国際部&子どもの平和委員会共催オンライン交流会の報告 大橋珠美

国際部

2月2日の午後2時より3時半まで、Zoomにて児文協国際部&子どもの平和委員会共催のオンライン交流会を開催致しました。

今回は「日本における平和教材の最新状況―小学校国語教材を中心に―」というテーマで、黒川麻実先生にお話しいただきました。

戦後の小学校教科書に掲載された戦争児童文学について、「たずねびと」(光村図書5年生教材)と「模型のまち」(東京書籍6年生教材)の2作品を中心に講義していただいた後、活発な意見交換によるフリートークの時間があり、“教材としての戦争児童文学”について深く考えさせられる有意義な交流会となりました。

講義は、今の子どもたちに戦争や平和をどのように伝えたらよいかを、教科書に載せられた作品を通して考えることを中心としたもので、図式・表・イラストなどによる

①第1世代(主人公が戦争当事者)作品とZ-a世代(主人公は現代社会を生きている)作品との比較

②Z-α世代作品である「たずねびと」と「模型のまち」の特色と比較

③そこから導き出されるこれからの時代の、教材としての戦争児童文学展望

などを短時間の中で、わかりやすく端的にお話いただきました。

そこから浮かび上がってくる課題からフリートークは始まりました。戦争経験者が主人公であった時代の作品と、教師も子どもたちも戦争未経験者で、知識もあまりなく共有・共感不足となる可能性がある世代の作品では、やはり転換を求められるという、2作品はその転換点作品であるという視点に様々な意見が交換されました。

さらにもう一つの課題は、教科書の宿命である学習指導要領や字数(ページ)制限というしばりを持つ「教材としての戦争児童文学」と、純粋に読み物として存在する「児童文学としての戦争児童文学」という2面性です。また、「歴史」という観点から「社会」、そのほかの教科との“繋がる感覚”の重要性という意見も出され、参加者の意見を聞きながら、自分の考えをめぐらせる貴重な時間を持ちました。

経験者の“声”―第1世代―というかたちでなく(不可能になりつつありますが)、“文字”―Z-α世代―というかたちで、子どもたちに平和の大切さを伝える媒体である戦争児童文学教材。子どもたちが必ずや出会う児童文学としての教材。今の時代、その存在意義はさらに重く、これからの議論の広がりに期待し、今後も耳を傾けていきたい、研究者や教育者だけでなく、ぜひ多くの方に聞いていただきたいと願う交流会でした。