きむらゆういちさんが講演 筑井千枝子
去る2019年3月16日(土)に、一日講座「めざせ! 絵本テキスト大賞 公募の壁を突破しよう!」が、都内で開催されました。参加者数は55名でした。
メイン講演にお迎えしたのは、絵本作家きむらゆういちさんです。シャイでいらっしゃる木村さんは紙袋お面を3度脱ぎ捨てて人前で話せる絵本作家きむらゆういちに変身。アイパッドを駆使して「日常から作品へ」などのキーワードをスクリーンに映し出し、創作の秘訣を語ってくださいました。強調されたのは、日常の中に創作のヒントがあるということ。『あらしのよるに』を作成中、「食うものと食われるものが食う話をしたらどうなるか」と考えたのは、ファミリーレストランでまさに食事しようと待っている間だったとのこと。紙ナフキンにメモして、後で「やぎとおおかみ」と書いた封筒の中にメモを追加した、とエピソードを語られました。
また、スリルあふれる映画を見た際には、ひとはお金を出してまでもこわいものを求めてしまうのだ、ときむらさんは遊びについて考えたそうです。遊園地で落ちる恐怖を味わい、ぐるぐる回されて喜ぶ。おにごっこやかくれんぼも、もともとは食うか食われるかで、追いかけたり逃げたりする太古の昔からやっていることにつながっているのではないか、とそこまで遡ってきむらさんは考えたそうです。そうやって日常の些細なことから遊びの本質を、人間の本質をすくいとっていく。「日常にすべてがある」と。「目の前にある」と断言されます。「それに気が付かないだけ」「あきらめないで、探す」と。聴講生は、その言葉に励まされ、数々の具体的なアドバイスに耳を傾け、きむらさんの感性の鋭さに触れました。講演最後に、絵本『あいたくなっちまったよ』のBGMつき読み聞かせがあり、涙をこらえる人の姿もありました。
他に、絵本テキスト大賞の選考委員でもある童心社大熊悟編集長の、才能の発掘を目指しているというお話や、絵本テキスト大賞を受賞された清水真裕さん、かねまつすみれさん、渡辺朋さん3人のトークショーがあり、日々心掛けていることや手法などそれぞれが独自の視点で語られました。
会場に足をお運びくださったみなさま、この場をお借りして感謝申し上げます。