187、年末あれこれ (2025,12,30)

理事長ブログ

【今年最後の更新です】

・今回は、5日遅れの更新ですが、いずれにせよ、今年最後の「理事長ブログ」です。

まずは、10月26日付のブログでも、そして協会HPの「那須正幹電子記念室」でも告知していますが、那須さんの『屋根裏の遠い旅』の中公文庫版が出ました。帯には、次のような文面が並んでいます。

「ズッコケ三人組」の巨匠が若き日に著した、パラレルワールド×歴史改変SF×戦争児童文学

「巨匠」にはちょっとびっくりしましたが、そう言われれば、那須さんは「巨匠」と言われてもおかしくない存在ですね。前書きの代わりに憲法9条の条文が掲載されているこの作品、50年前に出版された作品が、今こその輝きを放っているのは、いささか皮肉でもあります。

・年々「年賀状仕舞いをします」というお知らせが増え、協会もハガキ代が上がった去年から年賀状は打ち止めにしましたが、僕はまだ作っています。以前は宛名も書いていましたが、400枚近くあるのでさすがに大変で、十年ほど前から宛名は印刷しています。基本的な文面と住所まで印刷して、名前は手書きにし、なるべく一言添えるようにしています。昨日で、ほぼ終わりました。

名前を手書きにしているのは、「せめて」という感じでもありますが、僕の場合、兄弟・親戚とか、学生時代の友人とか、小学校教員時代の教え子、知り合いなどには、「藤田のぼる」ではなく、本名の「藤田 昇」と署名するという実際的な理由もあります。漢字の「昇」を使うのは、兄弟に何か送ったりする時を除けば、ほぼ年賀状の時に限られますから、なんというか、僕は「藤田 昇」だったな、ということを思い出す?時間でもあります。

【夏のファックス】

・話がバラバラですが、一昨日のこと。大掃除というほどではありませんが、自宅の電話周りを掃除していました。普段は子機の方を使いますから、本体の方を見ること自体が少なくなっています。そしたら、「ファックスが届いています」という表示があり、プリントしてみました。そしたら、なんと、8月の終わりに届いていたファックスでした。それを、年末になるまで気が付かなかったわけです。

あわてて見ると、秋田の大学の先輩からで、僕が9月からの秋田文学資料館での「斎藤隆介展」のオープニングの講演のことを知らせたことへの返信でした。僕への電話がつながらずファックスにしたということで、都合が折り合えば会いましょうという文面でした。その先輩は、児童文学ではなく、大人の方の文学をやっていて、民主文学会の会員。早速、昨日、おわびの手紙を出しましたが、真夏のファックスを冬になってから見た、という次第。確かに、今ほとんどメールでやり取りしていますから、ファックスをチェックすること自体頭にありませんでした。それでも、とにかく「年を越さなくて良かった」(良くはないか?)と思ったことでした。

・最後に、多分、これが今年最後の読書になるでしょうが、森谷明子さんの『異聞 今昔物語』(偕成社)を読みました。これは同社の「もっと ちょっと 教養」というシリーズの一冊で、例えば『仮名手本忠臣蔵』を石井睦美さんが、『酒呑童子』を竹下文子さんが書いています。それらを読んでいないので、確定的なことは言えませんが、多分古典の若い読者向けの再話だと思うのです。

ところが、『異聞 今昔物語』は、再話そのものではなくて、平安時代の都で一人で暮らす草太という少年が、知り合いの僧から、「おもしろい話を集めてこい」と言われて、褒美欲しさに、市などで、いろいろな話を仕入れてきて、僧に伝える、という設定になっています。つまり、「今昔物語」そのものが生まれていくプロセスがストーリーになっているわけです。そのほか、いくつかの仕掛けが込められていて、なるほどこういう手法があったかと感心させられました。

昨日は、50年前の小学校教員時代の教え子たちと“忘年会”。まさに、「今となっては昔」の話題でした。