176、『童話作家のアイウエオ』そして、斎藤隆介展(2025,9,5)
【まずは、『童話作家のアイウエオ』が出ました】
・このブログでも何度か書きましたが、僕の久しぶりの新刊『童話作家のアイウエオ~現代児童文学を創る50人の作家たち~』(文溪堂)が出ました。ネットでは「9月5日発売」、つまり今日の発刊ということで、案内が出ています。
前に書いたことと重なると思いますが、この本で苦労した、というか、困った、というのも変なのですが、やはり50人をどう選ぶかというのがこの本の眼目でもあるので、一番神経を使ったことかも知れません。本の前書きにも書いたのですが、図書館の児童書の棚は、作家の50音順に並んでいるのに、児童文学の作家の名前というのは、意外に知られていません。那須正幹と言ってもわからなくても『ズッコケ三人組』と言えばわかりますし、あまんきみこの名前がわからなくても、「教科書に出てた「白いぼうし」の作者」と言えば、「ああ、そうか」ということになります。
この本を具体的に構想したのは数年前なので、人選がちょっと古いかもしれませんが、改めていくつかの図書館を見て回って、本の数が多い作家を選んだつもりです。ですから、那須さんもそうですが、安房直子さん、寺村輝夫さん、佐藤さとるさん、宮川ひろさんなど、物故作家もそれなりに入っています。僕もこの世界が長いですから、50人のうち一度も会ったことがないという人はほとんどなく、言葉を交わしたことがある人の割合も9割くらいにはなるでしょうか。そんなエピソードも交えての一冊です。図書館にはこれからぼちぼち入ると思いますが、目を通していただければうれしいです。
【明日、秋田に行きます】
・これも何度も書きましたが、あきた文学資料館の斎藤隆介展が3日から始まっていて、7日(日)に僕が講演をするので、明日、秋田に向かいます。今日は大雨で、秋田も注意報が出ているようで、明日大丈夫なことを祈ります。
このところいろいろあって、講演の準備が遅くなり、昨日、斎藤隆介の「最後の作品」(未完成の作品でもあります)である「爆走」を読むために、久喜市の県立図書館に行ってきました。これは、親地連の雑誌『親子読書』(今は『子どもと読書』に改題されています)の1979年12月号から、80年6月号まで、7回にわたって連載されたもので、僕も当時ちらちらと見てはいましたが、今回の講演に当たって、斎藤隆介の最後の作品についてきちんと話さなければと、いかにも泥縄なのですが、この雑誌がそろっている県立図書館まで行ったという次第です。
この作品は、それまでの斎藤隆介の作品とちがって、創作民話や歴史ものではなく、“現代もの”で、レーシング・ドライバーの福沢幸雄のテストコースでの死亡事故が題材になっています。この事故は1969年に、トヨタのレーシングカーのテスト走行で起こったもので、福沢は福沢諭吉の曽孫という話題性もあって、ご記憶の方もいらっしゃるかもしれません。幸雄の父は、諭吉の孫にあたる慶応大学の教授、母親はギリシャ生まれの歌手でした。この事件については、ルポライターの青木慧が『福沢幸雄事件~トヨタを告発する~』(汐文社)という本を出していて、事故についてトヨタ側はドライバーのミスとし、これに対して遺族は、車やコースの側、つまりトヨタ側に責任があるとして、争われました。
斎藤隆介が、この事件の何に惹かれ、どういう結末にしようとしたかは、残念ながらわかりません。ただ、改めて7回の連載を読んで、60代にして、「新しい斎藤隆介」に脱皮しようとしていた彼の思いを改めて感じ取りました。そんなことも含め、「八郎」のふるさと・秋田で、斎藤隆介について話してきます。