講座ブログ

2023年02月

なかまというかけがえのない宝(新井爽月)

デビュー作を出版された会員の新井爽月さんも、かつては児童文学学校の受講生でした。

新井さんからのメッセージをお届けします。

 

 

 

 

 私は今から12年前、文学学校39期生として当講座を受講していました。皆さんと同じように、様々な講師の方々の講義を熱心に受講していた当時のことを今でもはっきりと覚えています。書き手として上手くはなかったものの、やる気だけはやけに強かった為、長短様々な作品を毎月のように書き上げては、公募等のコンクールに挑むということを繰り返していました。


 とはいえ、プロ作家を目指すとなると、やる気だけではどうにもなりませんでした。今度こそ!と自分なりに自信をもって挑んだはずの作品であっても、思うような結果は得られず、落選に次ぐ落選という日々が随分長く続いたからです。
 そのため何度となく落ち込み、悲観し、自信も失いましたが、書くこと自体を諦めることはできませんでした。
 諦めることはいつでもできるけれど、諦めずにいられるのは今しかない!と思っていたからです。


 そんなこともあり、私のデビュー作である『なかまカナ?』(フレーベル館)は初稿から約8年もの間、改稿に改稿を重ね、ようやく出版の運びとなりました。そもそも改稿があまり得意でない私にとって、一つの作品をこんなにも長い間、書き直すということ自体、一筋縄ではいかない連続でした。書き直さなければならないとわかっていても、筆が一向に進まず、焦りばかりが募って何もアイデアが浮かばない……という時期も少なからずありました。

  
 執筆は孤独な作業の連続ですし、先の見えない未来を悲観したこともありましたが、私の場合、諦めずに粘り強く書き続けられたのは、苦楽を共にする仲間の存在がとても大きかったと言えます。拙作『なかまカナ?』も、個性の異なる友達同士の友情をテーマにしていますが応援し合える仲間がいることは、本当に大きな力になりました。ぜひ皆さんも文学学校を通し、良き仲間と出会い、共に切磋琢磨できますように。同じ受講生の一人として、心から応援しております。

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2023/02/27

「雪の日にライオンを見に行く」が書籍になりました

(上記タイトルをクリックすると書影が表示されます)

 

創作教室を受講された志津栄子さんの「ちゅうでん児童文学賞」受賞作が刊行されました。

おめでとうございます!

志津さんに今の思いを語っていただきました。

 

受賞時(昨年春)の記事はこちらです。

新刊ブログでもご紹介しています。

 

 

 

 

こころは自由に旅をする(志津栄子)

 

 

 病室にパソコンを持ち込んで書き続けた夏の日。
 辛い検査を終えて帰宅した冬の日。
 ありとあらゆるものを手放すと、もう私には書くことしかないんだという覚悟だけが残りました。ちゅうでん児童文学賞受賞のお知らせをいただいたとき、それでいいんだよと、大きな誰かに言われた気がしました。神さまって本当にいるのかもしれません。
 だからといって、今までの生活がひっくり返るわけではありませんでした。あたりまえのちょっと不自由な暮らしが続いていくばかりです。
 そんな中、講談社の編集者さんとともに改稿作業を重ねていくと、たくさんの気づきがありました。本を世に出すということの責任の重さのようなものを知り、好き勝手に書くだけじゃいけないんだ、相手に伝わるように書かなくっちゃと、何度も書き直しをしました。本当に大きな勉強をさせてもらいました。

 第69回創作教室でご一緒したK氏から、私が人生一発逆転と言っていたことを覚えているよとメッセージをいただきました。今となっては「キャー、恥ずかし~」という気持ちにもなるのですが、人生一発逆転はありかなしか? そこは「洋ちゃんちのおっちゃん」に託そうと思います。
 あのころ、私の作品を読んだO氏から「ダメ男の負のループだ」と言われたことが忘れられません。そうでした。あれから数年たちましたが、物語に登場する父親たちの「ダメ男」ぶりは指摘されたとおりでした。トホホ……。どうやら私はダメンズ道をまっしぐらに進んでいるようです。唯人の父親が「ダメ男」に当てはまるのかどうか、O氏の意見を聞いてみたいです。
 それはさておき、「おれが代りにどこにでも行ってやる」と、病室の私に言った唯人の言葉をたよりに、ここまで来ることができました。今、物語の中の子どもたちと一緒に、私のこころは自由に旅をしています。時間も空間も、ひょいっと飛んで、過去にも未来にも、どこにだって行ける! やっぱり書くことは素敵です。
 多くの方に育てていただき、唯人の物語が完成したことに、今はただ感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。
 唯人はもう私の手を離れて広い世界に出て行ったけれど、私にはまだまだ書きたいことがあります。書いて書いて、もう少し先にある何かに手が届くまで書き続けよう。今はそんなふうに思っています。
 今後ともよろしくお願いいたします。

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2023/02/01