【報告】オンライン交流会「ヨーロッパの平和教育 -戦争児童文学を通して―」 成實朋子

国際部

国際部主催オンライン交流会「ヨーロッパの平和教育 -戦争児童文学を通して―」が、8月25日 午後7時から行われました。今回は、特にドイツとオランダに焦点をあて、繁内理恵さんの司会のもと、国際部部員の中から、大橋珠美・朽木祥・野坂悦子(敬称略)からの報告があり、その後質疑応答が行われました。

まずは大橋さんからドイツの児童文学についての報告。大橋さんによれば、ドイツの小学校では生きることを肯定的に描いた作品に出合いながら、過酷な現実に向き合うことが、意識されているということでした。紹介された作品の中では、エーリッヒ・オーザーの『おとうさんとぼく』が特に印象に残りました。オーザーについて、絵は見たことはあったけど、彼自身を意識したことは無かったように思います。これを機に読んでみようと思いました。

朽木祥さんは、IBBYのホワイトレイブンフェスティバルによりドイツのミュンヘンの図書館に招聘された際の経験を報告されました。学校を訪れるキャラバンだったそうで、主としてギムナジウムを訪問されたそうです。ドイツでは徹底した平和教育が行われていることで、参加した子どもたちからは、現代につながる具体的な質問が飛んできたとのこと。ウクライナ侵攻の年であったせいでもあるのでしょう。ドイツの子どもたちが戦争を「自分事」としてとらえているということがよく分かりました。

最後の報告者は、オランダ語の翻訳者である野坂悦子さん。オランダといえば「アンネの日記」ですが、今回紹介されたものの中では、『レオがのこしたこと』(マルティネ・レテリー、静山社)が印象に残りました。これはヴェステルボルクという町から連れていかれたユダヤ人の少年のことを書いたもので、オランダではこうした作品を用いて、小学校段階から、ホロコーストのことなどがしっかり教えられているということでした。オランダでは国が費用の一部を負担して作家センターが運営され、学校や図書館からのニーズに応えて作家が派遣されるということ。実にうらやましいシステムです。

お三方の報告の後に、河野孝之さんの司会で、質疑応答があり、活発なやりとりがありました。リヒターの『あの頃はフリードリッヒがいた』をどう評価するのかについての質問もあり、参加者からの疑問や議論は尽きませんでした。ヨーロッパの事例を通じて、これまでの戦争児童文学をどう考えるのか、これからの戦争児童文学をどう考えるのかという良い機会になったように思います。

全体で、国際部メンバーもふくめて約42名の参加者があり、盛会のうちに終了しました。