良い作品は作者を引っ張り上げる はやの志保
このタイトルは、私が2009年、第37期日本児童文学学校を受講講した時の講師のおひとり、安東みきえさんが講義中におっしゃった言葉です。そのとき、確か安東さんはご自身の座っている席と私たちの席の間あたりを指しながら、
「このへん、皆さんと私の間には、距離があるように見えるかもしれないけれど、実はそうでもない」
って感じのことも確かおっしゃったのです。第49期の講師陣を拝見したところ、今年も安東さんがご登壇予定なのでもしかしたら同じ話を聞くかもしれません。ネタバレになってしまったらごめんなさい。でも私は、この言葉に10年以上支えられてきました。
もともと10年でも20年でも書くと決めてはいたけれど、同期や新しい方々が颯爽とデビューされるのをお祝いしていると、正直自分はどうなんだろうと落ち込んだりもしました。と同時に、書き続けてきたおかげで最近はちょこっと最終選考にも残るようになってきました。真摯に、読んで書いてを続けていれば技術は上がる。今後はどう自信を持っていくか、というのが課題だと感じています。
ところで。創作活動は出産に似ている、産みの苦しみ、なんて言葉を聞きますよね。私はこの言葉、確かにそうだと思いつつ、実は産んだあとが似てるなぁと思っているのです。命をこの世に産み出す時は、もちろんその命との共同作業なのだけれど、なんとかひとりで、んーーーっ! と力んで産む。そのあとは、ご飯をあげたり抱っこしたり、自分以外の手を借りることができる。作品も形にするまではひとりでやるけれど、なんとか形になれば、仲間の意見を聞くことができて、一緒に育てることができます。そうやってたくさんの人たちが書き続けています。
言葉で紡ぐ作品は、詩、短篇、長編、さまざまな種類があって、どれもほんとに面白い。創作が初めての人も、すでに書き始めている人も、行き詰まっている人も。扉を開けて入ってくる皆さまと、お会いしたり話ができる日を楽しみにしています。