動画第三回目「作家が作家に…松本聰美×いとうみく」全文起こし1/3 ひとつめの質問

子どもと読書の委員会

こんにちは! さて、「作家が作家にきいてみた」動画、ご覧になっていただけてますか?

我々はこの動画を「おでん」と呼んでいるのですが、ここまでに三人がおでんの具を回答しています。なんだったら、収録だけはすでに五回分を終えています。不思議なことに、ひとつもまだ、だぶってないのです!!

いや、そんなたいしたことではない? かもしれないのですが、それだって、人と同じことは答えないという作家魂か……? なんて、しめのは思ったりして。具の選択だって、個性ですもんね^^

では、インタビューの模様の全文を3回にわけて掲載していきます。

今回は第1の質問とそのお答えまで。読んで楽しんでいただけたらうれしいです。

※無断転載やご使用はご遠慮ください。

●松本聰美×いとうみく(聞き手)

●『金色の約束』(黒須高嶺・絵 国土社)

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はじまりのタイトルコール

 

作家が作家にきいてみた!

おでんの具はなにがいいですか?

 

しめのゆき:みなさま、こんにちは。日本児童文学者協会、子どもと読書の委員会です。子どもの本を書く作家って、どんな人たちなんだろう?

その秘密を作家同士のおしゃべりの中から探る新企画。

『作家が作家に聞いてみた! おでんの具は何がいいですか?』

 

第3回目の秘密を語ってくださるのは、児童文学作家の松本聰美さん。きいてくださるのは、同じく児童文学作家のいとうみくさんです。

では、いとうさん、お願いいたします。

 

いとうみく(以下イ):はい。インタビュアーのいとうみくです。

今回ご紹介するのは、松本聰美さん作の『金色の約束』。

絵はですね、黒須高嶺さん。国土社さんから出版されている本です。

 

表紙の紹介

 

イ:表紙にはですね、ウェーダーを履いている少年が2人。めちゃくちゃいい表情で小さな小瓶をこう、掲げているイラストが描いているんですね。

ほんとに、カメラのフィルムケース? ちょっと今の子どもさん達には、フィルムケース、イメージ無いかもしれないんですけど、フィルムケースぐらいの、小っちゃな小びんを掲げているんです。

で、あの、そのね、小びんにこう、光がこうサーッとあたって、2人の表情とあいまって、すごいエモイ感じの表紙だなっていうふうに思いました。

 

イ:早速ですけれども、この本の作者である松本さんに、いくつか質問をしてみたいと思います。松本さん、どうぞよろしくお願いします。

 

松本聰美(以下マ):よろしくお願いいたします。

 

ひとつめの質問

 

イ:はい。では、ひとつめの質問なんですけれども、この『金色の約束』というのがですね、小学五年生の光輝と智彦くんですね、の2人が、昔よく遊びに行っていた、近所の、あずま屋のじいちゃん、って人がいるんですけれども、竹細工屋さんなんですよね。

で、そのおじいちゃんが残してくれた手書きの地図を見て、砂金取りに行くっていうお話なんですけれども。この砂金取りに行くシーンですとか、実際にこう川で砂金を探すっていうようなところが、すごくリアルだなっていうふうに思いました。

私も若い頃にね、渓流釣りをちょこっとだけしたことがあったので、あーなんか懐かしいなーっていうか、すごくリアルで。これは松本さんはやったことあるのかなっていうふうに思って。まずそこお聞きしたいなと思ったんですけれども、いかがでしょうか?

 

マ:ありがとうございます。リアルって言っていただけてとってもうれしいです。実は砂金取りはしたことがありません。

砂金とり体験場っていうのを、旅行に行った先でちらりと見て、この作中の智彦のように、あんなところで砂金を取ってうれしいのかしらって思って。

そしてひとりで後で、この中の光輝のように、でも釣り堀があるんだから砂金取り体験場があっても、まあいいか、

なんてひとりでそういうふうに言ったのはとても印象深く覚えていますが、砂金取りの場面はもっぱらYouTubeで、あの、勉強したっていうか、体験しました。

 

イ:あ、じゃあ、取材に行くっていうよりは、こう結構資料を見て。

 

マ:そうです。

 

イ:あとイメージで膨らませていく感じなんですか。

 

マ:そうです。

 

イ:へえ!

 

マ:そして、中でロープとかも出てくるんですけど、そのロープも何メートルのロープがどれぐらいの重さか、とか。それを買うのには、いったいどれぐらいの値段のを買えば、人間の体が支えられるのかとかは、全部ネットで調べました。

 

イ:ネットはすごいですね。

 

マ:すごいです。でも、川については、父が海とか川で遊ぶのが大好きな人だって、私、よくくっついて行ってたんですね。

それで川の、その水の冷たさとか、川の上を流れる風の感じとか。そういったものは体の中に、まだしっかり残ってるんですね。で、私、京都だったんで、琵琶湖なんですけど。

 

イ:ああ。

 

マ:琵琶湖でよく遊びました。

 

イ:へえ!

 

マ:で、遊んだ時の体験です。

 

イ:あ、そう(なんですね)。

 

マ:それと、子どもの頃の体験といいますと山道なんですが、私、あの、京都の大文字山のふもとに住んでたんですね。

 

イ:へえ。

 

マ:それで、子どもたち同士で大文字山に登って遊んでたんです。

 

イ:ふふふふ。

 

マ:それで、その時に、どういうのかな、いろんなところを、こう……途中で川の流れてるところもあったりとか、その……木をこう、かき分けたりとか、いろんな体験をしながら、ほんとうじゃない道を通ってみたりとか。

いろんな体験をしたので。山道を歩くのも大人になってからあんまりしてないので、子どもの時の体験です。

 

イ:ああ、すごいですね。なんかでも児童文学作家って、割とそういって、その子どもの頃の記憶をしっかり持ってる人って多いんですよね。

 

マ:あーそうですか。

 

イ:でもなんかあの、そこまでその遊んだ経験とかが、これだけリアルに描かれるっていうのはやっぱすごいなと思って。私はそこまではちょっとムリとか思っちゃったけど。

 

マ:そんなことないですけど、リアルって言っていただけてとっても嬉しいです。

 

イ:ほんとリアルでした。うん。

 

マ:あのう、大文字山登る道に小さな川があってね。そこでこう、サワガニっていうんですか? カニを捕まえたり。もう今の子じゃ考えられないような、冒険をしてて。

で、その大文字山に子ども同士で登ったもんだから、この光輝たちが登る山も、子ども2人で登っても、危険じゃないようにと思って、大文字山と同じ標高472メートルっていう設定にしました。

(続く)