平和を考えるために今こどもたちに手渡したい本 第七回 指田 和さん
今年は、年明けから全速力で走り続けています。
1月は神戸〜広島へ。2月、3月は東北沿岸部へ。3月の東北は、軽自動車で沿岸道を走って片道8時間。一度出かけるとそれぞれ1週間近く滞在して、現地をさらに走り回ります。帰ってくるとお米の配達や農作業。合間をぬって、おひな様づくりの修行?へ。毎日、布団に入るとバタンキューです。
災害や戦争関連の記念・祈念日に、必ず現地へ… とはしていません。自分で「行こう・行くべき」と思った時に動きます。「その日」はもちろん大事ですが、それに続いている昨日も明日も、大事だと思うからです。だから、○周年とか、この季節になったからというのには、ウームと腕組みする時があります。でも、やはり「その日・その時間」だからこそ見えたり感じたりすることがあるのも事実なので、わたしはそれに関してことさらどうこう言わないでいます。
ただどうしても、「戦争と言えば夏」という風潮には、少し思うところがありました。
2022年8月末、愛知県豊田市内で開催された「第34回豊田市 平和を願う戦争展」に参加した際、会場の一角で絵本の読み聞かせのコーナーがあり、ふと足が止まりました。
そこで読まれていたのが、かこさとしさんの『秋』でした。
お話のあらすじは、かこさんの体験を元に書かれたものです。戦時中に高校生だったかこさんが病気で長期入院していた時の状況や、お世話になったお医者さん、付き添いのおばさんとのやりとり、また、病院の地下壕のかげから目にした衝撃的な光景(日本の戦闘機から落下傘で脱出を試みた兵隊の悲劇)などが、静かに語られています。
初めのうち、わたしは、(かこさんが戦争の絵本を描いていたんだ。めずらしいな)と、少し興味本位気で耳を傾けていたのですが、話が進むうちに前のめりになり、気がつけば固唾を飲むように聞き入っていました。実りの秋は、かこさんの大好きな季節。でも、どうしても書いておかずにはいられなかった記憶と思いがあったのです(「実に三十年がかりで、絵本として世に出すべく手を入れていたことを知りました。」ーーあとがき・鈴木万里 〈加古総合研究所・加古里子長女〉より)。
戦争の悲劇ということばで言い切ってしまうとちょっと浅い……そのバカバカしさが際立つからこそ、言いようのない悲しさと切なさが胸に込み上げくる内容でした。朗読を聞いていたあのひと時、確かにわたしの脇を秋風が吹き抜け、頭上には抜けるような青空が広がっていました。
大事な、貴重な一冊だと思いました。かこさんがもしお元気だったら……本当にすぐに訪ねて行って、静かにこの内容の背景をもっとじっくりお聞きしたかった。そしてもう一つ、「わたしはその〈秋〉に生まれたんです」と、お伝えしたかった。
みなさん、そしてお子さんたちにもぜひ読んでいただきたいと思いました。
今年は戦後80年。これから夏に向けて様々な催しが開かれたり報道があったり、本が出たりすると思います。良い悪いではなく、それを自分はどう考え、どう行動するのか、また他の人はどう考えているのか、互いに率直に語り合える場を持つことこそ、この節目にふさわしいことではないかとわたしは考えています。
本を通じて、その「場」がここにあることが、とても素晴らしいことだと感じています。
平和を考えるために今こどもたちに手渡したい本
:小さな子どもたちに戦争を伝える難しさにいつも悩みつつ、本を読んでいます。正確には、「自分が読んで心を動かされた本」と言った方が正しいかも…です。
1.『秋』 かこさとし
2.『ぼくの村に サーカスがきた』 小林 豊
上記を含む3冊シリーズ
『せかいいいち うつくしい ぼくの村』、『せかいいち うつくしい村へ かえる』
3.『種をまく人』(SEED FOLKS) ポール・フライシュマン
4.『汽笛』 長崎源之助
5.『ケストナー』 クラウス・コードン