑顔のアンネに話しかける。
そして私はまた、アンネに力をもらうのだ。
『完訳 アンネの童話集』 小学館 訳者 木島和子
外出できない今だから、アンネを読むというのは、とてもいいアィディアですね。わたしも読んでみようと思いました。
林妙子さん、勇気をだして書いてくださって、ほんとうにありがとう。
講座ブログでは自粛の今だから、だれかにすすめたいおすすめ本を募集しています。ぜひ、書いて事務局に送ってください。
おすすめ本リレーがつながっていけばうれしいです。 (赤羽じゅんこ)