動画第五回目「作家が作家に…いとうみく×しめのゆき」全文起こし2/3 ふたつ目の質問

子どもと読書の委員会

動画の文字起こしを三回にわけてアップしていきます。今回はいとうみくさんインタビューの文字起こし二回目です。

一回目の文字起こしを見てくださった方がいらしたら、思われたかもしれません。

いつもより長い? って。

そうなんです、じつは。でも動画をみてくださるとわかるのですが、まったく長さを感じないのです。不思議なのですが、そうなんです! ぜひ、確かめてみてくださいね!

前回のクイズの答えは次回!

(文=しめのゆき)

 

※無断転載やご使用はご遠慮ください。

●いとうみく×しめのゆき(聞き手)

●『つくしちゃんとながれぼし』(いとうみく・作 丹地陽子・絵 福音館書店)

◇動画作成/ほんまちひろ

 

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【ふたつめの質問】

 

シ:はい、ではふたつ目の質問です。えっと、この本にはですね、あの、さっき言ったように、3つの話が入っています。で、ちょっとだいぶ私の感想になってしまうんですけれども、第1話でですね、登場する男の子が、えっと、思いもよらない意外な一面があってですね。最初登場したとき、う~ん、何かちょっと。

 

イ:ふふ。

 

シ:ちょっと無理かもって思った男の子がすごい大好きになってしまって。そのマジックは何だ? すごいな! と、思ってしまったんですね。ほかのところにも「えっ?」と思うような意外性がたくさん散りばめられていて、えっと、どんな場面で意外性、というか、意外だな! って思うところを使ってくるんだろう、って。ちょっと難しい質問かもしれないんですけど、使いどころをね、教えていただけたらと思います。

 

イ:はい、そうですね。使いどころっていうのは、わからないんですけれども、あの、やっぱり意外性を探して書いてると思うんです、私が。

 

シ:はいはい。

 

イ:だから最初にえっと、あの男の子……いわくら君でしたっけ?

 

シ:はい、いわくら君です

 

イ:ですよね。すみません(笑)、書いていて自分で忘れるというね。いわくら君も、そういう意外性があると思って書いているわけじゃないんですね。全然。で、あの、つくしちゃんがやられてイヤな事する男の子、クラスにいるじゃないですか。私も何かこう、後ろの子が何かやたらつっついてきたりとかして、すごいイヤだとか思ってた小学生のときがあったんですけれども。

何かそういう、そのいわくら君の、みたいな、何かこう、つくしちゃんにとってイヤな子、みたいなのを最初に出していって、書いているうちに、なにかこの子にも事情があったんじゃないかな、とかっていうことを書きながら考えていくと、ああ、こういう一面があったんだな、その意地悪でやっていたわけではないんだな。といっても、つくしちゃんにとってイヤなことだし、ほんとうに迷惑なことなんですけれども。でも、何か、そういういわくら君の一面を、つくしちゃんが見ることで、ちょっとだけ、とらえ方が変わる。いわくら君のことを知ることによって、つくしちゃんもちょっとだけ変わるっていう。

何かそういうこう、作用……、人と人が出会う作用みたいなものが面白いなーっていうふうに思っている。それが多分、そのしめのさんが今おっしゃっていた「意外性の使いどころ」っていう、そういうところ。あの、だから意識しては作ってはいないんですけれども、何か、そういうものを探そうとしている。うん、物語を書くときに。それがどっかに必ず頭の中にあって。この人の意外性とか、私が見えてない思っていない一面って何だろうか? っていう。あの、それは私はよく「人を知りたい」ってことで言うんですけれども。書いている人物を知りたいな、と思って書いていくと、そういう一面が、「あっそうだ!」っていうようなところに着地していくのかなっていうふうな感じはします。

 

シ:なるほどです。で、その意外性はやっぱり私みたいなのとちょっと違うなと思ったのは、何回読んでも意外なんですよ。

 

イ:あ、そうですか。

 

シ:そうなの、だから、話を知っちゃった後で、ここでこうなるんだよなっていう風に自分の頭の中で思っていても、くると「意外だな」って思う。

 

イ:ああ……。

 

シ:何かだからその自分の思う「意外」って多分自分本人(しめの)のオリジナルだと思うんですけど、それと全く違うところに来るんです。だからいつでも新鮮なんだと思うんです。

 

イ:それは嬉しいです。

 

シ:だから、みくさんの本がいつも「はっ!」て思うのは、おそらくそこなんだと思うんですよね。

 

イ:そうですか。

 

シ:だから同じように「おもち」(第二話)もウソでしょって思ったし……、おもち、ここで帰ります? って思ったし。

 

イ:うんうんうんうん。

 

シ:いちばん不思議だったのは、あれですよ。帯に書いてありますよ。帯に書いてあるから言っても大丈夫!

 

イ:どうぞどうぞ。

 

シ:土手でトランペット吹く真似をしてる男の人がいるっていうのが、何で? と思って。不思議でしたね~。

 

イ:あれはね、私もね、わかんないです。トランペットを持って、吹く形はしてるんだけれども、でも音は出してないんですね。吹く真似だけしてるんですけど。そういう、何かこう、周りの身近なところでも、「何なんだろう、あの人?」っていう人、いません?

 

シ:いる~。変な人ね。

 

イ:何かすごい変なかっこうしてたりとか。何か理解できない行動してる人とか。何かそういうこう不思議な人、みたいなものは、だから何か、分からないままでもいいや、って思っていて。

 

シ:うんうん。

 

イ:ただ何か、その人をきっかけに、あの、子どもたちが想像をふくらませていく。

 

シ:はい。

 

イ:つくしちゃんだったりとか。うみちゃんだっけ?

 

シ:はい、うみちゃんですね。

 

イ:うみちゃんですよね。そう、名前を途中で変えたからね、わからなくなっちゃった。

 

シ:そうなんですね。

 

イ:うん、うみちゃん。うみちゃんの、あのう何か、背景にあるもの、みたいなものが感じることができるとかね。だから、そのトランペット吹く真似をしているおじさんの話を全然書いてるわけじゃないので。

 

シ:うん。

 

イ:うん。それが日常の中にあるひとつの場面として。また、そこでそのその人を見ることによって、つくしちゃんたちがやっぱり何かを感じていくって、その感じ方がどんな感じをもつのか? とか。何かそういうこう、そこが私にとって発見なんです。

 

シ:あーすごーい。そうなんですね。じゃあ、あのふえ? ふえおとこ?

 

イ:ふえおとこ。

 

シ:はい。最初から、ふえおとこを出そうと思ったわけではない? もしかして。

 

イ:えっとね。それは、ふえおとこからきたんですね。「変な人がいる」みたいな。でも何かおとなから見ると、「近寄っちゃダメよ」とか何か言いたくなるじゃないですか。

 

シ:あるあるある。

 

イ:ちょっと危ない人なのかな、みたいな。だけど、つくしちゃんたちは、そんなこと思ってなくて。ふえおとこ、とか言って、何かあの、学校でも話題になってる、ちょっと変なおじさんみたいな感じで見てて。あの、ネガティブイメージはそんなに。つくしちゃんも、変わってるなとか、何でだろうと思ってるんでしょうけど、それほど何か怖い人と思ってみてない。うん。あの、今ね、そういろんな事件があるので、あの、誰にでもあの、何ていうのかな、心を開いてくださいとは、大きな声で言えないのが残念なんですけれども。

 

シ:そうですね。

 

イ:でも、何か、前提としては、人っていいものだって思いたいっていう気持ちはあるんですね、私のなかには。

 

シ:はい。

 

イ:うん。でも、やっぱりこう、児童書であるし。あの、それほんとうに真似されて何かあったら困るから、編集の方がそこは、「そこはちょっとお母さんがもうちょっと心配した方が良いんじゃないでしょうか」みたいな。

 

シ:ああ。

 

イ:アドバイスがあって。まあ確かにそうだなと思って。若干そこはあの、お母さんが心配してるみたいなところを、ちょっと強めには入れましたけれども。

 

シ:はい。

 

イ:そんな感じなんです。

 

シ:そうなんですね。そっか。そこから想像していく子どもたちの想像力が素敵なんですよね。どう素敵なのかは、ちょっと本を読んでもらう感じにしてもらって。

 

イ:はい。

 

シ:そこは言わないことに。

 

イ:ぜひぜひ、読んでください。

 

シ:はい、(本を読んでもらうことに)したいと思います。