動画第9回全文起こし1/3「戦後の児童文庫の歴史とこれから 特別ゲスト/元・講談社青い鳥文庫編集長 高島恒雄さん」
こんにちは! 子どもと読書の委員会です。
ご視聴いただいた方より、「とても貴重なお話がたくさんありました」との感想をいただいています。ご覧になっていただけましたか?
*戦後児童文庫の歴史
*松本聰美さんからの質問
「児童文庫は普通の児童書を書くのと、どんなところがちがうんでしょうか。」
上のふたつの話題まで、今回の文字起こしでご紹介します!
また、特別ゲストの高島恒雄さんが制作しているラジオのリンクです。こちらもあわせてぜひ!
◆読みたいラジオ/日本ペンクラブ「子どもの本」委員会
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しめのゆき(以下シ):みなさまこんにちは。日本児童文学者協会子どもと読書の委員会です。おでんプロジェクト動画、「作家が聞いてみたシリーズ」第9回目の今回は、特別ゲストをお迎えしております。
日本ペンクラブ子どもの本委員会で「読みたいラジオ」のパーソナリティを務めていらっしゃいます、講談社青い鳥文庫元編集長の高島恒雄さんです。
高島さんは、2023年10月からインターネットラジオ番組「読みたいラジオ」を制作。これまでに44人もの児童文学の作家や画家、翻訳家、評論家の方々にインタビューをし、作品を通じて、著者の内面を深く掘り下げていらっしゃいます。今回はその「読みたいラジオ」とのコラボ企画です。
(収録=2025年12月現在)
動画の概要欄に「読みたいラジオ」のリンクを掲載していますので、ぜひお聞きになってみてくださいね。
さて、その高島さんですが、1983年、講談社入社。『週刊少女フレンド』『週刊モーニング』と、漫画雑誌の編集を経て、2002年に青い鳥文庫へ。2004年から2011年まで7年間、編集長の任についていらっしゃいました。一貫して物語を作る編集者だったとうかがっております。そして本日は青い鳥文庫元編集長として、我々子どもと読書の委員会からの質問に、ざっくばらんにお答えいただきます。
シ:では高島さん、みなさま、よろしくお願いいたします。
一同:よろしくお願いします。
【戦後児童文庫の歴史】
シ:それでは、まず最初にですね、高島さん。えーそもそも、児童文庫というのは何ですか、というとってもとっても基本的なことをですね、えっとおうかがいしたいと思います。えー、いつ頃、どうして児童文庫というものが誕生したんでしょうか。えっとここまでの流れについて、えっとすごくざっくりでいいので、ざっくりって失礼だけど、ざっくりでいいので教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。
高島恒雄(以下タ):はい。えー児童文庫とは何かということですね。えーまあ児童文庫、みなさんご存知だと思いますけれど、一番初めに出たのが、岩波少年文庫。こちらが1950年です。1950年ということですから、まあ戦後すぐということになりますよね。それまで、まああの、大きなサイズのハードカバーの児童書が多かったわけですけれども、子どもに持ちやすい、もしくは値段も下げて買いやすいというところから始まったのではないかと、これは推察ですけれども、思っております。なぜならばその時にすでに出ていた、刊行されていた海外の名作、古典の名作などを文庫化しているということです。ですから文庫オリジナルというものは当時はまだありませんでした。
その後1975年に偕成社文庫、1979年にフォア文庫。これの「フォア」というのは岩崎書店、金の星社、童心社、理論社、この四社が集まって作っている文庫なので「フォア」文庫。翌年、1980年に青い鳥文庫が刊行されました。青い鳥文庫が刊行されてから、しばらくは児童文庫の参入はなかったんですけれども、21世紀になってから、2005年ポプラポケット文庫、2009年角川つばさ文庫、同じく2009年小学館ジュニア文庫、2011年集英社みらい文庫、2020年野いちごジュニア文庫など、多数の出版社が参入するようになっております。
えーかなり児童文庫の歴史の中で大きな変化というのはおそらく、青い鳥文庫が、児童文庫の書き下ろしというのを始めたんですね。えーこれは、1980年創刊の時に、『クレヨン王国』という物語がありました。これも、ハードカバーを文庫化したものですけれど、翌々年、82年に『クレヨン王国』、非常に人気があったもので、作家の方にですね、書き下ろしをお願いした。『クレヨン王国の花ウサギ』というものですけれども、これが非常に好評を博しました。で、『クレヨン王国』は、青い鳥文庫全体で48タイトルあると思うんですけれども、全体で500万部近く出ていると。まあその、子どものためにいま生きている作家の人がすぐに届けるというようなところが非常に好評を博したのではないかなと思っております。
青い鳥文庫がその後書き下ろしシリーズが非常に人気を博したものがありましたので、それを見て「あそこにはおいしそうなブルーオーシャンがある」
一同:ふふ。
タ:というようなことをみなさん思ったんじゃないかと思いますけれど、参入されました。という感じかな、歴史的にいうと。
シ:ああ、そうなんですね。わたし、思っていた以上に古くてびっくりしました。1950年って、ほんとに戦後すぐにそういう小っちゃいものが生まれているということですよね。
タ:そうですね、ま、やはり子どもに気軽に手に取ってもらいたい、ほんとうまだね、荒廃した社会ですから。
シ:そうですよね。
タ:うん、っていう気持ちはあったんだと思うんですよね。
シ:はい、そこでやっぱりあの、そういうものが読みたいっていう需要があったってことですよね。
タ:う~ん、需要というよりも、多分供給サイドの、出版する編集の人たちが、子どもたちに希望を、とか、読む力を、とか、そういうことでやったんじゃないかなと思うんですね。なぜならば児童文庫という形がないときに、小さいサイズで読みたいというニーズが出てきたかというと、それはちょっと考えにくいと思うんですよね。
シ:はい。でも岩波さんは、あくまでも海外の翻訳ものとかをやっていらしたということですよね?
タ:いや、日本の古典もありましたよ。
シ:あ、日本の古典も。はい。でも書き下ろしは青い鳥文庫さんが初めて?
タ:だと思います。というか、従来の、大人向けの文庫も、基本的に文庫書き下ろしってなかったじゃないですか。単行本が出てから数年たって、文庫にする、文庫化するということがあったので、おそらくそれと同じような考え方で文庫化していったんだと思うんですよね。そこはもう機械的にあるものを小さくする、あるものを小さくするというところだったんですけれど、その書き下ろしって、なぜ書き下ろしをしたのかっていうところまでは知らないんですけれど、考えてみたら発明、コロンブスの卵的なものだと思うんですよね。
【各委員からの質問】
シ:まず最初に松本聰美さん、いかがでしょうか。
松本聰美(以下マ):書き手としてのとっても素朴な質問なのですが、児童文庫は普通の児童書を書くのと、どんなところがちがうんでしょうか。教えてください。
タ:難しいですよね。多分本来的にですね、児童書、児童文庫とも、おとなの作家が子どものために書く、子どもに何か伝えたいことがあって書く、というところは、そこの基本はまったく変わらないと思うんですよ。ただその入れ物の違いということが、非常に気になっていらっしゃるところだと思うんですけれど。
そうですね、児童文庫はやはり気軽に手に取れる。で、わたくしが青い鳥文庫の編集長をしていたときに、色々な言い方で、ま、青い鳥文庫の編集長だったので、青い鳥文庫の説明として使っていたんですけれど、「おとなの知らないベストセラーがある」とか「子どもが初めて自分で選んで自分のお金で買う本だ」とかいうことを言っていました。で、児童書のハードカバーのほうが高いですよね。なので、絵本もそうなんですけれども、児童書、単行本、絵本というのは、買う人と読む人が異なる場合が多い。おとなが選んで、おとながこれ読むといいよって言って子どもに渡す。それは親子でもそうでしょうし、学校図書館の司書の方でもそうだと思うんですけれども。
児童文庫はそうじゃなくて、おとなのフィルターが入らない。友だちから口コミで教わって、あれ面白いよっていって、お父さんやお母さんに買って、学校図書館に入れて、じゃなくて、自分のお小遣いで買える自分だけの本、というところがまあ、そこの入り口が非常に大きいかなと思っています。だからその、子どもが自分のお金で買う本は、やっぱりこうなんだ、人からもらった本って、なんかちょっと読まなかったりするじゃないですか。
マ:そうですね。
タ:自分で選ぶっていうのは、もちろん子どもにとっても非常に大きな意味があって、身銭を切って買う本ですから、もちろんそもそも面白いと思って買うわけだし、読む。そうすると、何度も何度も読むんですよね。
マ:あーなるほどね。
タ:10回も20回も読んで、そこがあのこう、子どもの読解力を高める、結果的にとてもいい結果を与える本であることが多いなと思っています。おとなのフィルターが入らないっていうことは、作者と子どもが近いんですよ。
マ:うん。
タ:作者からダイレクトに届く、というようなところがあると思うんですね。ですからあの、わたくしが編集長をしているときって、自分の体験しか語れないので、あの自分のそういうときにですね、よくイベントしていました。子どもたちを100人200人くらいよんで、作家のトークショーをやり、サイン会をやるんですね。トークショーをする時に、編集部の人間がクイズを作るんですよ。
マ:あー。
タ:その作品の中から、「あの時主人公はなんてしゃべったでしょう、三択ですよ、A,B、C……」って言う前にみんな答えちゃうんです、子どもが。
マ:あ、なるほど。
タ:三択の必要もないくらいもう読み込んでるから、すぐわかるんです。たいていの子どもは手をあげてたいていの子どもは正解。そこの距離、作家は自分の家でひとりで書いているのに、目の当たりにするわけですよ。自分の作品を大好きっていう子どもたちを。やっぱりよりね、情熱を込めて本を書けるっていうところがあると思うんですよね。それは非常にいい関係性だと思ってました。
マ:ありがとうございます。
タ:はい、ありがとうございます。