〈子どもの権利〉を考える

リレーエッセイ「〈子どもの権利〉を考える」を始めるに当たって

藤田 のぼる

 協会のホームページのリスタートに当たって、テーマを定めた、会員によるリレーエッセイの場を設けることにし、その最初のテーマを「〈子どもの権利〉を考える」としました。
 児童文学に携わる者として、「子どもの権利」という問題は、いうまでもなく関心を向けてきたテーマではありますが、これについて改めて考えさせられたのは、やはり、というか、コロナのことでした。
 新型コロナウィルスの感染が本格化した2020年3月、当時の安倍首相によって、全国で一斉休校になった時は、やはり驚きました。当時、親の負担の問題、先生方の対応の問題などは、いろいろ言われましたが、僕が気になったのは、最大の当事者である子どもたちは、このことについて意見を言うことができたのだろうか、ということでした。
 もちろん、問題が問題ですから、子どもに決定を委ねることは難しいでしょう。ただ、中学生、特に高校生の場合なら、授業の進め方、卒業式のありかた、春休みの過ごし方などについて、当事者である子どもたちの意見を聞き、その知恵を借りるということが、あってもいいはずなのに、と思ったのです。(もしかして、私立の高校あたりだとそういうケースもあったかもしれませんが。)いずれにしても、日本の学校という場が、子どもたちの声を反映させていくという発想というか、訓練が、きわめて少ない場だなあ、ということを、改めて実感させられました。
 一方、僕は児童文学の評論の仕事を続けている者として、ここ数年、いやもう少し前から、子どもの権利という問題意識を感じさせる作品がかなり出ているなあという手応えを感じています。「子どもの貧困」やいわゆるヤングケアラーの問題などを題材としている作品、校則の問題を考えさせてくれる作品、それらに共通しているのは、当事者である子どもたち自身が、そうした問題にどこまで立ち向かえるかという問題をぎりぎりのところまで追求しようとする意志です。
 もちろん「子どもの権利」という概念はもっと広く、子どもたちの学びや喜びと深く結びついている問題だと思います。現実の子どもをめぐる問題、自身の子ども時代に感じていたこと、「こんな本があるよ」という情報、「こんな作品が書きたい」という宣言(?)等々、この課題にふさわしく、さまざまな角度からの思いを、この欄で語っていただければと思います。
 協会から何人かの方にエッセイの執筆もお願いしますが、会員の皆さんからのご寄稿もぜひお願いします。長さとしては1000~1200字程度。協会事務局あてに、メール添付もしくは封書(表に「リレーエッセイ」応募とお書きください)でお送りください。とりあえず、一次締め切りを8月末とします。また、応募多数の場合や内容が必ずしもテーマと重ならないと判断されたものについては、掲載できない場合もありますので、この点ご了解ください。
 秋の公開研究会は、「子どもの権利」がテーマです。このテーマについて、ホームページの場でも、共に考え、発信していきましょう。