131、学習交流会にご参加を(2024,5,15)

理事長ブログ

【総会通知が】

・5月24日の学習交流会、文学賞贈呈式、そして翌25日の総会通知の出欠ハガキが、連日ドシドシ?事務局に届いています。ご欠席の方も、委任状は必ずお送りください。今回、委任状の上の所に「名前」という欄がなくて、委任状の所に名前を書くしかないような形になっていて、ごめんなさい。

お一人、全部にご出席で、名前の記入のない方がいました。石神井の消印でしたが、もしお心当たりの方がいらしたら、事務局にご連絡ください。

・さて、5年ぶりに開催の、パーティーを伴った贈呈式にもぜひご出席いただきたいのですが、これはやや首都圏の方に限られますね。その意味でも、リモート参加できる学習交流会には、全国の会員の方にどしどし?参加してほしいのです。

【今年の学習交流会は】

・今年の学習交流会のテーマは「21世紀の新人賞作家が半世紀前の新人賞作品を読む」です。これはもちろん研究部の発案ですが、これを聞いた時、僕はなにやらうれしい気がしました。というのは、(前に書いたことですが)僕自身が“評論家デビュー”したのが1974年、つまりちょうど「半世紀」前なのです。今回のテキストになっている当時の新人賞作家、さとうまきこさん、川北亮司さん、岩瀬成子さんは当時20代で、僕にとっては、初めて出会った同世代の書き手でした。

当時の児童文学状況を語るとなると、このブログの枠組みではさすがに無理ですが、きわめてざっと語ってみると、児童文学がひとつの曲がり角というか、“深まり”を見せていた時代だと言えます。

「現代児童文学」がスタートしたのが、1959・60年で、61年あたりも含めた2、3年で、佐藤さとる、いぬいとみこ、松谷みよ子、古田足日、山中恒、神沢利子、今江祥智、寺村輝夫といった、そこから数十年間、日本の児童文学をけん引した書き手たちが一斉にスタートします。これらの人たちは、概ね昭和一ケタ(特に女性の書き手は、大正の終り生まれも含みますが)の生まれで、僕はこの人たちを「現代児童文学の出発世代」と呼んでいます。そして、僕が学生時代児童文学に出会って、熱心に作品を読み始めた時の作家たちは、ほぼこの世代の人たちでした。

そして、1960年代半ばから後半に至って、高度経済成長による一定の“豊かさ”や進学率の上昇、図書館の増設などによって、児童書を読める環境が飛躍的に向上していきます。書き手の側から言えば、児童書で〈食える〉時代になったのです。

・そうした中で、1970年代に入り、児童文学にひとつの変化が現れます。一番目についたのは、作家たちが自身の少年・少女時代を題材にした作品が現れたことでした。逆に言えば、60年代はなぜかほとんどそうした作品がなかったのです。児童文学賞を総なめした安藤美紀夫さんの『でんでんむしの競馬』、今江祥智さんの『ぼんぼん』、長崎源之助さんの『向こう横町のおいなりさん』、神沢利子さんの『流れのほとり』といった作品で、概ね対象年齢は高く、ある意味大人の小説に似た味わいの作品たちでした。

1960年代の現代児童文学の出発を画した多くの作品が、〈子ども〉性というものをどう作品に組み込むかという問題意識に貫かれているのに対して、こうした70年代の作品は、自身の子ども時代を題材にしつつも、児童文学の表現にどう〈私〉を持ち込むのか、持ち込めるのか、という問題意識を感じさせるものでした。僕はこうした傾向を「〈私〉への回帰」と呼んでいます。

そして、それと何かしら符牒を合わせるように、1970年代に登場した若い作家たち、上記のように、僕と同様いわゆる団塊の世代の書き手たちですが、そこには直接、間接に自身の子ども時代が投影されている感じがあり、子どもを描くことと、自身の〈今〉に迫ることが、切実に重ねられている感じがしたのです。『絵にかくとへんな家』や『朝はだんだん見えてくる』は、まさにそういう作品でした。

その点、川北さんの『はらがへったらじゃんけんぽん』は、ジャンルとしてはナンセンスになるでしょうか、一見上記2冊とはまったく雰囲気の違う作品です。けれど、これはちょっと説明不能ですが、僕はこの作品からも、何か必死に自己と闘う作家のモチーフを感じました。

・児童文学の創作において、よく言われることですが、〈外なる子ども〉と〈内なる子ども〉という二つのモチーフをどう重ねていくのか。これは児童文学というジャンルの永遠の課題だと思いますが、それがいろんな意味で露わになったのが1970年代で、そうした苦闘というか、もがきは、今の書き手たちにつながっているのではないでしょうか。

そんな意味で、僕に近い世代の方はもちろん、より若い世代の方たちにとっても、今回のテーマは、かなりに刺激的なのではと思います。もちろんリアル参加大歓迎ですが、せっかくリモートの設定もしているわけで、出てきにくい方や遠方の方たちも、ぜひぜひ今回の学習交流会にご参加いただきますように。