192、同人誌の創刊と終刊 のこと(2026,2,25)

理事長ブログ

【同人誌を送っていただいて……】

・僕の所には、各出版社からの献本と共に、児童文学の同人誌が送られてきます。ちゃんと数えたことはありませんが、月に二冊くらいは届くのではないでしょうか。出版社からの献本と同様、もちろん開封して確認するまではしますが、中をちゃんと読めるかと言うと、なかなかそこまではできません。ページをめくって、エッセイ的な部分や編集後記などは読み、また評論が掲載されていれば大体目を通しますが、創作を読むまではいかないといのが正直なところです。

そんな中、珍しく、というと語弊がありますが、2冊の同人誌をまるまる読みました。1冊は創刊号、もう1冊は最終号だったから、ということもありますが、どちらも多少の“ご縁”がある同人誌だったからです。

【創刊号と最終号】

・創刊号の方は『金平糖』という同人誌で、同人は5人、そのうち何人か、僕が創作教室の講師をしていた時の受講者がいました。まず「金平糖」という誌名に惹かれました。金平糖って、一粒一粒に存在感があり、いろんな色がありますが、どれがメインということはない。うまく名付けたな、と思いました。

作品はファンタジー系が多いのですが、王道系のファンタジーからコミカル系(?)のファンタジー、そして民話的ファンタジーなど、それぞれの持ち味が本当に違っていて、いいメンバーがそろったな、という感想でした。感想を書き送ったのですが、上記のように“教え子”がいるせいか、つい先生口調の感想になってしまいました。

・そして最終号ですが、『さん』という同人誌で、こちらは1985年の創刊、今回が37号ですから、ほぼ一年に一号のペースで発行されてきたことになります。この同人誌は、亡くなられた岩崎京子さんを囲んで、というか、言わば岩崎さんのお弟子さんたちによる同人誌だったのですが、協会のサマースクールがきっかけで、岩崎さんが講師を務められた第三分科会を受講した人たちによって作られたので、誌名が「さん」というわけです。第二分科会でなくて、良かったですね(笑)

協会の児童文学学校や、上記の『金平糖』のように、創作教室がきっかけでできたグループ、同人誌というのは結構ありますが、サマースクールというのは一回集まって終わりですから、これがもとでできた同人誌というのは、『さん』くらいではないでしょうか。それだけ、岩崎京子さんとの出会いがかけがえのない機会だった、ということでしょう。

・その四十年続いた同人誌が、岩崎さんの逝去をうけて、いよいよ終刊という運びになったわけですが、この号では、同人のこれまでの作品の中から選んだものを掲載しています。つまり、「傑作選」というわけで、同人誌のこれまでの歩みや岩崎さんを偲ぶエッセイなど、最終号にふさわしい作りになっていて、「こういう終わり方は、いいなあ」と思わされました。

この同人誌の特徴は、岩崎さんが“指導者”としてだけではなく、言わば同人の一人としてここに作品を掲載されたことでした。岩崎さんの代表作である『東海道鶴見村』のシリーズに収録されている短編のいくつかも、ここに発表されたものでした。そして、今回、最後の本が出てから書かれた作品、つまり本にはなっていない二つの作品「最後の飛脚」と「鶴見の花火師」が、再録されています。

・僕はこのシリーズが大好きで、十年ほど前に、『「場所」から読み解く世界児童文学事典』(原書房)という本を出すときに(5人の共編著ですが)、この本も取り上げました。これは内外の200冊を、その作品の場所(舞台)をキーにして紹介したものですが、すべてに場所にちなんだ写真が掲載されています。岩崎さんの『東海道鶴見村』は僕の担当だったので、鶴見まで写真を撮りに行った覚えがあります。まあ、昔の東海道の面影を探るのは難しかったのですが、そういう仕事も初めてのことで、楽しかったことを覚えています。

・102歳で亡くなられた岩崎さん、1と0とを足すと「3(さん)」になりますね(ちょっと無理矢理か)。冒頭に書いたように、送っていただいた同人誌をていねいに読む機会はなかなかないのですが、『金平糖』の、そして『さん』の同人の皆さんの、今後のご活躍を期待する思いを強くしたことでした。