動画第五回目「作家が作家に…いとうみく×しめのゆき」全文起こし1/3 ひとつ目の質問

子どもと読書の委員会

おでんプロジェクト動画、第五回目の今回、いとうみくさんのインタビューでしたが、もうご視聴いただいてますでしょうか?

さてここで、いきなりクイズです。

Q1)いというみくさんが、缶に集めているものは、なんでしょう?

Q2)今回話題にしている本の中に「ふえおとこ」なる人が登場します。この場合の「ふえ」とは、なんでしょう?

Q3)いとうみくさんは、「いわゆる猫好き」?

答えは、文字起こし第三回目で!

 

では、インタビューの模様の全文を3回にわけて掲載していきます。

(文=しめのゆき)

 

※無断転載やご使用はご遠慮ください。

●いとうみく×しめのゆき(聞き手)

●『つくしちゃんとながれぼし』(いとうみく・作 丹地陽子・絵 福音館書店)

◇動画作成/ほんまちひろ

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タイトルコール

作家が作家にきいてみた おでんの具は なにがいいですか?

 

【はじめに】

押川理佐:みなさま、こんにちは。日本児童文学者協会、子どもと読書の委員会です。子どもの本を書く作家って、どんな人たちなんだろう?

その秘密を、作家同士のおしゃべりの中から探る新企画!

『作家が作家にきいてみた おでんの具はなにがいいですか?』

 

第5回目の秘密を語ってくださるのは、児童文学作家のいとうみくさん。聞いてくださるのは、同じく児童文学作家のしめのゆきさんです。

では、しめのさん、お願いいたします。

 

しめのゆき(以下シ):はい。今日のインタビュアーのしめのゆきです。今日はね、とっても楽しみにしてきました。どうぞよろしくお願いいたします。

さて、今日ご紹介するのはですね、こちらの本です。

『つくしちゃんとながれぼし』いとうみく・作、丹地陽子・絵、福音館書店から出版されています。

これはですね、2021年にこちらの『つくしちゃんとおねえちゃん』という本が同じ出版社から出版されていて、今日ご紹介する本はですね、こちらの第二弾ということになっています。

 

【表紙の紹介】

シ:はい。ここでちょっと表紙を紹介したいと思います。

真ん中には主人公のつくしちゃんですね。つくしちゃんの背景には、星空が広がっていて、流れ星が落ちてきています。つくしちゃんは横断歩道を渡りながら、ちょっとびっくりしたように目の前に流れてきた流れ星を見つめています。足元にはですね、モフモフ猫のおもち。やっぱり流れ星を見ています。

 

【ひとつめの質問】

シ:この本を書いてくださった、いとうみくさんに、今日はいくつかの質問をさせていただきたいと思います。いとうさん、よろしいでしょうか?

 

いとうみく(以下イ):はい。どうぞよろしくお願いします。

 

シ:では、ひとつめの質問です。えー主人公のつくしちゃんは、小学校2年生で小学校4年生の楓ちゃんというおねえちゃんがいます。ふたりの様子は、えっと、先ほど紹介した『つくしちゃんとおねえちゃん』という本に、詳しいわけなんですけれど、これがですね、あの、仲が良すぎず。

 

イ:ふふ。

 

シ:でも悪すぎず。すごくね、何かいいな、絶妙な関係だなあ、っていうふうに私はね、思ったんですね。だから、もしかしたらこの2人にはモデルがいるのかしら? と、思ったんですが、その辺をおききしてもいいでしょうか。

 

イ:はい。えっとですね、モデルは、一言でいうと、一問一答でいうと、いないです。

 

シ:あ、いない。

 

イ:いない。それであの私が書く物語って、基本的にはモデルはいないんですね、どれも。ただその、えっと、つくしちゃんであったりとか、おねえちゃんであったりは、その性格とか、そういうものっていうのは、書き手の私の中にある、何かこうカケラのようなものが、どちらにもやっぱり入っては、いるのかな、っていうふうに思っています。それはその、意識的にやってるわけじゃなくて、人をこう書いていくっていうのは、そのやっぱ作者の一部みたいなものが入りこんでいくものなんじゃないかなっていうふうに思うんですね。で、あの、この『つくしちゃんとながれぼし』の前になったのは『つくしちゃんとおねえちゃん』ですけれども。

えっと。よく、これを読んでくれた方の、大人の方の意見とか感想なんですけれども、そのどこにでもいる普通の子どもを描いている、というような感想をいただいて。まあ、その通りだとは思うんですね。

でも、私は普通の子を書いたつもりはまったくなくて。えっと、つくしちゃん、っていう女の子を書いたわけなんです。それはその、えっと、何て言うんだろうな。んと、おねえちゃんがね、つくしちゃんのおねえちゃんは、足がちょっと不自由で、歩くとき、ちょっと引きずるみたいな。そういう子なんですけれども。

それを書く時も、その、何ていうのかな、障がいのある子を書こうっていうわけではなくて、おねえちゃんっていうひとりの女の子、その子には、その、足が不自由だっていうような特性がひとつある。その特性をもったことで、この子……、「おねえちゃん」っていうのは、「つくしちゃんのおねえちゃん」の場合は、ですけれども、えっと、負けん気であったりとか、えー頑張り屋さんであったりだとか、やっぱりこう、足が不自由だからっていって、できないことがあるんじゃなくて、仕方がないんじゃなくて、人一倍頑張っちゃう女の子っていうような、個別性の個なんですけれども。

えっと、これがね、同じように足に障がいがあるっていう女の子を書いた場合でも、このつくしちゃんのおねえちゃんじゃない子を書いた場合には、そうじゃない場合もあるんですね。やっぱりその、足に障がいがあることをすごくこう、マイナスにとらえてしまって卑屈になってしまう場合もあるんじゃないかと。

 

シ:ああ。

 

イ:でも、あの。このおねえちゃんの場合は、頑張っちゃうほうに、性格的になっていくんですけども。

それっていうのは、持って生まれた性格もあれば、んっと、生活してる環境であったりだとか、家族関係だったりとか、いろんな要素が加わって、ひとりのかえでちゃんという女の子ができあがってるわけなんですけれども。それと、あのつくしちゃんもいっしょなんですね。だから、とってもどこにでもいる普通の女の子に見えるんだけれども、同じ子はいないし、つくしちゃんという、あの、オリジナルな、あの、個別をもった女の子を書いたつもりでいます。

 

シ:あ、なるほどです。なんかね、あの、読んでいて、ふたりともすごくナチュラルなんですよね。

 

イ:ふふ。

 

シ:で、なんだろう。飾ってないというか、何も脚色されてない感じがしていて。でもね、ふたりとも姉妹だなと思うんですよ。同じような匂いがするの、なんだろう。脚色されていなくて、ふたりはまるで別人なのに、同じ家族の匂いがするんです。

 

イ:ありがとうございます。

 

シ:そこ、すごいなあと思って。いや、だから、モデルがいるのかしらって、ちらっと思ってしまった。

 

イ:たぶん、何かね、あのう、日常を書いているからかなと思うんですね。何かその、この物語って、全然大きな出来事があるわけでもないし、日常の物語じゃないですか。

 

シ:ええ。

 

イ:だからそのへんでその、んと何だろう。日常を書いていくと、やっぱりその家族、何だろう何て言えばいいんだろう。家族ってやっぱり日常の……

 

シ:ああ、そうですよね。

 

イ:延長にあるものなので、そのへんで、あの、姉妹感みたいなものを感じてもらえたのは、そのへんなのかなという感じは、そうですね。

 

シ:でも、ここで突っ込んでいいのかどうかわからないんですけど。あの……家族、たくさんの家族を書いてらっしゃるじゃないですか。

 

イ:うんうん。

 

シ:その家族、その家族なりの姿があるのは、あの、何だろうな、こういう家族を書こうと思って書かれるんですか。

 

イ:えっと、そうでもないんですけれども。でも、何となく書く前提には、ギクシャクしている家庭なのかとか。あとシングルで、あのお母さんとふたりで暮らしてるのかとか。まあ、いろんなパターンがありますよね。

 

シ:はい。

 

イ:家族って、もうほんとうにこう、同じ家族は全然ないので、そこが何か書いていて面白いところなんですけれども。ほんと書きながら、この子、こういう性格の子、みたいなものができあがっていったのは、どういう背景があるのかっていうことを、あの考えながら書いていく。で、書いていくうちに、あー、こういうことがあったから、この子って、こういうこと言っちゃうんだなとか、お母さんはこうなんだなとか、お父さん存在感ないんだなとか。

 

シ:ははは。

 

イ:いろんな、んーなんかあの、パターン? パターンっていうか、いろんな家族の姿みたいなものが見えてくる。うん、それがちょっと見たい。私も興味があるところではあるんです。

 

シ:あの、つくしちゃんとおねえちゃんの場合は、何だろうな、おねえちゃんは決してアドバイスしないんですよね。アドバイスはしてない。でも、絶妙なところでなにかこう、ひとこと言うんですよね。

 

イ:ふふふ。

 

シ:つくしちゃんのほうも、おねえちゃんにアドバイスを求めてないんですよ。別にきこうと思ってるわけじゃないんだけど、何かそのひとことに、ハッと思うところがあって。そのね、やりとりがね、すごく楽しいんですよ。

 

イ:ああ。わたしもね、つくしちゃんも好きなんですけど、おねえちゃんが大好きなんです。

 

シ:あ~わかる~。

 

イ:そう、何か、えっと、何ていうんだろう。ちょっと意地悪っぽいんだけれども、でも何かこう、ほんとうはちゃんと妹のことも好きだし。イライラもしてみたりとか。やっぱりその、他人だったらどうでもいいってとこって、いっぱいあるじゃないですか。

 

シ:はい、そうですよね。

 

イ:ちょっとトロかったりとかしても、まあかわいいよね、とか。まあいいよね、みたいな感じになるんだけれども。妹だからこそ、おい、ちゃんとやってやれよみたいなこととか、しっかりしてよと思っちゃうこととか、イライラしてくるようなところ。そんなところが、おねえちゃんのリアルなのかな、っていうふうな感じがして、あの、気にいってるんですよ。

 

シ:それで、おふたりにはモデルがいるのかなって思ったのと同じようにですね。えっと、こちらの本って3つのお話が入っているんですね。

 

イ:はい。

 

シ:で、真ん中にですね、「おもち」っていうタイトルの、猫のお話が出てきてるんですけど、それってやっぱりあの、作者さんが猫好きだよな~と思って。

 

イ:ふふ。

 

シ:猫の本、たくさん出てるしな~って思って。猫の話、聞いてもいいですか?

 

イ:はい、ぜひ。ふふ。

 

シ:ふふ。

 

イ:あの、うちは、あの前に飼っていた猫が、あの2020年だから、5年前に亡くなってしまったんですね。

 

シ:そうなんですね!

 

イ:そう。それでもう絶対もう、猫なんて飼わない動物はもう飼わない、っていう風に思ってて。あの、いたんですけれども。もう半年も経たないうちに、もうさびしくなってきちゃって、猫の動画ばっかり見るようになっちゃったんですよ。SNSとか。

 

シ:たくさんありますよね。

 

イ:YouTubeとかね、そういうので見てて。そのうちにやっぱり、猫さんをお迎えしようかな、なんていうふうに思って。それであの保護猫をふたり、お迎えをして。まさか2匹飼うとは思わなかったんですけれども、今おうちにいるんですけど。

 

シ:じゃあ、そのへんに……。

イ:そんな感じで。でもね、私、いわゆる猫好きじゃ全然ないんですね。

シ:あ、そうなんですね。

イ:そう、あの猫好きな人ってもうほんとうに好きじゃないですか?

シ:はいはい。

イ:私そんなでもなくて。だから何か、猫好きとか、優しい人、って思われると、いや違いますみたいな感じが。

シ:ははは、そうなんですか。

イ:するので。

 

シ:うん。うん。何かあの。この「おもち」の最後に……ネタバレ? ネタバレになるかな……?

イ:いいですよ。

シ:ネタバレだったらカットしてくださいね。あの。ひげが落ちてるじゃないですか。

イ:うんうんうん。

シ:いや、これって飼ってないと、わかんないよなーと思って。あーこの猫ひげピーンってすごい、いいなあと思って。

イ:うんうん。

シ:何か、それを拾ったっていうのが。

イ:そうそうそう。

シ:あれは? やっぱり、落ちてます?

イ:落ちてるんですよ。それで、私、あの、猫のひげは、あの、集めてるんですね。

シ:え、ほんとですか?

イ:そう、あの、缶の中に。

シ:捨てないの?

イ:うん。猫のヒゲって、毛と全然違って。すごい張りがあって、何て言うんだろう。ほんと、この絵に書いて下さったような、すごく存在感があるんです。

シ:えー。

イ:そう。それで、あの、ときどき、まあ基本は拾おうと思ってたんですけど、面倒くさいなと思って、掃除機で吸おうとしたんですよね。けど、吸えないの、何か。

シ:え、そうなんだ! あれって。

イ:吸い上げてくれない、何かね、張りをもってる。

シ:え。そうなんですね。そっか。

 

イ:欲しいですか。猫のヒゲ。いらないか。

シ:ハッピーアイテムなんですよね。

イ:そうなんです。あげましょうか? いらないか(笑)。

シ:ほしい!

イ:ほんとうに? じゃあ、今度。

シ:その先に「いとうみく」って書いてもらって。

イ:(笑)