扉の前に立つ 渡辺 朋 (第10回大賞受賞)
デビューというとてつもなく大きな扉がある。私がこの扉をくぐれる日は来るのだろうか。扉の前で、そう思ってた。
現在、私はまだデビューはしていない。今も扉の前にいる。一応整理券をいただけたようだが、扉を開くにはまだいくつもの試練が待っている。そんな私が、一日講座の中で、「公募までにした三つのこと」というお題をいただいた。
恐縮しながらも、受賞を目指す方々に少しでもお役に立てることを、と思い、私なりに頑張って話したが、うーん、当たり前のことだったかしら、偉そうだったかしら、と、終わった後も、一人反省をしている。振り返れば、大賞をいただく前の年も、その前の年も、私としては「これだ!」という作品を応募し、そして落ちた。その違いも分からないというのに。とにかくもう、いい絵本を作るしかないのだが、扉は頑丈だ。
でも、どうやらデビューの扉をやっとのことで開けたとしても、次から次へと扉は続いているらしい。もしかして地獄の入口だった?
創作の先輩方は、いつだってそんな扉の前に立って、「この扉を開いてやる」とにらんでいる。挑戦している背中は眩しい。
私はまだ一枚目の扉の前。不安もあるが、体当たりでぶつかっていくしかない。
そんな思いにしてくれた一日講座でした。