先生方の励ましに応えたい(尾関忍)/第51期児童文学学校

講座ブログ

電車の中でふと携帯を見ると、新着メールがあった。
公募作品入選のご連絡(偕成社)
学校や塾を移動しながら仕事している私にとって、そのメールは移動時間に知らされた「宝くじ当選」みたいなものだった。
うそ、夢みたい!
一瞬じわっときたが、人ごみに流されて駅に降り、元気な声が響く教室に到着するころには涙はすっかり乾いていた。こうやって子供たちと同じ時間を過ごす幸せを噛みしめつつ、私は胸の奥にもう一つの夢を抱いてきた。子供の本を書くことで、もっと沢山の子供たちと出会いたい……。
しかし、現実は厳しかった。
子供の本のよい書き手は沢山いる。新人賞に出してみたけれど、一次選考さえ通らずに焦る日々が続き……けれど、引き返すわけにもいかなかった。
いつか、みんなに読んでもらえるお話書くからね!
なんて、子供たちと約束してしまったのだ。

「書く→出す→落ちる」のループを脱出したくて、日本児童文学者協会の添削講座に申し込んだのが一昨年のこと。一年間、筑井千枝子先生に添削していただいて、自分で言うのもなんだがすこし「物語っぽく」なってきた。
そして、去年、文学学校に参加した。
いつも忙しいのを理由に受講を躊躇してきた私が「今年受けよう!」と腹を決められたのはなぜか? 五十路を超えて焦ってきたのかもしれない……。
参加してみて、なんでもっと早くこうしなかったのかと後悔した。
プロの先生方の言葉にはひとつひとつ重みがあった。
まず、児童文学には「グレード」というものがあること(もちろん知ってはいたけれど、そんなに大事だとは知らなかった)。それから、書きだす前に「プロット」を作り、場合によっては売り方まで考えた「企画」をたててみること。「改稿」を重ねることが書く力を育むことなど……いくつも教わった。
デビューするまでの体験談も興味深かった。
「57歳でデビューした」と聞けば、私もまだ間にあうかもとやる気になったし、「作家になってもサラリーマン時代のまま時間刻みの予定をたてて書き続けている」と聞けば、スケジュール帳を開いて賞の締め切りを書き出す自分がいた……どの先生からも、書くこと、書き続けることへの情熱がパソコンの画面を通じてひしひしと伝わってきた。
文学学校の最終日、後藤みわこ先生がこらえきれず泣き声になった。容易ではない「プロへの道のり」を歩もうとする私たちへの思いがあふれたのだと思う。モニタの向こうで、受講生みんなが泣いていたにちがいない。私は自分がなぜ子供の本を書きたかったのか、どうしてこの協会の門を叩こうと思ったのか、自分でも気づいていなかったことにようやく気がついた。
未来からのお客様を励ますために子供の本はある。そして、そんな子供の本を書きたいと願う人へ「一緒にやろうね」と声掛けしてくれる、文学学校は優しい励ましに満ちていた。
お世話になった先生方へ、諦めずに書き続けることで恩返していきたい。

 

(おめでとうございます! by事業部)

 

※偕成社のアンソロジーの結果発表は、こちらです。併せてごらんください。