157、協会の文学賞のこと(2025,2,16)

理事長ブログ

【この時期になると】

・昨日は、家族のイベントがあり、ブログの更新が一日遅れになりました。昨日・今日と、風もなくあたたかい日和になりましたが、来週からまた寒さが戻りそうです。今年の寒さ、そして寒暖の差はかなりきつく、体に堪えるのは年のせいばかりではないようです。

さて、2月後半になると、例年、協会の文学賞の選考が始まります。協会の文学賞は「日本児童文学者協会賞(協会賞)」と「日本児童文学者協会新人賞(新人賞)」に加えて、詩集・童謡集を対象にした「三越左千夫少年詩賞(三越賞)」の三賞で、4月末に決定、5月の総会時に贈呈式を行います。

・このうち、三越賞は、対象がはっきりしているので、対象の詩集(例年二十冊くらいはあるでしょうか)のセットを、選考委員に順番にまわして読んでもらう、という形で、手順としてはシンプルなのですが、問題は協会賞と新人賞です。

大体、こうした文学賞というのは、まず各方面に推薦を求めて、事務局がそれを整理し、予備選考で十冊程度に残したものを選考委員に読んでもらうというのが、一般的なパターンかと思います。

ところが、協会の文学賞は、「どこにいい作品が隠れているかわからない」から、前年に出たすべての創作児童文学をリストにして、言わば虱潰しにしてチェックする、という、正しいけれどもかなり厄介な方式をとっています。一年間で児童書というのは、多分三千冊程度出版されるのですが(コミックや学習参考書は除いて)、そのうちかなりは絵本、図鑑とか実用的な本、キャラクター本などで、さらに翻訳のものも除いた「創作児童文学」ということになると、三百数十冊ということになります。三千からすれば一割強ということになりますが、これを全部チェックするというのは大変な作業です。

以前はこれを協会賞、新人賞の選考委員が分担してやっていました。ただ、それはいかにも大変ということで、「文学賞委員会」というのを作って、そこでチェックして、協会賞、新人賞で検討すべき作品を挙げてもらう形にしました。僕も委員の一人ですが、評論の分野の人や、雑誌の書評をレギュラーで受け持っている人は、かなりの本に目を通しているので、そういう形にしたわけです。

ただ、文学賞委員は、協会賞、新人賞の選考委員ではないので、あまり絞り込んでは、ということで、概ねそれぞれ三十冊くらいを残します(新人賞は、その作家の三作目までという制限があるので、その資格を持った作品が大体その数になります)。これが決まるのが3月半ばころでしょうか。協会賞、新人賞の選考委員は、それを4月上旬の一回目の選考委員会まで読まなければならないので、かなり大変です(5人の選考委員のうち、4人は読むように設定するので、必ずしも全部読んでもらうわけではありませんが)。そして一回目の選考委員会で十作余りに絞って、これはもちろん全部読んでもらって、4月下旬の、二回目の選考委員会で受賞作決定になるわけです。

【もう一つ、大変なのが】

・さらに、協会の文学賞で大変なのが、(ノンフィクションを含む)創作作品だけではなく、詩集、評論・研究書をも対象にしていることです。評論・研究書は、会員の評論家、研究者から推薦してもらい、毎年候補作があるわけではありませんが、候補がある場合、創作と詩集と評論書を同じ土俵に載せて選ばなければならないわけで、読むのが大変ということもありますが、選ぶのが大変、ということもあるわけです。児童文学の分野に限らず、創作と評論・研究書の両方を同じ賞で対象にしているという例は、ほとんどないのではないでしょうか。

・さて、その元となる前年の創作児童文学のリストを作るのは今も僕の仕事で、これもなかなか大変です。僕もそろそろリタイアの時期を迎えていますから、こうしたリスト作り、そして、とても正しくはあるけれど、かなりの負担を伴う今の選考方法をこれからも続けていけるのかどうか、検討する時期に来ていると思っています。それでも、ともかく、明日の夜に、第一回の文学賞委員会があり、気になる本でまだ読んでいないのを机の横に積み上げて、今から読もうとしているところです。

文学賞発表は、上記のように4月末ですが、今回はその舞台裏をちょっと書いてみました。