いとうみくさん×加藤純子さんのスペシャル動画、文字起こしの第三回目・ラストになります。

 

名残おしいのですが、この動画に関するお知らせもこれでラスト。

そして、作家がインタビューするおでんプロジェクト動画も、今期更新予定は、

あと二本となりました。

来年にまた、詳細を告知したいと思います。

が、なんと！

１）日本点字図書館への取材動画～読書バリアフリーを体験！

２）元青い鳥文庫編集長と座談会～児童文庫について

 

の公開を予定しているのです！！いずれも素晴らしい内容になっています（と、自負しています）！

どうぞお楽しみに！！

 

●いとうみく×加藤純子（聞き手）

◇登場した本（登場順）

＊『真実の口』講談社　2024/4/11

＊『夜空にひらく』アリス館 2023/8/4

＊『車夫１～３』小峰書店 2015/11/25（１巻）。ほかに文春文庫から１，２巻

＊「おねえちゃんって」シリーズ　岩崎書店　2012～

＊『朔と新』講談社　2020/2/6。ほかに講談社文庫。

＊『かあちゃん取扱説明書』童心社 2013/5/25

＊『糸子の体重計』童心社 2012/4/25

 

◇動画作成／ほんまちひろ

 

※本文の無断転載、ご使用はご遠慮ください。

 

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カ：それではえっと、ちょっとなんか今はなんかちょっとなんか、いろいろぐちゃぐちゃあの、申し上げちゃったんですけど。基本的な質問をさせていただいていいでしょうか。

 

イ：はい。

 

カ：あの、一日に書く枚数とか、書くペースのようなもの、自分への決まりとか、作ってますか？

イ：作ってますが、一日何枚かっていうのは教えないことにしてるんです。

カ：教えない！　え～じゃあ、結構長く書いてる？

イ：書いてないです。あ、書いてる時間は長いです。

 

カ：書いている時間は長い。

イ：結構あの、パソコンの前でしがみついてないと書けないので、気分転換とかも基本しないし。

カ：気分転換もパソコンでしてる、YouTubeとか。

 

イ：そうですね。うんうん、あの、だからもう基本的には、書いてるけれども、そんな枚数は多くないです。

カ：あ～～～。

イ：全然進まないから、ほんとうに。

 

カ：それで、えっと、次の質問よろしいですか？

イ：はい。

カ：あの、ま、ストーリーがこう変化していく、書いていてストーリーがこう変化していくと、「あれ？　これつまらない方向に行っちゃったな」とかね、そういう風に思うことってあると思うんですよ。そういう時って、もう一回立て直すのか、最初に戻るのか。どう？　どうしてます？

 

イ：えっと、そういうことの連続なんですね。基本的には、全然面白くないって思って書いていることが多くて。でも、とりあえず書かないと、ああここだっていうところが見つからないので。

 

カ：ああ、なるほど。

 

イ：だから、そのノルマがあるっていうのはそこなんです。何枚っていうのは決めていて、つまんなくてもいいから、まずそこだけ書く。

カ：うんうんうん。

 

イ：で、翌日直ちゃうこともあれば、その続きを、わからないまま、間違ってる絶対こんなのおかしいと思いながら書いていって。うん。しばらく書いたところで、一旦置いて、もう1回見直すとああやっぱりここからおかしいってなって。

カ：ああ。

 

イ：もう1回そこからやるっていうことを繰り返して。それこそ返し縫いじゃないですけど。あの、そういう繰り返しをやっていくうちに、あの、ああ、ここだ！　っていうのが

カ：ああ、見えてくる。

 

イ：ようやく見つかってくるっていう感じ。

カ：ああ、なるほど。

イ：はい。

 

カ：ああ、そうですか。それで。えっと。え、どこいったらいいんだろう。ちょっとなんかね。それからあの。えっと、物語のカタルシスみたいなものって、ありますよね。そういうのって、あの、意識することあります？　例えばもうひとひねりするとか。なんかすごくまあ、テクニック的なことになっちゃいますけど。

 

イ：ああ、それはないです。

カ：ない。

イ：ない。

カ：ない。

イ：ないですね。

 

カ：ああ。そうですか。あの、わたしたちがね、作家になった頃って、あの、創作入門とか、もう別冊で、すごい本が出てたんですよ。わたしもう全部買いましたけど、全部あります。本棚の（自室の）どこかに。

 

イ：ええ。

 

カ：その中でどの人も言ってたのが、あの、長編を書く時っていうのは、仕込みが、こう、できたら、それをじっくり熟成させて発酵させる、そこまで時間をかけろって言われてたんですよ。

 

イ：ああ。

 

カ：でも、みくさんの話しをうかがってると、最初からこう、長編のこういうものを書こうっていう感じではなくて、大まかに、ざっくりはあっても、あと、人間どういう子を書いて、どういう子がどういうものを背負っているんだろう？　っていうそういう書き方だから、昔のその作家たちが書いた、熟成するまで待てみたいな。まあ、私たちの時代の常套句だったんですよ。

 

イ：ああ、なるほどですね。

カ：だから、ちょっとやっぱり違ってきてるっていう感じがしましたね。

イ：そうですね。違うかもしれない。それは。

カ：ね。なんかもうそれが大事大事って刷り込まれてきました。わたしたちは。

イ：なるほどなるほど。

 

カ：で、それからあの、人物を表現するときにね。あの、どこを一番大事にしますか？

イ：どこを一番？

カ：うん。

 

イ：ん……どこを一番。んっと、わたしが多分知りたいなと思うのは、自分が書こうと思っている時に、表面的に見えている……ちょっとさっきの話とかぶっちゃうんですけど、表面的に見えている人物ではない、もうひとつの彼女、彼はどんな人物なのかっていうことを知ろうとする。

 

カ：あー、なるほどね。

イ：そこかな……。

カ：いや、これね、このYouTube見た人、すごい勉強になると思う。すごく勉強になると思う。

それとね、もうひとつ質問。あの、だからそれね、多分みくさんには合わないだろうなって思うんだけれど。その、我々の時代の時ね、物語を作る、例えば物語を、センスよく語るっていうね、語り方ってあるわけですよ。

 

イ：ああはい。

 

カ：例えば村上春樹みたいなね。

 

イ：ああ、はい。

カ：ああいう人って、すごいレトリックっていうのを多用するわけですよ。

イ：はい。

カ：でも、みくさんの文体っていうのは、やっぱり正攻法。

 

イ：そうですね（笑）。

カ：レトリックなんて、なんだ！　っていう感じで書いてらっしゃる。

イ：はい、はい。

カ：ここは、あえて使わないっていうのは、あるんでしょうか。

 

イ：えっと、あえて使わないって言うと、ちょっとなんか、じゃあ出来るんだろう的な感じになっちゃうから。決してそうは言えないんですけど。あの。あんまり興味がないっていうことなんですね。

カ：あ、興味がないんですね。

 

イ：あの、美しくとか、魅力的な文章とか、そういうものあんまり、どうでもいいなって、ちょっと思っちゃってる節があるんです。それよりも、

 

カ：人間を書きたい。

 

イ：うん、その人がどんな、何かこう思ってもみない出会いがあったりだとか、その一言によって、どう反応していくのかとか。なんかもともとわたしライターをやってた時に、先輩っていうか、その上司に言われたことが、あの、難しく書こうとするなと。かっこつけて書こうとしないで、誰にでも分かるように書きなさいってことをすごく言われて。それがやっぱりわたしがものを書く、創作をする上でもすごくこう、わたしの根っこになってる部分っていうのは、そこにあって。それがやっぱり児童書との相性がよかったのかなっていう感じは、すごくしているんです。はい。

 

カ：いやーなんか。あの、なんか、ちょっとこう、YouTubeをたくさんの人に見てもらうためには、面白くした方が見ていただけるかなと思って。

 

イ：笑。

 

カ：ちょっとなんか余計なことをいろいろ入れておしゃべりしてしまいましたけれど。やっぱりなかなかこういうインタビューって難しいなって風に思いました。で、あの、でもほんとうにこう、みくさんが書く根っこの姿勢っていうか、人間をとらえる時の多面性とか、何か重層性とか。何かそういうこともお話し今日うかがえて、私はもう、とてもこれは、あの、書き手にとって参考になる。あの、インタビュアーは勝手なことばっかり言ってましたけど。

 

イ：そんな（笑）。

 

カ：あの、すごく素晴らしいお話しをお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

イ：ありがとうございました。

 

 

しめの：いかがでしたでしょうか。もうほんとうにすごいお話でした。えっと、この対談をですね、わたしは本にしてほしいぐらいに、もうほんとうにあの、思ってしまって、あの、やっぱりわたしたちのバイブルというか、もうほんとうに宝物のようなお話が聞けました。ほんとうにありがとうございます。

さて、次回は、私たち日本児童文学者協会の作家ともご縁の深い、日本点字図書館さんへの取材の模様をお届けいたします。どうぞお楽しみに。

 

【プロフィール】

◇いとうみく

フリーライターを経て児童文学作家へ。

『糸子の体重計』でデビューし、日本児童文学者協会新人賞受賞。そのほか『朔と新』で野間児童文芸賞、『あしたの幸福』で河合隼雄物語賞、『ぼくんちのねこのはなし』で坪田譲治文学賞、2025年に『真実の口』で日本児童文学者協会賞を受賞。『かあちゃん取扱説明書』「車夫」シリーズ、『おねえちゃんって』シリーズなどが人気。その他、『あおのいえ』『蒼天のほし』など。最新刊は『空木の庭』（静山社）。全国児童文学同人誌連絡会「季節風」同人。

 

◇加藤純子（かとうじゅんこ）／聞き手

児童文学作家。

主な作品に、「初恋クレージーパズル」「モーツアルトの伝言」「家庭教師りん子さんが行く」（以上ポプラ社）、「仕事でハッピー」シリーズ（そうえん社）、「勾玉伝説」シリーズ（岩崎書店）、「母と娘が親友になれた日」（ポプラ社）で産経児童出版文化賞、「超高層マンション、暮らしてみれば」（講談社）、「荻野吟子」（あかね書房）、「アンネ・フランク」（ポプラ社）など伝記多数。他、監修した作品集、単行本も多数。作家デビューして45年になる。日本児童文学者協会副理事長。

 

 

しめの：では、せーの。

全員：またね～！