動画第四回目「作家が作家に…加藤純子×押川理佐」全文起こし2/3 ひとつめの質問

子どもと読書の委員会

今回の全文起こしは、①紙芝居の紹介 ②ひとつ目の質問まで ③ふたつ目~ラストまで

としたいと思っています。この四回目で話題にしているのは、紙芝居。紙芝居に子どもたちが夢中になる秘密が、わかるんですよ。実演もみどころのひとつ!

とはいえ、文字だけでも、十分に読みごたえがあるんですよ!

※無断転載やご使用はご遠慮ください。

●加藤純子×押川理佐(聞き手)

●『とべとべ たかく』(たけがみたえ・絵 童心社)

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(カ:って、なってるんですよ。で、あの、この幼年型っていうのは、最初は年長さんの紙芝居を、まあ作ったことあるんですけれど。ストーリーで読ませていく紙芝居で。これは、あの、読んでもらっている子どもたちが、一緒に参加してくれる紙芝居ってことなんですね。)←ここまで前回で掲載

【ひとつめの質問】

オ:なるほど。

カ:それで、あの、やっぱり書き手がで、こういう飛ぶっていうことをテーマにして。えっと、なんかバッタとか。好きでもない生き物を選んだのかとかね。

オ:そうなんですね。

カ:なんかそういうことをお話した方が。

オ:ぜひうかがわせてください。

カ:参考になるのかなって思ってます。

オ:生き物は苦手なんですか? 先生は。

カ:私ね、あの、犬に、子どものころ噛まれたことがあるんです。

オ:あららら。そっかあ。

カ:それから。うちお正月とか夏とか来るんですけど、ちっちゃい犬が。その子は、なんか知らないけど、私の顔こうやって見てるから。あの、「ピーちゃん」とかっていって、あの、話しかけて。そうすると、私が何かくれるのを「ちょうだいちょうだいちょうだい」っていうので、なじんでるんですけど。

 

カ:子どものころは、祖母とか母とかみんなで、猫飼ってたんです。これもう私、大嫌いで。もうね、私。そしたらね、私の部屋の机の上に、あの、教科書出しっぱなしにして学校行ったらおしっこされちゃったんです。

オ:ああ、おしっこ。

カ:猫のおしっこって臭くてね。

オ:確かにね。

カ:教科書使えなくて。

オ:あーそっか。

カ:買いましたけれど。

オ:なるほど。

カ:もうそれぐらい嫌いなんですね。だけれど、なぜじゃあそんな生き物をあと書いたかっていうと。

オ:ええ、ええ、苦手なのにね。

カ:あの。この仕事部屋っていうのは、すごく不思議な、あの、引き寄せ能力、っていうのがあるんですよ。

オ:今いらっしゃるところが、仕事場、お仕事部屋なんですね? はいはい。

カ:引き寄せ能力ってのがあって。

オ:引き寄せ能力。

カ:20階なのにいろんなものが来るんですよ。

オ:20階、マンションの20階にお住まいなんですね。

カ:そうなんです。それでね、あの、夏、あのエアコン消して、窓を開けたら、ゴキブリがね。ぴょーん!って飛んできたの。

オ:ははは、それは嬉しくない。

カ:部屋の中に。

オ:なるほど。

カ:もう、びっくりしてね。それから出てきたのが、鳩!

オ:えっ、鳩?

カ:鳩がもう年中、この私のベランダの横にいるんですよ。私の部屋じゃないんですけれど。家族がだれもいない、私一人で仕事部屋にいるときに。うち、あのフローリングじゃなくて、全部がカーペットなんです。廊下とか全部がね。

オ:全部が。

カ:そうしたら、リビングの方から、コツ…コツ…って。

オ:え? え?

カ:足音がするんです。

オ:怖い話じゃないですか。

カ:それで私も怖くて、おそるおそる見に行ったんです。そしたら鳩が歩いてたんです。

オ:ええ!

カ:リビングをコツ、コツ……。

オ:そんな足音するんですか? 鳩って。

カ:そうなんですよ。それでね、顔があったんです。鳩と。

オ:ははは、目が合っちゃった、鳩と。

カ:それで私が「キャ!」っていったら、鳩がその声に驚いて、天井までバタバタバタって逃げて。私がまた「キャッ!」っていったら、またバタバタバタって。それがほんとうに大変だったんですよ。で、やっとあの和室の方から逃げてもらったんですね。

オ:逃げて。

 

カ:次がバッタです。バッタが……

 

カ:パッと見たら私のこの窓ガラスですよ。

オ:窓ガラス、はい。

カ:窓ガラスに、こう(バッタの足の形のジェスチャーをしながら)、こうくっついてるんですよ、バッタが。

オ:いろんなものが。

カ:え、なんでバッタが窓ガラスに付いてるの? って思って、私、ちょっと不安になって調べたんですよ。そしたら、あの爪の間に吸盤が、バッタっていうのはあって。

オ:ああ、なるほど。

カ:その器官で植物の葉っぱとか茎につかまれる。

オ:ああ、そうなんですか?

カ:だから、この窓ガラスにも、その吸盤で。

それで私、いや、これ嫌だな、どうしようと思って。それで私、もし下に落としたら死んじゃうかしらって、思ったんですよ。で、また調べたら、バッタってね、あの、すごいジャンプ力があって。

それであの。後ろ足の関節がバネになってて。

オ:ああ。この絵の感じですね。

カ:レジリっていうタンパク質があるんです。だからあの、衝撃を、落ちてもクッションみたいにできる。

オ:うーん。なるほど。

カ:で、あのね、ひゃ~~んって飛んでいきました。

オ:ひゃ~~~んって。

カ:だけど20階だから。ひゃ~って飛んでったものの、下の草むらで気絶してるんじゃないかなっていう不安がありました。でも、気になっちゃって。あれ、下で目を回して気絶してないかしらとかね。すっごい気になっちゃって。その頃ちょうどね、ここが物書きのすごい図々しいところなんだなあって私思うんですけれどね。あの、たまたまあのPHP研究所ってありますよね。

オ:はいはい。

カ:編集者がうちにきて、このタイトルで(本を掲げる)。

本を監修して、私も書いて作ってくれって。

オ:『頭がよくなる10の力を伸ばすお話』。

カ:それで、それがね、みたら2013年(この本の初版の年)、16刷もいってるんですよ。

オ:すごい、すごいですね。

カ:私そこにね『バッタのトム、空を飛ぶ』

オ:あー、バッタのトム。

カ:こういうところが、作家って、すごい、なんか、したたかなんだなって。

で、このバッタのこと。書いたんです。この本に。

オ:なるほど、ええ、ええ。

カ:それでまた今度、幼年の紙芝居をね。

オ:はい、「とべとべ…」、今回の。

カ:またここでも使ったっていう。

オ:えー、えー、えー。

カ:すごいでしょ。

オ:すごいです! えー、なるほど。でもバッタもねえ。

カ:でも、大丈夫だと思うんですけど。

オ:確認はしてないですね。そこはね。

カ:でも下まで行かれないから。ただ、作品には。ちゃんとこの不安があったので、書かせていただきました。2つ。

オ:2つもね。

カ:だからあの、なんかなかなか、やっぱりそういうところ、書き手っていうのは、どんなものでも作品にしちゃうっていう、したたかさがあるんだな、っていうお話です。