平和を考えるために今こどもたちに手渡したい本  第9回 長江優子さん

子どもと平和の委員会

数多ある本の中から平和や戦争にまつわる本を読む。

その理由は三者三様ですが、わたしの場合は知らないことを知りたいという思いのほかに、贖罪の気持ちと自分の中にある邪悪な火種を抑える目的があります。

何を隠そう、わたしは戦争を起こす危うさを秘めています。

その証拠を3つ、ここにあげます。

ひとつは、昆虫標本を作るためにつかまえた蝶に殺虫液をかけることを躊躇する従兄弟に向かって「はやくやりなよ」と急きたてました。蝶が空にはなたれたとき、ほっとした一方で従兄弟のことを意気地なしだと思いました。わたしにとっては蝶の命よりも、予定表どおりに夏休みの宿題を終わらせるほうが大事だったのです。

ふたつめは、何の予告もなく広島の平和記念資料館に連れて行かれたとき、展示内容があまりにも悲惨だったので「これは半分くらいウソっこだ」と思うことにしました。修学旅行で再訪する機会を得ましたが、友達に腕をからませてずっと下を向いていました。

みっつめは、世界史の授業のあとでユダヤ人迫害について話しあっていた友達に、「本当はガス室はなかったんだよ」と雑誌の記事を鵜呑みにして伝えました。

どれも苦い思い出です。

虫命軽視。歴史改竄。デマ拡散。ろくなもんじゃありません。

わたしは戦争にまつわる本を読んでいるとき、同時に自分の心をのぞいて邪悪な火種を見つめています。読みつづけることで火種を制御しています。

そんなわけで「平和を考えるために今こどもたちに手渡したい本」。

わたしからは以下の本をご紹介します。

ウクライナの状況が気になります。①と②は戦争がどんなふうにはじまるのか、10代の子の目を通して知ることができます。

 

  • 『ある日、戦争がはじまった 12歳のウクライナ人少女イエバの日記』

イエバ・スカリエツカ/著 神原里枝/訳 (小学館)

 

  • 『ウクライナから来た少女 ズラータ、16歳の日記』

ズラータ・イヴァシコワ (世界文化社)

 

  • 『戦争は、』

ジョゼ・ジョルジェ・レトリア/著 アンドレ・レトリア/絵 木下眞穂/訳 (岩波書店)

 

  • 『エリカ 奇跡のいのち』

ルース・バンダー・ジー/著 ロベルト・インノチェンティ/絵 柳田邦男/訳 (講談社)

 

  • 『ベルリン1919/1933/1945』

クラウス・コルドン/著 酒寄進一/訳 (岩波書店)