YouTube動画「作家が作家にきいてみた」第二回全文起こし1/3 ひとつ目の質問
こんにちは。子どもと読書の委員会YouTubeチャンネル、第2回目の動画、もうご覧になっていただけましたか? わたくし、しめのゆきへのインタビュー動画です。
聞いてくださったのは、松本聰美さん。登場した本は『ピアノようせいレミーとメロディのまほう』(とこゆ 絵 ポプラ社)です。
なんかですね(汗)、聞いてくださっている松本さんがゆったりおっとりと、いい方向に
もってきてくださるのに、しめのが、機関銃のようにしゃべっていて、これでも、だいぶ削ったんです……おそろしい、おしゃべりすぎて(-_-;)
では、インタビューの模様の全文を3回にわけて掲載していきます。
今回は第1の質問とそのお答えまで。読んで楽しんでいただけたらうれしいです。
※無断転載やご使用はご遠慮ください。
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はじまりのタイトルコール
作家が作家にきいてみた!
おでんの具はなにがいいですか?
押川理佐:みなさま、ごきげんよう。
日本児童文学者協会、子どもと読書の委員会です。
子どもの本を書く作家って、どんな人たちなんだろう?
押川理佐:その秘密を、作家どうしのおしゃべりの中で探る新企画!
「作家が 作家に きいてみた!
おでんの具は なにがいいですか?」
押川理佐:第2回目の秘密を語ってくださるのは、児童文学作家のしめのゆきさん。
きいてくださったのは、同じく児童文学作家の松本聰美さんです。
では、松本さん、お願いいたします!
松本:はい! 今回のインタビュアーの松本聰美です。
今日は、こちらの本を紹介します。
『ピアノようせいレミーとメロディのまほう』
表紙の紹介
松本:かわいい表紙でしょ? この黄色いお洋服
を着ているのが、ピアノからとびだしてきた、
ピアノようせいのレミーちゃんです。
そして、この赤いお花の中でびっくりしてるけ
ど、そのびっくりした顔の底にちょっと心配
そうなふんいきがみえるのが、この本の主人公
です。さ、どんなお話なんでしょう。
この本を書いてくださった、しめのゆきさんに、
お話をうかがいます。
その前に、これを書いたのは、しめのゆき・作。
そして、絵は、とこゆさんという方が描かれて、
出版社はポプラ社です。
では、しめのさん、よろしくお願いします。
しめの:は~い、ありがとうございます!
ひとつめの質問
松本(以下マ):いいですか、あの…、
この本の(しめのさんの)プロフィールを見ると、
しめのさんは、4歳から22歳までピアノをなさっていたと
書いてありますね。
マ:この主人公の女の子は、ちょっとピアノの前にいくと、こわくて、
ビクビクしちゃうようになったんです。
それは、しめのさんの長いピアノの経験から出てきたもんなんでしょうか?
しめのさんの経験が一番よく出ているのは、このお話のどこになりますか?
おしえてください。
しめの(以下シ):はい。どこかピンポイントっていうのがなかなかあれなんで すけど、小学校5年生までの私は、友達と遊び歩くのが大好きで、
1ミリも練習をしないで先生のレッスンに行くってことは、
ほんとうに、ざらにあってですね。
シ:習い事って、たぶん、どれでも同じだと思うんですけど、ピアノの場合は、
新しい曲に入ると、譜読みをしなくちゃいけないんです。
譜読みって、ここがドで、ここがレで、って、手をこうやっておいて、こうかな、
ああかなって、わからないなりになんかしらやっていかないといけないんですね。
シ:とにかく曲として、なんか見ていかないといけないんです。それがちょっとすごい苦痛 で、そこを乗りこえて、練習して丸もらうじゃないですか。やった! 丸もらった!っ
て思うんですけど、そうしたら「はい、じゃあ、新しい曲ね」って、新しい曲をまたも らうんですよ。もうね、振り出しにもどるんですよ、これが。
マ:またね。
シ:そう。いやだなあと思って。それを見かねたうちの母が横に、デン! と
ついて、ああでもないこうでもないって、こう、口をだしてくるんですね。
シ:それがたぶん、ピンポイントといわれればピンポイントで、このお話のいちば
ん冒頭の部分で、お姉ちゃんが横でミラにダメ出しをするシーンに表れてます。
もう、おもいっきり表れてます。
シ:そういうところでね、ほめてほしいなあっていう願望が、レミーになって登場
してるんですね。なので、小さいころの自分が、そのままこの本には入ってい
る感じになっているんですよ。
シ:で、じゃあ、もうちょっと具体的に、どこかピンポイントありますかって、
はなしになると、子どものときじゃないんですけど、おとなになって、私、
娘にピアノとヴァイオリンと両方やらせていたんですね。ヴァイオリンって、
単音でメロディを弾くので、伴奏が必ず入るんです。先生のところにいっても。
シ:で、その伴奏をヴァイオリン譜といっしょにもらっていたので、
よくね、娘にピアノを合わせてあげてたんですね。そのときの思い出の曲が、
じつは、ここ(この本)に登場してくる、バッハの『メヌエット』だったん
です。
マ:うんうん。
シ:その時の体験がじつは、ここにちゃんと書かれている、という感じになってい
ます。
マ:ね。でも、ちょっと意外でした。この主人公はほんとうは、ピアノが大好きって
いう主人公でしょ? でもお姉ちゃんにダメだしされて自信をなくしちゃった、
だから、きっとしめのさんも、ピアノが好きで好きで朝から晩までピアノを練習
していたのかな、なんて思ってたんですけど。
シ:あ、やっぱり?(笑) あ、でも! 今、いいことを聞いてくださって。だからなんだろ、いまね、小学校5年生までの私の話をしたんです。
マ:はいはい。
シ:じつは、小学校5年生に転機があって。5年生のときに、市内の音楽会に合唱の
伴奏で出たんです。そのときに伴奏を頼まれたのがすっごくうれしくて。ふだん
練習もしていかないくせに、それだけ猛烈に練習をして、先生のところにもって
いって、「見てくださ~い!」ってはりきってみてもらって。
シ:そこで、「なんだわたし、練習すればできる子じゃん!」って思ったんですよ。
そこでほんとうに。いままでうまくいってなかったのは、なんだ、練習して
なかったからって、実感したんですよ。
シ:そこからは、練習大好きになったんですよね。すればするほど上手になるし、
すればするほどスピードアップしていくんですよね。新しい曲にいくスピード
が、はやくなっていく。
マ:うんうん。
シ:だから、その、ピアノ大好き! っていう気持ちはじつは、小学校5年生以降。だけど、ちっちゃいころは、好きじゃなくって、でも、ピアノが大好き!に、なった瞬間があって、そのどっちの気持ちも、この本には入っているんですよ。
シ:だけど、この本を書くにあたって、ピアノは練習しなければ上手にならないって
いうのは、なんでもそうですよね。上手になりたかったら、練習する以外ないんで
すよ。そこだけは、ごまかさずに、子どもたちに伝えたいなと思って、この本は
書いてるんですね。
シ:だから、それが一番表れているのは、レミーは魔法でピアノは弾けるように
しません、っていうところなんですよ。
マ:あそこね! いいですよね!
シ:ありがとうございます!
マ:あの言葉!
シ:そうなんですよ。それは、じつはそのまま編集さんに言ったことそのまんま
なんです。「レミーは魔法でなんでもできるけど、ピアノを弾かせるように
はしないけど、いいですか?」って。編集さんにききました。
シ:そうしたら、編集さんも、ピアノを弾ける人で、この本の弾いてみた動画とか、
出してくださってるんですけど。ピアノの方向性っていうんですか? 音楽に
対する考え方が、じつは、ぴったりいっしょだったんですね。
マ:うんうん。
シ:それで、いいですね! そうしましょう! ということになって、レミーは
ピアノを弾かせるようにはしてあげない、魔法では。
という流れができあがったんですよ。だから自分、ラッキーだったなと思って。
シ:これで編集さんが、「いやいやそんなこと言わずに、せっかくだから弾けるように
しましょうよ、魔法で」とかいわれた日には(笑)、ちょっと、え…って、絶対
このシリーズわたし書いてないなって、思って。
だからね、ほんと編集さん、頼りになる。