動画第8回「読書バリアフリーと児童文学」全文起こし3/3
いよいよ文字起こしもこれでラスト。
今回のブログでは、この動画にタイトルの出てきた本もご紹介!
◆登場した本(登場順)
*『ズッコケ中年三人組age41』那須正幹作 ポプラ社
*『せっしゃ、なべぶぎょうでござる!』しめのゆき作 大串 ゆうじ絵 ポプラ社
*『ぐりとぐら』(『てんじつき さわるえほん ぐりとぐら』)なかがわ りえこ作 おおむら ゆりこ絵 福音館書店
*『つくしちゃんとおねえちゃん』いとうみく作 丹地洋子絵 福音館書店
*『わが盲想』モハメド・オマル・アブディン作 ポプラ社
*『ハンチバック』市川沙央作 文藝春秋
*『にってんフォーラム夏号(2025)』
ちなみに「にってんフォーラム」というのは、日本点字図書館さんのHPに公開されています。引用します。
『「にってんフォーラム」は、日本点字図書館の「今」を伝える季刊誌です。年4回、4月・7月・10月・1月に発行しています。館内で配布しているほか、PDFにて閲覧・ダウンロードしていただけます。サピエ図書館では、点字版とテキストデイジー版を配信しています。』
今回の動画は、読書バリアフリーを楽しく深められる内容だったかなと、自負しています!(文字起こしにいくまでの前置きが長い……)
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シ:あの、私はですね、あの、自分の個人的な思いになってしまうんですけれど、市川沙央さんの『ハンチバック』を読んで、物凄く衝撃を受けたんですね。あの「紙の本を憎んでいる」というフレーズに。あの、本を作るのはまず紙からで、電子書籍というのは後からくるものだなあってイメージがあったんですね。電子書籍が必要な人たちがいらっしゃるっていうところに思いが至らず、すごく猛省したというかなんですけど。けれども、私たち、作家に、じゃあ逆に言えば、何かこう働きかけてできるようなことはないだろうかっていうことが、すごく気になりました。
サ:そうですね。私も、読みまして、私が本当に衝撃というか、印象に残ったのは、「出版界は健常者優位主義(マチズモ)ですよ」いうところですね。まあ、出版界に限らず本好き、とかはですね。こんな本買ってよかったとか、よくSNSでも、まあリアルな世界でも、内輪で盛り上がりますけれども。一方で、本をね、自由に買う、あるいは借りることすらできない方もいらっしゃるというところが、すっぽり抜けてる、抜けがち。それは本を自由に買える、読む、あるいは借りることができる方のマチズモだな、というところはもちろん、なるほどそうだな、というところに衝撃を受けまして。なので、本が好きだと、読書楽しい、というその思いの一方で、そこにすらアクセスできない方がいるというのを、常に頭に入れておかなきゃいけないんだな、っていうのを改めてですね、『ハンチバック』で認識した次第ですね。はい。
シ:まさか。そういう視点でくるとは、ちょっと思ってないですよね。
で、その。あの。これは私やっぱり無知なんですけれど。そのバリアフリーっていうのを考えた時に、バリアを取り除くっていう感覚ですか。その感覚がまずないんですよ。バリアフリーというのはそういうものなんだっていうことを、やっぱり少し言っていかなくちゃいけないんじゃないかなっていうふうに思いまして。まあ、この本がきっかけになったんですけれど。
サ:なのでですね。著者の方々に、気にかけていただけるとしたらですね、それを出版される時に、担当編集者さんですとか、営業の方でもいいですけれども、出版社の方と、まあ、一度そういうお話をしていただけるといいかな、と思うんですね。
というのは、我々点字図書館は点字図書ですとか、さっき見ていただいたデイジー図書を作るときにテキストデータを頂きたいなという、希望、要望があります。
なぜならば、テキストデータがあれば、そこから点字図書、点字に自動変換したり、あるいはさっきアイパッドで見ていただいたようなデジタル図書を、今までより効率的に作ることができますので。その時にですね。やはり出版社さんとのやり取りがスムーズにいくためには、そもそも著者さんがそういったことをご理解いただいて、いただいてます、という了解があれば、出版社の方も動きやすいでしょうから。
執筆ですとか、編集の過程で、そういったやり取りもしていただけると……。
シ:全然違いますか? やっぱり。
サ:はい、より、良いかなと。
シ:それは、えっと、作家の側から点字図書館さんの方に、何か働きかけるのではなくて、編集さんと、もしそういう話になったら、渡して欲しいっていう話をしておけば、いい感じ。
サ:そうですね。我々点字図書館がまず制作する時に、コンタクトとるのは、著者さん直接ではなくて、やはり出版社さんがありますので。そこで出版社さんがいや、著者の了解得てません、ですとかね。あの著者と確認するのに時間がかかります、とかですね。そこで、かなりやはり時間が経ってしまったりですとか、著者さんが拒否してます、とかっていうことを理由にいただけない、ということも考えられますので。そもそも、著作権者の作家さんがそういうことを後押ししてますよっていうことを伝えて頂ければ、出版社にとっても後押しになるんではないかなと考えています。
シ:あの、そもそも、その点字図書を作るとかいう場合に、著作権、著作権者に確認しなくても大丈夫なんですよね?
サ:はい、そこはあの37条第3項に著作権者の著作権の制限という項目の中に、そういった視覚障害者等に、視覚で、本を出版物を読むことができない方のために、そういった点字ですとか、音声に複製して提供することができるという規定がありますので、それに基づいて行っておりますので、現在は著者さん、著作権者さんに一件一件確認をとるということが、省くことができるということです。
シ:ああ、良かったです、なんかそれが省かれるだけでもだいぶ楽になりますね。
サ:まあ、ただですね、データを、そのデジタルデータ、紙の本を印刷するためのデジタルデータまでを、出版社あるいは著者が提供しなければいけないという法律はありませんので。
シ:まあ、そうか、そこは、難しいですね。
サ:なので、そこは本当に出版社さんや著者さんのご理解が必要なんですね。まあ、あのデータがなくても制作することはできるんですよ。つまり、紙の本を見ながら点訳していく。あるいは、デジタル化の作業していくということはできるんですけれども、やはり出版からかなり時間がかかりますので、まあそれこそ、紙の本が出てから何ヶ月もかけてやっていくと、いうのが従来だったんですけれども。
もともと紙に刷るためには、今、デジタルデータがありますので、それをご提供いただければ、より早く視覚障害のある方などへ、適切な点字なり、デイジー図書で提供していけますので、まあ、そこを何とかご協力いただけませんかね、というのが我々の願いですね。
シ:そうですね。なんか出来ることは、なんかなんでもやりたい感じがするんですけれど、なかなか知らないっていうところが、まあ大きいんじゃないかなと思うんですね。あの、こういう取り組みに関しては。だから、なんかちょっとずつね、私たちの方でも広めていけたらいいなと思うんですけれど。
サ:ありがとうございます。
シ:いえいえ、とんでもないです。あの、こういう点字、読書バリアフリー図書を作るのは、どんな本って決まっているんでしょうか?
サ:それは一般的な図書館と同じですね。ニーズが高そうな本、話題になってる本、必要な本、それをなるべく提供していく、ということは、公共図書館とそれほど変わらないと思います。で、もちろん利用者さんからですね、こんな本が読みたいというリクエストもいただきますので、それも選書の過程で候補に入れていきます。
シ:分かりました。えっと、先ほどのお話にちょっと戻っちゃうんですけれども、あの著作権者がデータをお渡しした場合って、えっと、じゃあ、データお渡ししたから、えっと、それで必ず本になりますということでもないですよね。
サ:そうですね。あの、選書の過程が必ず入りますので。全ての本をですね。点字やデイジー図書にすることは、なかなかマンパワー的にできませんので。
シ:ああ、そうですね。
サ:利用がされそうな、多くの人のニーズがありそうな本からまず手掛けていきますので。こちらの求めに応じて出していただけるとありがたいです。
シ:そうですね、たぶんそれが一番近道ですね。やみくもにではなくて。うん、そうですよね。
サ:あの、やはりデータの流出ですとか。いろんなことを心配される、それは充分よくわかりますので。データの提供をいただける時は本当にこちらも厳重に管理をして、外にもれるということは決してないようにしていきますので。例えば、この本を点字にしたいとか、テキストデイジーにしたいという時に、この本のテキストデータ、あるいは原本も一緒にいただけるとありがたいんですけど、ええ、いただけませんかね、という要望がですね、出版社経由でありましたらば、まあ、ぜひ後押しをしていただきたいなというのは、我々の希望です。
シ:できるところからという感じですね。
サ:はい。ありがとうございます。で、丁度この本(『わが盲想』モハメド・オマル・アブディン著/ポプラ社)もですね、実は点字版と、音声デイジー版と、テキストデイジー版と、マルチメディアデイジー版で、ほんと、4つのメディアで制作したんですけれども、そのきっかけはその著者のアブディンさんの希望だったんですね。視覚に障害のある人にも、いろんな媒体で読んでほしいと希望があって、テキストデータも点字図書館に提供していいという意向を受けて、出版社さんが当館にコンタクトを取って、そういった製作が実現したということになりますので。著者さん著作権者さんからの理解と希望っていうのが出版社を後押しするという面は確かにあると思います。
シ:じゃあ、私たちの意思も大事ですね。
サ:はい。
シ:大事だということで。はい、ありがとうございます。で、あの、今お話に全くでなかったんですけれど、漫画とかも何かになっていたり……?
サ:漫画はですね。漫画といっても多様な表現がありますよね。で、それを点字で表現するにしても、音声で表現するにしても、非常に難しいジャンルではありますので。まあ、我々としても、今後の課題と言いますか、とは感じています。視覚的に表現された、コマ割りとか、セリフとか、あるいは擬音とかも出てきますね。それをどう、触読、指で読む読書方法や、音だけで聞く読書方法で伝えていくかというのは本当に一番難しいジャンルだな、と。
シ:難しそうですね。そうですよね。
サ:まあ、ボランティア団体さん等で取り組まれることあると思いますけれども、まあ、うちの図書館で正式に、例えばこの漫画を完全に点訳しました、音訳しましたというのは、ケースはないです。
シ:なるほど、そうなんですね。それほど難しいということなんですね。
サ:そうですね。
シ:「にってんフォーラム夏号」を拝読したんですけれども、そこにあのオーディオブックと、あのこちらの録音図書のことについて書かれていて。
私、オーディオブックは利用したりするんですけれども、何が違うのかなっていうのが、その辺りはどうなんでしょうか。
サ:まあ、使いやすいかどうかというのは、その方の捉え方にはよりますけれども。ひとつ、一般のオーディオブックと、さっき聞いていただいたデイジー図書の大きな違いは、演出をしない、というところですね。
シ:演出をしない。
サ:はい。つまり、文芸作品であれば、登場人物によって、声を変えたりとか、あるいは感情的な部分を盛り上げてしまったりとか、そういった感情表現を過度にしないという特徴があります。なぜかと言いますと、視覚障害等の方のための音声図書、録音図書は、その図書の情報を伝える、と、正確に伝える、というところを主眼にしておりますので、それ以外の主観的な感情的な演出はしないという取り決めをしております。
シ:ああ、そういうことなんですね。
サ:市販のオーディオブック、その辺が、豊かな作り方をされてると思いますし、場合によってはそのBGMが入っていたりすることもあると思うんですけれども、我々の音声図書の場合はそういったことはいっさいしない、ということですね。
あと、図表などを、オーディオブックですと、カットされて、例えばこのページで表は見てください、みたいな処理がされると思うんですけれども、我々の音声図書の場合は、図表なども文脈上、必要であればしっかり耳で聴いて分かるように、言語化してお伝えすると。必要であれば写真とか、絵とか、そういったものも言語化してお伝えするようにしています。
シ:凄いですね。それはちょっと一度聞いてみたい感じがします。どうなってるんだろうっていうのは。
サ:そこに結構ね。時間と知恵を要しますので。はい。
シ:だって難しいですよね。
サ:そうですね。難しいので、そこはやっぱり知恵の絞りどころになっています。
シ:ああ、素晴らしい。そうなんですね。ありがとうございます。
では、本日は、本当にありがとうございました。お忙しいところ、お時間いただきましてありがとうございました。
サ:こちらこそ、ありがとうございます。
―――
【オフショット】
シ:オッケー? オッケー? いい? お忙しいのにたくさんお時間いただいて
もう、ほんとにありがとうございました!