編集部だより

『日本児童文学1・2月号―ノンフィクション―』水俣取材・裏話

機関誌部ブログをご覧のみなさま、こんにちは。

満開間近の梅の木や水仙の小さな黄色い花に、春の訪れを感じる今日この頃。

マスクを外して、春の香りを味わいたくなります♪

 

2月17日(水)に、第八回編集会議をオンラインで行いました。

今後の特集やそのタイトル、執筆者の検討などが話し合われました。

なぜ、その特集を組むのか。読者に新たな発見・視点、執筆のきっかけになるにはどのようなアプローチをしていくか、今回も様々な意見が飛び交いました。

このような“こだわりの熱”によって生み出されている機関誌『日本児童文学』。

4月3日午後2時から「オンライン茶話会~機関誌を読む(日本児童文学3・4月号)~」を行います☆詳細は後日お知らせいたします!

その、1・2月号掲載のノンフィクション「いのちと食べ物と水俣」の取材裏話を、機関誌部員の指田和さんが寄せてくださいました。

 

 

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水俣取材・裏話 ーー 蘇峰とちゃんぽんと沢庵と             指田 和

 

 『日本児童文学』1・2月号でノンフィクション「いのちと食べ物と水俣」を書きました。

 小学生のころに担任の先生から水俣病時件のことを聞いて以来、「ミナマタ」は、わたしの心の奥にずっと残っていました。後に、石牟礼道子さん(文)と丸木俊さん(絵)が作った絵本『みなまた 海の声』(小峰書店)を読んでいたこともあったように思います。

  それから時を経ること四十数年...  昨年初め、不思議なタイミングが三つも四つも重なって現地に縁ができ、初めて出かけたのが6月。約1週間の滞在でした。

 海と島と山に囲まれた、自然豊かな熊本の水俣。そこで工場廃水が原因で発生した水俣病。患者やその家族が超えてきた、長くきびしい生活...。地元の方に案内をお願いし、ぐるりと水俣を回った後、高台から街を眺めた時に見えた風景ーー今も街の中心にあるチッソの大きな工場の存在ーーは、なんとも言い難い重いものでした。水俣病が公式認定されてから六十余年。わたしは、「一度訪れたくらいで、水俣を知った気になってはいけない...」と、率直に思いました。

 また行こう、行くべきだ、そんな思いが日々募り......今回の記事執筆を口実?に、再度水俣を訪れたのが9月(私にとっては1回目とは違う角度で水俣を体感し、知りたいという気持ちで出かけ、執筆)。この時は、水俣の山間で自然農法によるお茶づくりをしている桜野園・松本和也さんを訪ね、軽トラで山の斜面のお茶畑をぐるぐる巡り、話を聞きました。詳細は『日本児童文学』をご覧いただくとして...... 

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 記事で触れられなかった、桜野園や水俣のプチ情報をいくつか。

●今から約九十年前に、松本さんの曽祖父が地域の人たちと山を開墾して作った茶畑。初めて入植した「記念園」と呼ぶ茶畑には、「桜野園」の堂々とした文字が刻まれた石碑が立っています。この文字、実は明治〜昭和にかけての日本のジャーナリスト(思想家、歴史家、評論家でもある)徳富蘇峰の筆によるもの。不勉強の私は現地に行ってから知り恥ずかしい限りでしたが、徳富家は代々水俣で庄屋・代官を兼ねた家で、蘇峰も幼少期に水俣で育ったとのこと。松本家は蘇峰・蘆花の遠縁にあたり、しかも蘇峰と松本さんの曽祖父とは気が合って長年懇意にしていたということから...。(桜野園のHPでも、文字や碑の写真が見られます)

●その桜野園、緑茶だけでなく和紅茶も生産しています。ロンドンの紅茶専門店「ポストカード・ティーズ」の店主が味や生産方法を気に入り、10年以上前から桜野園の紅茶も販売。紅茶の本場で、日本の、水俣産の紅茶が愛されているのです。

●それから水俣は、なんと「ちゃんぽん」を提供するお店が市内に十数件もある、ちゃんぽんの町(地元では「ちゃんぽんは長崎より水俣の方が元祖&有名...」という声も)。味も素材もいろいろで、麺好きの私は滞在中に4軒制覇。どれもたっぷりの野菜がうれしく、夜にふらりと一人で店に入り、ビール片手にすする熱い太麺のうまいこと! しかも値段が500〜600円前後。水俣へ行ったら、まず、ちゃんぽんです。

●それかそれから、水俣は今(2月)、みかんのシーズン(甘夏やしらぬい、パール柑など)。安全安心をモットーに、丁寧に育てられたジューシーなみかん類がどっさり。ネットで調べると販売先がいくつも見つけられます。甘夏ジャムも、ほろ苦くて甘くて美味しい!

●さらに余談ですが、桜野園の松本さんと寄った、割とご近所のラーメン屋さんがあまりにも美味しくて(山沿い一本道のポツンと一軒店)、帰路・新幹線でのお昼にしようとチャーハンをテイクアウトで注文したら.... お店のおじちゃんとおばちゃんが、「埼玉まで帰るの、遠かねー。ウチも埼玉に親戚がいてさぁ。いいから、これ持ってって食べて」と、ビニール袋に入れた自家製メンマやら沢庵(2本分!)をどっさり。コロナ禍で席はガラガラだったものの、 新幹線の中、私はきっとプーンと香る沢庵オーラに包まれていたはず....

  そんなふうに良くしてもらったら、お店のおじちゃんおばちゃんも、松本さんも、ミナマタの海も空もみんな家族みたいな気がしてきて、チャーハンをモグモグする私の頬は、いつしか涙で濡れていたのでした...

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 しかし、この取材前後はハプニング続き。留守中に夫が入院・手術が決まるわ、現地到着早々、宿の前で車の衝突事故を目撃するわ、やっとの事で家に帰りつくも、冷蔵庫がクラッシュして、中のものがグズグズドロドロ、とんでもないことになっているわ......  

 我が人生の中でも稀にみるジェットコースター的日々でしたが、編集委員みなさんに支えられながらなんとか記事を書き終え、無事?1・2月号に載せられたという次第でした。

 記事はさておき、みなさま、ぜひ水俣へお越しください!

 

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【お知らせ】

機関誌部よりアンケート調査のお願い

「「幼なじみ」と聞いて思い出す、児童文学の登場人物は?」を絶賛実施中!!

・3月末しめきり

11-12月号 特集「猫とファンタジー」掌編募集

【応募資格】 児文協会員限定

・6月末しめきり メール、郵送どちらもOK

 

みなさんのご参加、お待ちしています☆

(詳細は前回のブログをご覧ください)

 

次回の部会は3月17日です。

また、ご報告いたします!

 

山﨑

 

2021/02/23