〈NO WAR 子どもたちの明日を守りたい〉
003 新たな戦前
イスラエルによる虐殺が続いている。停戦協定なんてあってないようなものだ。パレスチナの民を非人間化し、嘲笑し、爆撃と封鎖による飢餓でじわじわと嬲り殺しにしながら、国境付近でバーベキューに興じるシオニストの家族。侵略の様子を笑いながらsnsにアップするイスラエル兵。ガザでは血に塗れた両手を洗いたくないと、自分の子のものだからと泣き叫ぶ母親。一人でも救おうと病院へ向かった医師のもとへ、数時間後運ばれてきた我が子たちの亡骸。瓦礫にボロ切れのように引っかかる、昨日まで笑っていた女の子の遺体の一部。snsに溢れる悲鳴と助けを求める声。そこへ手を伸ばそうともがく者もいれば、プロバガンダを信じ込み、今日へ至る侵略の歴史を知ろうともせず、「ハマスのせい」とデマを拡散する者もいる。自分の生活でいっぱいいっぱいだからと、遠い国の知らない話だからと、目を背ける人々もいる。だけど、一息入れようと飲んだジュースに入っているグレープフルーツはイスラエル産。生活を切り詰めて納める年金も、イスラエルの軍事企業への投資に使われる。世界中の子どもたちが目を輝かせて夢中になるコンテンツを生み出し続けるディズニーすらも、イスラエル支持を表明し、200万ドルもの寄付をした。パレスチナはゆっくりと見殺しにされていく。
そんな中、日本では初の女性首相が誕生。日本製のいい服を着て、他国へマウントを取りにいくと公言し、国際会議に遅刻する。史上最低のアメリカ大統領の隣で童女のようにはしゃぎながら、軽々と台湾有事に言及する。中国との関係悪化? 知ったこっちゃない。パンダなんかいなくても困らない。海外からの旅行者が激減? だったら日本が海外旅行に行かなくちゃ! え、なに? 裏金? いつの話? そんなことより議員定数削減を! 少ない人数で好き勝手に政治がしたいもの! これこそがまさに今の日本の姿だ。省みない。謝らない。立ち止まらない。破滅へ、破滅へ。蔓延する排外主義。外国人差別。クルド人ヘイト。銀座から外国語が消えた、日本万歳! いえいえ、白人様はいいんですよ。沖縄では米兵が強姦事件を起こしている。日本ではそれを裁けない。治外法権。排外主義を叫ぶ連中は、その不条理には声をあげない。未だこの国はアメリカの属国で、だけどそんなことだれも気にしてない。メディアはプロバガンダで忙しい。なにせサナ活を流行らせなきゃいけない。インフルエンサーを呼んで独裁を賛美しなくちゃ。動画投稿サイトには「日本スゲー!」のファスト動画が溢れているから、だれでもかんたんに気持ちよく国粋主義者になれる。新たな戦前。いつか来た道。でも、だいじょうぶ。首相は「子どもたちを戦争に行かせない」約束はしてくれなかったけれど、「大切な子どもさんの命を守るために戦う」そうだから。
戦後八十年の今年も残すところわずか。〈NO WAR 子どもたちの明日を守りたい〉、7月から始まって集まったのは3つ。100の桁にはとても届かなかった。希望はどこだ。私たちは現代の子どもたちに、はたしてなにを語れるのだろう。戦時中、戦意高揚に加担してしまったことへの反省より生まれた戦後の民主主義児童文学。もはや「新たな戦前」となったこの時代に、私たちが書き手としてできることはなにか。すべてが終わった後で、もう一度反省するチャンスが残されているとは限らない。