182、『作家とランチ』が本になりました(2025,11,5)
【『日本児童文学』から】
・お知らせとしてはやや遅れてしまいましたが、『日本児童文学』に2023年から24年の二年間にわたって連載された「作家とランチ」が、本になりました。奥付は10月23日で、その日付で、協会のホームページには、すでにニュースとして掲載されています。サブタイトルが「インタビュー・児童文学の13人」で、雑誌に登場した12人に加えて、朽木祥さんへのインタビューを含め13人の書き手に、編集長の奧山さんや編集委員がインタビューしたものです。そして、巻末の解説は、僕が書かせてもらいました。(作家のラインナップなどは、そちらのニュースで。)
・よく「好評連載」とかいう言い方があって、「あれっ、これって好評だったの?」と微妙な感じがしたりするのですが、これはホントに「好評連載」でした。解説にも書いたのですが、こうした『日本児童文学』の連載企画がまとまって一冊の本になったのは前例があり、一度目の時もインタビュー集でした。この雑誌は1997年に月刊から隔月刊になったわけですが、まもなく始まったのが、「シリーズ・作家と語る」という企画で、やや断続的に4年間続き、佐藤さとる、あまんきみこ、松谷みよ子など11人の作家に、編集委員だった相原法則さんがインタビューしたものでした。相原さんは元偕成社の編集長で、担当した本の「児童文学者協会賞受賞数」はダントツのトップ、そして丘修三さんや岡田淳さん、さらに上橋菜穂子さんなどをデビューさせた名物編集長でした。
これを2002年ににっけん教育出版社から本として出版したのですが、連載で登場した作家は、あまりに大御所ぞろいで、もう少し若手を、ということで、さとうまきこさんとか上條さなえさんとか、当時の若手というか中堅の書き手に僕がインタビューしたものを加えて、『作家が語る わたしの児童文学15人』としたわけです。
・なので、僕も経験があり、インタビューする側の大変さはわかります。予め、どの作品のことをメインに語ってもらうかは打ち合わせである程度見当をつけたとしても、その本だけ読めばいいというものではありません。その書き手のエッセイとか、過去のインタビューなども、できるだけ目を通しておく必要があります。その大半は話題になることはないのですが、どんな話が飛び出しても対応できるように準備するということは、思っていた以上に大変なことでした。
・「作家とランチ」は、インタビュアーが奥山さんと、あと一人二人編集委員の誰かが同席するので、言わば“ツッコミ”が違った角度から寄せられるというおもしろさもありますが、なんといっても楽しいのは、「ランチしながら」という設定で、その場所は、基本的にインタビューを受ける作家の側の指定です。例えば、一人目の石川宏千花さんは、東京・駒場の近代文学館のカフェ、メニューは、村上春樹の「ハードボイルド・ワンダーランド」の朝食セットに寺田寅彦の牛乳コーヒーという具合。二人目の内田麟太郎さんは、レストランとかではなくて、JR立川駅で駅弁を買い、それを昭和記念公園で一緒に食べるという設定で、その外し方が、いかにも内田さんでした。
【この本の版元の】
・この本を出してくれたりょうゆう出版は、新しい出版社ですが、この社を起こしたのは、元々みくに出版という出版社の代表を務めていた安さんという方です。ここは日能研のテキストなども出していましたが、僕は古い付き合いで、安さんの紹介で、去年まで実施していた日能研の文芸コンクール(中高生対象)の選考委員もしていました。2、3年前には、奥山恵さんの『多層性のレッスン』という本を出すなど、児童文学への目配りの利く出版社です。この本も、新書版のハンディな造りで、連載時はカラーは使えなかったわけですが、今回はインタビューに使ったお店や料理の写真が、カラーで掲載されています。
解説の最後にも書いたのですが、ここに登場するお店に行ってみて、本に出てくるメニューを食べて回るのも一興かもしれません。値段は1800円、デザート付きなら、ランチ程度ということになるでしょうか。僕の地元の図書館にも入っていました。図書館に行った折には、ぜひリクエストしてください。