184、公開研究会が近づきました (2025,11,26)

理事長ブログ

【“オマージュ”のこと】

・前回に引き続き、一日遅れになりましたが、一昨日の24日、新美南吉童話賞の選考委員会で半田に行き、名古屋に一泊、昨晩帰りました。賞の結果は発表前なので書けませんが、前回は協会員のやまとそらさんがオマージュ部門の一番かつ全体の中の1点だけの最優秀賞でした。ただ、今回は、オマージュ部門がやや低調でした。

この童話賞は、一般の部と並んで、中学生の部や小学生(低と高)の部があることも特徴ですが、他のコンクールにない一番の特徴としては、南吉作品のオマージュという部門があることです。これも含め、入選作は冊子になり、その冒頭に、僕が総評を書くのですが、今回からその総評を記念館のホームページにも載せることになりました。

そこにも書くことになると思いますが、オマージュとは何か、というのは、改めて考えるとなかなか説明が難しいですね。近い言葉として「パロディ」があり、いずれも元の作品(文学作品とは限らず、絵画や映像作品なども)を下敷きにして、もう一つ別の世界を創り上げる、という手法ですが、パロディが、どちらかというと、元の作品を茶化すような感じがあるとすれば、オマージュは、元の作品への敬意というか、親しみを土台に、そして元の作品の登場人物やプロットや舞台背景などを一ひねりして、そのことで元の作品に別の角度から光を当て、その意味や魅力を伝える、とでもいう感じでしょうか。よく言われる例としては、「スター・ウォーズ」のC-3POとR2-D2のコンビは、黒澤明の「隠し砦の三悪人」の百姓コンビをヒントにしたオマージュ作品であるという話です。『日本児童文学』では、かつて宮沢賢治作品のオマージュ作品、新美南吉のオマージュ作品を募集し、特集にしたことがありました。それらも参考にしつつ、関心のある方は、(もちろん自由創作の部門でもいいわけですが)オマージュ作品に挑戦してみてほしいと思います。

・さて、選考委員会の席上のことですが、昨年から選考委員に加わっている村上しいこさんが、「藤田さん、テレビ鑑定団は見ますか?」と聞かれたので、「3回に1回くらいは見るかな」(事実、そういう感じなので)と答えたら、なんと明日(つまり、昨日・25日です)放送の鑑定団に、村上しいこさんが出るというのです。もちろん(?)鑑定する側ではなく、鑑定される側としてです。放送は終わってしまいましたが、確かBSで再放送があると思ったので、見たい方はチェックしてみてください。

【公開研究会が3日後です】

・さて、「公開研究会」は今週の土曜日に開催されます。東京とそれ以外の開催地で交互に開催しており、昨年は岡山でした。今年は東京開催の年で、リモートでも参加できます。詳しくは、このホームページのお知らせを参照していただければと思いますが、今年は戦後80年にちなんで、「“伝える”を考える~〈記憶〉の継承と児童文学の力~」がテーマです。児童文学というジャンルは、作者が大人、読者は子どもということで、本来的に「伝える」というモチーフを抱えていると思いますが、それをどう意識し、方法化するということは、逆に難しさも抱えていると思います。僕は、昨日の帰りの新幹線で、今回のパネラーとしてお招きしている原田勝さんが訳された『ヒトラーと暮らした少年』を読み返してきましたが、「なるほど、こんな伝え方もあるんだな」と、改めて目を開かされました。

折も折、初めての女性総理として支持率が高い高市首相が、いわゆる台湾有事に関して、「日本の存立危機事態になり得る」と明言しました。なんというか、自分が“主役”になったことに乗じて、パワーゲームに酔っている、としか思えません。そういう発言をする人が一国の首相になったことこそ、まさしく「危機事態」でしょう。

まだ申し込めます。ぜひ、公開研究会にご参加を!