日本児童文学 2023年9・10月号

特集 子どもの権利 よく休み、よく遊ぶ

詳細

子どもの権利について考えるとき、1989年に国連で採択され、1994年に日本も批准した「国連子どもの権利条約」(全54条)は大きな指針となっています。
「前文」および「第1条~第41条」では、生命の確保や意見表明、教育を受けるなどの子どもの基本的権利が明記され、さらに「44条~54条」で、この条約を結んだ国が子どもの権利を実現するためにおこなうべき具体的活動も記されています。
その活動のひとつとして、この条約を結んだ国は定期的に、実現したことや進み具合を報告し、「国連子どもの権利委員会」の審査を受ける義務があります。これまでの日本に対する審査では、日本の子どもは「競争的な学校システム」によるストレスにさらされていることがくりかえし指摘されてきました。その「競争的」の度合いは、「highly(大いに)」から 「excessively(非常に)」「extremely(極めて)」 、そして「overly(過度に)」とより強い言葉で示されるようになってきています。(「パンフレット「国連から見た日本の子どもの権利状況」」日本弁護士連合会子どもの権利委員会)
そこで、この特集では、子どもの権利条約の中でもとくに31条の「子どもの休息、余暇および文化的活動に関する権利」に注目することにしました。よく休み、よく遊ぶことも、子どもの固有の権利であることを改めて確認し、ストレスフルな子どもたちを解放するための児童文学の役割や意義を問い直してみたいと思います。

 

目次紹介

《詩》 「練習風景」……清水ひさし 6
《短歌》 「特権」……辻聡之 8
《短編》「まるまるちゃんとまりんちゃん」……梨屋アリエ 10
《短編》「夢紡ぎの魔女」……村上雅郁 16
《短編》「いいかえしたい」……次良丸 忍 22

特集 子どもの権利 よく休み、よく遊ぶ
【論考】子どもの権利と31条をめぐって……増山 均 30
【論考】保育における子どもの権利と子どもの本
―その関係性を巡って―……内藤知美 36
【論考】子どもの権利条約第31条をめぐる私の「推し活」記録……青木沙織 42

☆「子どもの権利」を考えるブックガイド……58

《エッセイ》
臨海教室とキャンプをめぐる戦い……野坂悦子 48
子どもの自由に遊ぶ・休む権利とともに非差別と対話の権利を
〜『世界の子ども権利かるた』の遊びをとおして……甲斐田万智子 50
渡せなかった手紙……木村 研 52


「ワニブタワールド」と「31条のひろば」……大屋寿朗 54
秋の公開研の深くて熱い問題意識について……西山利佳 56

〈子どものつぶやき こんな〇〇はいやだ! ②〉 こんな大人はいやだ! 94


《創作時評》…… 妹尾良子、くぼ英樹 68
《同人誌評》……井上良子、熊谷千世子、筑井千枝子 76
〇同人誌推薦作品について 83

〈世界に開く窓〉……佐藤まどか 84
◇読者のページ 92

■連載・インタビュー― 作家とLunch ~創作のひみつを探る~5 指田 和 97
■連載・創作―「趣海坊天狗譚」(第五回)…… 長谷川まりる 106

・ブックラック……74   ・投稿作品賞選評……88 
・子どもの本の情報館……86  ・執筆者プロフィール……117
・次号予告……87       ・編集後記……118

●表紙絵/北見葉胡  ●レイアウト/榎本事務所