子どもたちが再び戦場に立つことがないように! ~日本を「戦争をする国」に変質させる「安保3文書」に反対します~(2023年度 総会決議)
2023年度 総会決議
子どもたちが再び戦場に立つことがないように!
~日本を「戦争をする国」に変質させる「安保3文書」に反対します~
1945年8月の敗戦から、まもなく78年目の夏を迎えようとしています。この間、日本の国内で戦争の被害者を出すこともなく、また日本の軍隊が加害者として戦死者を生むこともなく、わたしたちは「戦後」の時間を過ごしてきました。
1946年に公布された日本国憲法は、アジア・太平洋戦争で多大な犠牲を生み出したことへの深い反省をもとに、「戦争の放棄」を世界に向けて宣言しました。その後、今の自衛隊が発足しましたが、「専守防衛」という建前は、これまでまがりなりにも守られてきました。「二度と戦争を起こしてはならない」という国民の強い思いが、憲法の平和主義の精神を守ってきたのです。
しかし、2015年に時の安倍政権によって、それまで、あくまでも「日本が実際に攻撃を受けた場合」としていた原則が、「同盟関係の国が攻撃を受けた場合」も自衛権を発動するという、集団安保体制に切り替わりました。これによって、日本の国土が戦争に巻き込まれる可能性、日本の軍隊が戦争に参加する可能性が、かなりに現実的なものとなったのです。
そして昨年12月、岸田内閣によって、日本の安全保障の基本方針や具体的な防衛計画を定めた「安保3文書」が閣議決定されました。これによって、日本や同盟国が攻撃を受けていなくても、ミサイルなどの発射を阻止するためと称して、外国の基地を攻撃できるという形に切り替わろうとしています。そして、そのために、2027年度までに43兆円の軍事費をつぎ込み、日本をアメリカ、中国に次ぐ世界第三位の軍事大国にしようとしています。
日本もミサイルを持てば、本当に日本の国土と国民は守られるのでしょうか。日本から発射されたミサイルの先にあるのは、軍事基地だけなのでしょうか。その答は、過去の幾多の戦争の実態を見れば明らかです。戦争の準備こそが戦争を呼び、「軍備増強」を言い立てる人たちは、いったん戦争になった場合、どれほどの被害が生じるかは決して語りません。ロシア軍のウクライナ侵攻はわたしたちに衝撃を与えましたが、ロシア軍の砲弾の下にさらされているウクライナの子どもたちや、何の大義もない銃を持たされているロシアの若者の姿は、明日の日本の若者たち、子どもたちに重なります。わたしたちは、子どもたちを戦争の被害者にも、加害者にもしてはなりません。
わたしたちの会は、敗戦後間もない1946年3月に創立されました。そこには、戦時下において多くの児童文学者が「戦意高揚」の作品に手を染めたことへの、痛恨の思いがありました。日本が再び「戦争をする国」への道を進むならば、わたしたちの表現活動や子どもたちの自由な読書も大きな制約を受けることになるでしょう。
今回とりわけ危惧されるのは、日本の進路を大きく左右するこのような決定が、国会に諮ることすらなく、閣議決定という形で押しつけられようとしていることです。わたしたちは、安保3文書の撤回と共に、きちんとした情報が提供される中で、日本の安全保障のあり方、国際貢献のあり方について、国民的論議が保障されることを求めます。そして、わたしたち一人ひとりがそうした国民的論議に主権者として参加していく決意を、ここに表明するものです。
2023年5月27日
一般社団法人 日本児童文学者協会 第60回定時総会