動画第9回全文起こし2/3「戦後の児童文庫の歴史とこれから 特別ゲスト/元・講談社青い鳥文庫編集長 高島恒雄さん」
文字起こし第二回目では、
*押川理佐さんの質問「児童文庫ならではの作家さんとのやりとりでの苦労話」
*加藤純子さんの質問「文庫専門の作家はいますか?」
*ほんまちひろさんの質問「大きな文字の青い鳥文庫について」「タイトルの付け方について」
について語っています! どの質問のお答えも、貴重な内容ばかりです。
動画を視聴する時間がない方は、ぜひ文字起こしをごらんください。
今回コラボしてくださった『読みたいラジオ」のリンクはこちら↓
◆読みたいラジオ/日本ペンクラブ「子どもの本」委員会
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シ:はい、では続けて、押川理佐さんにお願いします。
押川理佐(以下オ):はい、えっとですね高島さん。あのわたしも、非常に素朴な、ちょっとミーハー心が出てくる質問なんですけれども、児童文庫ならではの作家さんとのやりとりでの苦労話とか、なんかちょっと「これはあせったよ、おれもね」みたいなそういう話がもしおありだったらちょっと教えていただけるとありがたいんですが。お願いします。
タ:わかりました。えっと児童文庫ならでは、というのは、ひとつだけ大きな、単行本と違いがあるのは、基本的に単行本というのは、作家の方に、もちろん原稿依頼するんですけれども、原稿ができたところで……できるのを見越して刊行スケジュールを作ると思うんですけれども、単行本って、まあ実際ひと月とかふた月とかずれても、ま、そんなに大きな影響はない。けれども、児童文庫は月に四冊とか五冊とか決まっていて、その年間の全タイトルの中で、売れ線をこことこことこことこの月に、それを補完するものをその間の月にとか、結構綿密に刊行スケジュールを立てるんですよ。それでもあの、まあもちろん商売なので、年間の利益をこんなふうな形で確定しようということを立てているんです。
が、もちろん工場でものを作っているわけではないので、どうしても遅れたりとか、ちょっと難しいな、この時まで書けないなという方がいらした時に、往々にしてあるんですけれども、そういうことは。それをどう組み替えていくのか、とか、その時に新しい作品をどう出すのかとか、そういうことを考えるのは、まあ苦労といえば苦労でしたけれども、ま、でも意外にそういうことがあって、新しいのを試してみたら結果的に良かったとか。
オ:それは新しい作家さんに入れ替えるということですか? その時だけ。
タ:入れ替えるというか、プラスするってことですよね。なかなかその、結構厳密に何冊って決まっているところに、がちがちに組んじゃう、入れなかったものが出せるようになるとか。
オ:ああ。
タ:そういうことは、まああるので、一概に予定通りいけばいいというものでもないかなとは思っております。
オ:新しい出会いがあるっていうのは、それをきっかけにこう、注目されるようになった方もいる、みたいなこともあるんですか?
タ:そうですね。
オ:ピンチヒッターみたいな。
タ:それはあの、ぼく、漫画の編集もやってましたから、漫画の時もそうなんですよね。原稿落ちる、っていう時に、新しい作家の、そういう時必ず編集部には代原って、代わりに載せるための原稿、新人の原稿ってストックしてるんですよ。
オ:なるほど。
タ:で、これちょっとやってみよう、って言って案外それが人気を博すようになるとか。
オ:青い鳥もそうなんですか? 代原がある?
タ:代原っていうか、原稿ありますからね。
オ:あーなるほど。
タ:ありました。はい。
オ:持ち込みで、みたいな感じですかね、それはね。
タ:持ち込みっていうか、作家の方で「原稿書いたんだけど、見て?」っていう風に言われる方は。新人の方が持ち込みっていうのはあまりなかったですけれども。いろんなところで新人賞とっていらっしゃる方とか、そういう方が「原稿読んで」っていうのはありました。
オ:すごいピンチで、これはもうやばかった、みたいなこともあったんですよね?
タ:えーっとその、やばかったことでいうと、その作品の話しではなくて作家と担当編集者との関係性みたいな。
オ:関係性……。
タ:えー、きっかけはちょっとあんまり覚えてないんだけれども、作家がね、ある時、まー非常にこう、怒りの電話をくれるわけです。で、当時はあの、編集長だったので、担当者を飛び越えて、「ちょっと話しを聞いてくれ」と。「何をそんなに怒っていらっしゃるんですか?」みたいな。「いいから会おう」みたいなことで、お会いしました。で、お会いして、で、まあ確かにそれはあなたのおっしゃる通り担当者に、ちょっと申し訳ないけど不備がありましたね、みたいな話しをしているうちにですね、なんかね、その人の、自身が色んな体験をして、面白いんですよ。ま、だから怒りをなだめつつ話しを聞いているんだけれど、なんかね、だんだんそれが面白くなってきて、「それでどんなことがあったんですか?」
オ:はははは。
タ:みたいなことを言っているうちに、「それ、面白いから本にしようよ」って言って、で、担当者は怒らせてるから、僕が実際直接やるからって言って本を作ったりしたこともあったので、ま、何て言うんですかね。転んでもただでは起きないというか。
オ:ほんとですね(笑)!
タ:そういうことも、ま、必要なんだなと、思います。
オ:いや~貴重なお話をね、ありがとうございました。ミーハー心が満たされてしまいました。
タ:良かったです。ありがとうございます。
オ:ありがとうございます。
タ:ありがとうございます。はい。
シ:では、続いては加藤純子さんにお願いしたいと思います。
加藤純子(以下カ):あの、よく文庫のことわからなくて、ちょっと高島さんに、この機会なので教えていただきたいなと思うんですけれどね、多分高島さんが編集長をやってらした頃に、はやみね(かおる)さんとか、石崎(洋司)さんとか。令丈(ヒロ子)さんの『若おかみ(は小学生!)』とかね。あのへんはもう人気シリーズだったのかなって、思うんですけれど、なんかあのまあその、例えば令丈さんとか石崎さんとかあの、普通の児童書も書いてますよね? 文庫オンリーという感じじゃないんですけれど、なんか文庫専門の作家っていうのがいらっしゃるのかしら。あるのかどうか、という点を教えていただけますか?
タ:はい。結果的に、専門ってまあ、シリーズもっている方ですと、例えば年間3冊、4冊出すと、必然的に、それ以外のものを書く時間がなくて、しばらく文庫にかかりきりという状況になることはありますけれども、多分その作家のご本人の中でも、文庫だけでやっていこうという風に思っていらっしゃる方はいないんじゃないかな、と思います。それはやはりその企画にもよりますし、単発でハードカバーで出したほうがいいものもありますし、文庫というのは連続性があるので、シリーズものにはすごく向いているんですよね。シリーズで三か月後にこの解決が出るから待って、みたいな引きを作る、作り方をするようなものだと文庫が向いてますし、だからその編集サイドとしても、文庫だけでやっていこうとはあまり思ってないです。そう見えることはあるかもしれないけれども。という感じでしょうか。
……そうですね、その原稿をどういう入れ物に入れるのがいいかって判断するのも編集部、編集者の仕事ですから、文庫に向いている、子どもたちに定期的に面白いものを届けていこうと、シリーズに向いているなと思えば文庫でやろうということはあるかもしれませんし。
カ:そうですか。はい、わかりました。ありがとうございました。
タ:いえいえ。ありがとうございます。
シ:では続いて、ほんまちひろさんにお願いいたします。
ほんまちひろ(以下ホ):よろしくお願いします。
タ:よろしくお願いします。
ホ:「青い鳥文庫」というと「大きな文字の青い鳥文庫」というのがあるんですけれども、なんかそれについて、ちょっとお話しうかがえたらと思っています。
タ:はい。えー大きな声では言えませんが、わたくしが生みの親です。
ホ:お~~!! ほんとに? すごい!
タ:半分ね。ま、親っていうのは、お父さんとお母さんいるので、ひとりで生んでいるわけじゃないから、どちらかです。あの、もうひとりいるんですね。で、もうひとりっていうのは、あの、ま、なぜかっていうと、読書工房というところが、大きな文字の青い鳥文庫、作ってるんです。で、そこは、あの非常に子どもたちの本のアクセシビリティを高めるということをテーマにしている会社なんですね。2009年くらいだったと思いますけれど、弱視の子ども、ま、おとなのためでもあるんですけれど、ま、大活字本というのを読書工房が作ってました。で、その社長の成松さんという方から「ちょっと相談がある」と言われて話しを聞きに行ったんですね。(読書工房成松一郎さん)
あの、会社が近くにあったので。で、どういう相談かというと、子どものために大きな大活字本、えー22ポイントあるのかな、2,5倍、通常の文字の2,5倍ぐらいあるんですけれども、その本を作りたいんだけれども、どの出版社に言っても、なんとなく話しが流れていって決められない、と。「どうしたらいいでしょう?」。
当時、子どものための大きな文字の本って、三冊しかなかったんですよ。しかも、明治時代の本みたいのだったりして、これ、誰が読むの?
ホ:うーん。
タ:で、その読書工房は、そういう志はあるんだけれども、なかなか出版社、編集者、その先の作家にアクセスすることができなくて、許諾がもらえないと。で、「いやいやいや、それはとてもいいじゃないですか」。ま、当時ぼくが編集長だったので。で、成松さんとぼくのやりとりってネットのどこかに多分載ってると思うんですけれども、当時青い鳥文庫は非常に読まれてました。えー初版10万部のシリーズが四つあったのかな? ぐらい非常に読まれてたんですね。で、だけどその、物語の面白さは誰が読んでもわかるであろう。それはその、なかなか本を読むことができない弱視の子どもにも、同じ本を読んでもらって、いとこと話しをするときに「『黒魔女(さんが通る!!)』面白いよねー」とか、そういうこう、色んな人たちと話しをするきっかけになる、子ども同士でね、ということができると思いますよ、と。だったらあの、編集部が協力するので、編集部から作家に話しをして、許諾をもらうようにします。って言って、作家に言って、すべての作家がもちろんどうぞ、という話しでした。
要はその作家にいく道筋が読書工房さんの中にはなかったので、できなかった、ということだと思うんですけども。作家にしてみれば、もちろん多くの人に読んでもらいたいし、もちろんそのね、わけへだてなく、ちゃんと……ちゃんとと言うのも失礼な話しで、見える人でも、読みにくい人でも、物語を届けたい、子どもたちに自分が届けたいと思っている気持ちはみなさんあるわけで、いやがる人なんていませんよって、言ったんだけれど、ほんとうにいやがる人はいなくて。
それ以来定期的に作っているので、えっと、今多分、百数十タイトル、200冊から300冊くらい刊行されていると思うんですね。あの、大きな図書館のその、大活字本コーナーに行くと、背表紙の青い本がずらーっと並んでいて。青い鳥文庫って、書き下ろしだけじゃなくて、名作などもありますから、名作もあると。それもあの、おとなの人でも、結構手に取るきっかけになる、というようなことも言われていたので、それからもう十数年ですかね、やってますから、非常に喜ばれていると聞いております。
ホ:ありがとうございます。
タ:はい。
ホ:大きくなるだけなんですか? あれは。あの、行とか変わるんですか?
タ:あ、もちろん。あのA4サイズなんですけれども、文字が2,5倍になるっていうことは、1行はもっと行替えしていかないといけないから、基本、一冊の本が上下巻とかになるんですよ。
ホ:あ~。
タ:ものすごくこう、分量が増えるので。
ホ:あーじゃあ、編集し直し……みたいな、レイアウト的には、新たに。
タ:ああ、そうです。
ホ:拡大しているだけじゃない。
タ:拡大しているだけじゃない。あと文字もユニバーサルデザインの字にしてますよね。明朝体って縦が太くて横が細いじゃないですか。あれは非常に読みにくいそうなんで、ユニバーサルデザイン、誰にもでも読みやすい書体に変えているので、ゴシックのような、縦横基本的には同じ太さでっていう、書体も変えているんです。
ホ:それはその、出版社のほうと、大きな文字作るほうで、やりとりして、進めてくんですか?
タ:そうですね、まあ、あの基本的にもう、最初にフォーマットが決まっているので、書体もだから色々変えないんですよ。
ホ:うんうん。
タ:これじゃないと見にくいっていうことなので、書体もこれでいきます、という風になっていて。文字組みはもうあの、電子書籍で拡大していくと、字がリフローといって一行の文字数変わるじゃないですか。あれとイメージ的には同じような操作が行われるので、変わってきます。
ホ:なるほど、ありがとうございます。
タ:はい。
ホ:じゃあもうひとつ質問します。えっと、タイトルのことなんですけども、なんか本を作る時って、なんかその内容とかはもちろんすごくこう、色々考えるんだけど、最後にもう一段階、なんかタイトル決める時ってすごいけっこう大事だなあって思っているんですけど、何かなんかそんななんかいい話しを簡単に教えてくれるとも、なんかくれないかもしれないんですけど、なんかこう、これからタイトルをつける人たちに向けて、こうアドバイスとかありませんか?
タ:それねえ……いやあ、ぼくね、現役を離れてるから出し惜しみするつもりはまったくないんですけれども、えっとねえ、タイトルはやっぱりね、難しいですよね。そのなんだろ、万能なつけ方って、ないじゃないですか。例えばあの主人公をタイトルに入れるとわかりやすいとか、あの、えっとね。古い漫画でいえば『巨人の星』とか『あしたのジョー』とか、ジョーとか星飛雄馬とかあるじゃないですか。そういうのはあるんだけれども。それも別にね、あのそれなら確実にいいってわけでもないし。
ホ:あ、でも、なんかこれ内容が全然類推できないなって感じるタイトルって、主人公が全然入ってないことがあるかも。確かに。
タ:ま、でも、あのまったく内容を反映してないけど、読んだあとにじわじわとそのタイトルがしみてくるとか。
ホ:あ~いいタイトルだったなってあとから。
タ:そう。「そういうこと言ってんのか!」っていう。
ホ:「ああ、そのことか!」みたいな。
タ:そうそうそうそう、そうなんですよ。で、それは難しいですね。作家がぴしっと決められる時もあるし、え~、よくそういうのを編集部ではタイトルマッチって言ってますけれども、編集者もいくつも考えて、作家もいくつも考えて、考えすぎるとたいていなんかまあ、ドツボにはまるみたいなことがあって、良くない。なんかある時ふとひらめいたことがいいっていう、ひらめきを待つっていうこともありますしね。ロジカルにこう、組み立てていくことがなかなか難しいものなので、あの、これはどなたも、どの作品考える時も、タイトルはほんとうに悩んでると思います。みなさんももちろんそうだと思うんですけれども、だから「がんばりましょう!」と応援するしかないかな。
ホ:ありがとうございます、応援していただいて。いつかね、あのタイトルつけるときには、今の「がんばりましょう」を思い出して、がんばりたいと思います。
タ:あーありがとうございます。もう一回言いましょうか?
「がんばりましょう!」
ホ:がんばります。はい。