新型コロナウィルスの感染拡大で、外出自粛が長く続きます。東京は学校の開始も延期されました。
講座ブログでも、日本児童文学学校が中止になり、書くことがなくなってしまいました。
そこで、本を読んで少しでもリフレッシュしてほしいと、おすすめ本を紹介していこうと思いました。
わたしも紹介したいって方はぜひ、参加してください。日本児童文学事務局講座ブログ係まで、書いたものを送ってください。
おまちしています。
自粛の間におすすすめ本 高田由紀子
私のおすすめする本は、『そして、バトンはわたされた』で本屋大賞を受賞された瀬尾まいこさんの『あと少し、もう少し』(新潮社)です。
元いじめられっ子の設楽(なんと名前が亀吉)、不良の大田、頼みを断れないジロー、プライドの高い渡部、2年の俊介、そして陸上部部長の桝井。
中学対抗の駅伝大会に向けて寄せ集められたこの6人が、各章の主人公となり、たすきと同時に物語をつないでいきます。
もちろん、6人が県大会をめざしていく姿だけでも感動するのですが、私は登場人物たちが、表で見せている顔とは違う面を持っていることが見えてくる過程にジーンとしました。
裏の部分を隠している子もいれば、自分では気づいていない子もいます。
例えば部長の桝井はいつも冷静でさわやかなのですが、のんびりした顧問の上原先生にこう言われます。「桝井君さ、自分の深さ3センチのところで勝負してるんだよ。だからさわやかに見える。それだけしか開放しないで、生きていけるわけないのにね」
裏の部分が見えてきても、ぶつかっても、駅伝を通して6人の絆は深まっていきます。メンバーに受け入れられるのと同時に、少年たちはどんな自分をも受け入れていけるようになっていくのです。
瀬尾まいこさんにかかると、たとえ本人が認めたくないと思っているような面も、とても人間らしく魅力的に見えてくるから不思議です。人へのまなざしの優しさ、受容の深さを感じられます。
なかなか友人や仲間に会えないこの期間に、お読みいただきたいと思います。
子どもだけでなく、大人にもぜひおすすめします!
きっと、大切な人をもっと大切に感じられるとともに、自分のいろんな面をふりかえり、受け入れるきっかけになるかもしれません。