「ことばはどう抑えこまれていくのか」
平和であってこその子どもの本に関わる、日本児童文学者協会子どもと平和の委員会、子どもの本・九条の会学習係が共催して、今なにができるかを考える時間だった。大津市、長野などから、それぞれ課題を持った総勢120名の参加。
講演は「児童文学と教科書をめぐって」と題して藤田のぼるさん。詳細な資料を配られての、1980年代の初頭の自民党などによる小学校国語教科書「偏向」攻撃をめぐっての経緯と内容。「かさこじぞう」は貧乏物語でしいたげられた民衆の暮らしを描いているから。「おおきなかぶ」は日本ではなくロシアの民話で団結を学ばせるから。そんな理由で差し替えが検討された。が、著者や市民などの大きなうねりの抗議運動で撤回される。
藤田さんは団結した成果をのべながら、そのあと古田足日が「この攻撃はことばと心に対する攻撃だ」として、ことばと心が育つ作品を生み出すことで今後攻撃が起きても跳ね返せると、子どもが本を読む意味を考え続けたと紹介した。
過去のことではなく、現在、道徳が教科化され、書き直し、あらすじだけの大幅なカットなど今後作品へ介入への問題点を提示した。{道徳初検定、パン屋が和菓子屋に}
30分の短い時間をとり、会場に展示されている「戦争と平和を考える本」を手にとってもらったあと、シンポジウム「子どもの本の可能性」。
広瀬恒子さん、絵本「かわいそうなぞう」から。空襲がない時期にゾウは殺処分されており、心情に訴えるだけでない、非人間性、しくみをも伝える作品をと。子どもとどう共有できるかが問われるが、今いやなことはいやと自由に書ける状況であってほしいとの思いが、響いた。
和歌山静子さんは日中韓でとりくんだ絵本をそれぞれの国で翻訳するという、画期的な取り組みを、写真を見せながら語る。それぞれの国の事情に縛られたり納得のいかないことを率直に指摘し合うなどじかんをかけて11冊刊行。二つの国で出版されていない現状もあると伝える。
きどのりこさんは、これまで収集してきた「戦争と平和を考える本
は、戦争による死を美化したもの、誤った戦争認識のもの、名作と言われるものでも加害の視点のなどは除外していると、厳しい評価も見せる。{文責 一色悦子}