〈NO WAR 子どもたちの明日を守りたい〉
004 たくさんのセイちゃんが
山田清一郎さんが亡くなられた。拙著『命のうた』の主人公、戦争孤児の〝セイちゃん〟である。90歳だった。
山田さんは神戸大空襲によって十歳で戦争孤児になり、浮浪児として路上で生き、のちに苦学して中学校教師になった。
今年のお正月、山田さんに年賀状をいただいていた。十年以上前に年賀状じまいをされ、初めてのことで驚いた。1月中旬に娘さんから葉書が届き、年末に急逝されていたことを知った。年賀状は亡くなる数日前に投函されたようで、ご家族もご存知なかった。なにか予感されていたのだろうか。
秩父の山田さんのご自宅にお焼香にうかがった。亡くなられた後、奥様への感謝をつづった手紙が何通も発見されたそうだ。涙なくして読めなかった。
ご自宅で孫、ひ孫たちにかこまれ穏やかに世を去られた。このように人生を全うすることができた元・浮浪児はわずかではないか。
山田さんは、12歳のとき神戸を発って以来、神戸に一度も帰らないままだった。
奥様が、もう十分じゃないですか、と何度いっても、戦争への強い怒り、浮浪児を虐待した大人への怒りは終生消えることはなかった。
山田さんはつねづねこうおっしゃっていた。「戦争は大人の責任だ」。
〝たくさんのセイちゃん〟がいなくなっていく世界を、私たちはどう生きるのか。
故・中村哲医師の言葉を借りるならば
「平和には戦争以上の⼒があり、平和には戦争以上の忍耐と努⼒がいる」
われわれは傍観者であってはならない。児童文学は、希望を語る文学だ。
話そう。今すぐに。身近な人と話そう。「政治の話は難しい・かっこわるい」空気が、今の世界を作ったのだ。
小さな電子かまぼこ板に表示されるショート動画や短く強い言葉より響くもの、それはアナログだ。会話だ。手ざわりだ。
まず話そう。パートナーと。子どもと。親と。友達と。近所の人と。職場の人と。意見がちがう人とも、話すのだ。とにかく話題にするのだ。
私たちは、言葉の力を信じなければならない。