『美しくない青春』(さ・え・ら書房)小手鞠るいさんの新作が刊行されます。

子どもと平和の委員会


『美しくない青春』小手鞠るい作 8月発売

美しくない青春

みなさん、こんにちは。
本日は、私の新作『美しくない青春』(さ・え・ら書房)のご紹介をいたします。
みなさんは、詩人・茨木のり子さんの作品「四海波静」を読まれたことがあるでしょうか?
この詩の冒頭は、こんな一連で始まります。
(岩波文庫『茨木のり子詩集 谷川俊太郎選』より)
=====================
戦争責任を問われて
その人は言った
そういう言葉のアヤについて
文学方面はあまり研究していないので
お答えできかねます
思わず笑いが込みあげて
どす黒い笑い吐血のように
噴きあげては 止り また噴きあげる
=====================
『美しくない青春』は、茨木のり子さんのこの憤りに対する、わたしからの返歌です。
主人公のモデルは、わたしの母。
彼女は青春時代を太平洋戦争に塗り潰された女性です。
母も戦後は「その人」を激しく糾弾していました。
その人のために死ねと教えられていた神様は
「文学方面をあまり研究していない」ただの人間だったのです。
戦争中の栄養不足がたたって目を悪くし、後年、全盲になった母(94歳)は、
現在は認知症にかかっており、しかしなぜか、幼い頃の幸せな思い出だけを
語るようになっています。
この作品は、そんな母にも捧げています。
母の怒り、憤り、無念、悔しさ、声なき声を、娘のわたしが書きました。
戦争を振り返る夏が過ぎても、みなさんに読んでいただけたら嬉しいです!